アイシングの効果と方法
1.はじめに
アイシングは、最近では日常的な言葉として定着してきている。しかし、現在のアイシングとしては、どうしても怪我をしたときの緊急手当てとしての一つの方法としてしか考えていないコーチの方もまだまだ多い現状であろう。そこで、97年に出版された"portsmedicine"のアイシング特集などを参考に、アイシングの効果と方法をまとめてみた。
 
2.アイシングの効果
<怪我(外傷性損傷)の場合の効果>
(1)外傷性損傷の過程(K.Knight氏の理論)
@一時的損傷過程
これについては、ほとんどの救急書の中に書かれている内容であるが、もう一度確認の意味で説明したい。まず外傷性損傷が起こると組織にどのような変化が見られるかということであるが、K.Knight氏の説明によると、まずはじめに挫傷などのような外傷が起こると、組織細胞、血管、神経は断裂や破壊が起こる(一次的損傷)このとき、神経へのダメージは痛みの感覚が起こる。次に破壊された血管から組織に出血が起こる。出血した血液は、損傷を受けた組織、血管、及び神経細胞などの中に捕らえられ、血腫と呼ばれる塊となる。ここまでは怪我をした場合は仕方がない現象である。
 
 A二次的損傷過程
アイシング等の処置を行わないと一時的損傷後、次の問題が出てくる。まず、外傷による損傷免れた周辺の損傷を受けていない組織が、損傷した血管及び炎症反応(血腫)によって血液の流れが悪くなる。そうすると、正常な組織に対する酸素の供給が絶たれ酸素不足で代謝変化が起こり、最悪の場合には細胞の壊死がおこる。(二次的低酸素障害)この低酸素状態の症状が起こっている細胞は、上記の血腫や出血に加わるとさらに血腫が拡大する。この炎症過程において細胞片を消化するために壊死した細胞から酵素が出される。この酵素が接近すると正常な細胞の細胞膜まで破壊し始め、更に細胞の壊死を招く。(二次的酵素性損傷)このような過程で、外傷による損傷が拡大して行くわけだが、アイシングを行うことにより次のような効果が得られる。
 
(2)アイシングの効果(具体的な生理的効果)
@血管収縮・毛細血管透過性の減少
・冷却することにより、周囲の血管の収縮がおこり、損傷部分周囲に流れる血流量が減少する。また、その組織及び組織周辺の毛細血管透過性も減少し、その結果、損傷を受けた組織周囲の内出血が最小限にくい止められ、血腫についても、最小限の大きさで押さえることができる。また、その後におこる二次的損傷についても、血腫やそれによるストレスが少ないため、損傷が拡大することが少なく、ひいては損傷部分の回復が早くなる。
 
A体内10cmの深さまで及ぶ局所的体温低下による損傷部分の代謝の減少
・冷却効果により、局部的な体温低下がおこり、局部におけれる新陳代謝が低下する。それによって、血腫による低酸素所状態がおこっても、最小限の細胞の壊死だけですむこととなる。また、壊死した細胞片を消化する酵素も、体温低下により活動が制限され、健常な細胞の破壊を最小限にくい止めることができる。更に、新陳代謝を低下することにより、発痛物質の生成を減少させることもできる。
 
B疼痛受容器に対する麻酔作用
・冷却することにより、まずはじめに損傷部の感覚受容器(感覚細胞など)の閾値の低下がおこる。これは、具体的には冷却することにより、感覚受容器の反応が鈍くなり、その結果疼痛を感じにくくなる効果が得られる。と同時に、感覚神経の刺激伝達の遅延による中枢神経への感覚インパルスの減少が見られるようになる。その相乗効果として、結果的には疼痛が軽減することとなる。更には、このインパルスの減少から、筋肉の緊張が減少し、ひいてはその後の血液循環の改善が見られるようになる。
 
C筋紡錘活動の低下(筋肉細胞の活動の低下)
・組織に損傷がおこると、筋紡錘(筋繊維)の興奮がおこりけいれんが起こる場合が多い。しかし、冷却により局部的な体温低下がおこることにより、筋紡錘活動の低下がおこり、興奮と活動性が低下し、損傷周囲の組織の筋けいれんを減少させる結果となる。
 
<日常的な運動後のアイシング効果>
 (1)運動後の体へのストレス
・激しい運動における身体へのストレスは、簡単に説明すると軽度の怪我と同じ状態がおこっていると考えていただければ理解しやすいと思える。具体的には、練習には大きく分けると2つの役割があり、一つは技術の習得、もう一つはその運動に必要な筋力の強化があげられよう。どのような練習でも、必ずこの2つの要素を含んでいる練習をすることにより、強化をすることができる。その筋力の強化のメカニズムはもう一般的にも知られているように、超回復理論によるものが多い。「それほどの練習はしていない」と考えていても、筋肉を使って運動している以上は筋繊維にストレスがかかっており、それによる筋繊維の破壊が少なからずおこっている。この筋繊維の破壊がおこることにより、超回復がおこり筋力の強化が得られる。しかし、筋繊維の破壊がおこるということは、筋紡錘の各所に損傷がおこっているということで、外傷性損傷の小規模なものが筋紡錘の所々におこっていると考えていただければ考えやすい。
 
 (2)運動後のアイシング効果
@外傷性損傷と同様の効果
・上記にも示したように、運動後の筋肉は軽度の外傷性傷害と同じ損傷を得ている。従って、冷却を行うことにより、局部的な損傷のみで他の部位の二次的損傷がおこりにくくなり、効果的な超回復を得られる。また、二次的損傷が最小限に押さえられることや、局部的な新陳代謝の低下により、運動による過剰なストレスによる慢性的な傷害(疲労骨折や慢性的な捻挫など)の予防にもなる。
 
ACIVD(冷却がもたらす血管拡張効果)
・このCIVDというのは、局所冷却を行うことにより、一時的な新陳代謝の低下や血管の収縮がおこる。その後、局所冷却をやめたり、温水につけるなどの加温を行うと、今まで収縮していた血管が拡張し血流が多くなり、新陳代謝が低下している組織に過剰な血液が流れ、その結果疲労などの原因の乳酸やその他の老廃物を除去し、結果として疲労回復が早くなるという効果である。この点については、文献によって色々な解釈があるのは事実であり、果たしてこのような現象が確実に起こっているかどうかは、今後の研究の成果を期待していきたいと考える。ただ、経験的に(一部の大学で実験をしているのですが、まだ十分データーとしてはまとまっていないようです)アイシングをした方が疲労回復が早かったということがあるようです。実際に、陸上などの海外選手を見ると、1試合後にアイシングを行い、ストレッチをした後、2試合目に望み良い結果を出している選手を見かけます。
 
3.アイシングの実際(K.Knight氏による)
 (1)いつ始めるか
・受傷又は運動後なるべく早く(数分以内)開始する。時間がかかるほど、効果は低くなる。(十分な冷却効果を得るためには、受傷後5〜10分以内に行う必要がある。受傷後8〜24時間経ってから行った場合には、ほとんど効果は得られないと書いてある)
 
 (2)アイシングの機材
@アイスパック
・一般的なアイシング機材としては”アイスパック”があげられる。市販されているアイスパックにクラッシュアイスを入れて作る場合が多いが、小・中・高校などでは、簡単にビニール袋にクラッシュアイスを入れて作れる。そのとき、中の空気を抜いておくことが必要である。私の学校では、製氷器がないので冷蔵庫の製氷室内に、常にビニール袋に水を入れたものを入れておいて、練習後にハンマーで割って、それを使ってアイスパックを作っている。
 
Aアイスカップ

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