THE SANDMAN: The Kindly Ones
(1996 Vertigo / DC Comics)
「王は国を捨て、生と死は争い、最古の戦いが再び始まる」という三人の魔女の託言と共に、サンドマンのクライマックスとなる長編は幕を開ける。
"Doll's House"後に生まれたダニエルと共に暮らしていたヒッポリタだったが、ある日彼女が目を離した隙に、ダニエルがロキとパックというトリックスターの二人により誘拐される。
やがて焼死体となったダニエルの写真を見せられたヒッポリタは、息子の死がドリームの手によるものと信じ、狂気とギリシア神話が交錯する世界を復讐を求めてさまようことになる。
一方ドリームもダニエルの誘拐を知り、再生させたコリンティアンIIとマシューをその捜索に送り出していた。
狂気の世界をさまよっていたヒッポリタは、やがてついに三人の魔女 - その姿をティシフォン、アレクト、メガエラという復讐の女神(Kindly Ones)へと変貌させていた - の元にたどり着く。
その頃、かすかな手がかりをたどって、ロキの隠れるスワルタルフヘイムにたどり着いたコリンティアンとマシューは、ロキを倒してダニエルを奪還することに成功した。
しかしすでに時遅く、Kindly Ones達は"Brief Lives"でドリームが為したことへの報いとして、復讐の女神Furyと化したヒッポリタを媒体に使い、ドリームが愛する夢世界を破壊し始めていた…。

古の定めによりKindly Onesはドリームに直接手出しはできませんが、その絶対的な力をもって、彼が愛する夢世界を破壊していくことでドリームを追いつめていきます。
さらに"Doll's House"のローズ・ウォーカー、"A Game of You"の魔女テッサリーらも巻き込んで、物語はギリシア悲劇の様相を呈し、一大クライマックスを迎えることになります。
サンドマンの長編の中でも最長のエピソードですが、その大部分で絵を担当しているマーク・ヘンペルのグラフィカルなスタイルが、個人的には非常に気に入っています。
物語中、ドリームの手により再生したコリンティアンII(やたらと強いw)も非常に人気がありますし、Kindly Onesに弟アベルを殺されたカインの表情、密かに別れを告げに来たドリームのただならぬ様子を心配するホブに、静かに微笑むドリーム、押し隠してきた愛情をドリームに告白するヌアラ等、非常に印象的なシーンも山盛りです。
なお物語の冒頭にはプロローグとして短篇"the Castle"が収められており、また今回も話中話として不気味なフェアリーテールの掌編がインターミッション的に挟まれています。