THE SANDMAN: Fables & Reflections
(1993 Vertigo / DC Comics)
"Dream Country"に続き、九つの短篇を集めたサンドマンシリーズの第二短編集で、かなり読みごたえがあります。
"Fear of Falling"
自分の書いた芝居の初演を控えてプレッシャーにくじけそうになった劇作家が、必死に高い岩山を登る夢を見る。岩の頂上には黒ずくめの男(ドリーム)が立っていた。
自分は本当は失敗(墜落)することが怖いのだと打ち明ける作家に、ドリームは夢の中で高所から墜落した者には、夢から目覚める、そのまま死ぬ、の他に第三の道があるのだと語る。そしてその途端岩山は崩れ、作家は真っ逆さまに墜落するのだが…。
"Three Septembers and a January"
かつてサンフランシスコに実在したアメリカ最初で最後の皇帝、ジョシュア・ノートンをめぐる物語。破産し、絶望から自殺を図ろうとするジョシュアを前にドリームとデスペアが賭けをする。はたして夢は絶望に打ち勝つことができるのか?
"Thermidor"
1794年、ドリームがジョアンナ・コンスタンチン("Doll's House"収録の"Men of Good Fortune"参照)に取引を持ちかける。
彼女の使命は、あらゆる過去の思想、遺物を否定しようとするロベスピエールの支配下にあり、フランス革命に揺れるパリから、オルフェウスの首を取り戻すことだった。
一緒に収録されている"Orpheus"と次の長編"Brief Lives"をつなぐ物語です。
"The Hunt"
MTVばかり見ているティーンエイジャーの孫娘に、祖父が祖先から伝わる一族の物語を語って聞かせるという、二重構造のお話。
「昔々、我々の一族がまだシベリアの森に住んでいたころ、一人の若者がジプシーからもらったペンダントに描かれた女性を探して旅に出た…。」 ストーリー・テリングという形式を非常にうまく取り入れた、いかにもゲイマンらしい短篇です。最後のオチは容易に想像が付きましたが。
"August"
過去の悪夢に苦しめられる古代ローマ帝政の創始者アウグストゥスが、ドリームの提案に従い、神々の怒りに対する恐怖を逃れるため、一年に一日、皇帝から乞食に変装して街に出る。神々の目から自由になった彼自身が選んだローマ帝国の未来とは?
"Soft Place"
若き日のマルコ・ボーロがタクラマカン砂漠を旅行中に、砂嵐の中でキャラバンからはぐれてしまう。必死になってキャラバンを探すマルコが迷いこんだのは、時間と空間が揺らぐソフト・プレイス呼ばれる場所だった。そしてそこで彼は、同じく迷いこんだ魔術師、夢世界から一服しに来ていたフィドラーズ・グリーン、そして72年間閉じこめられていた魔術師バーガスの地下室から自由になり、彼の王国へ戻る途中のドリーム("Preludes & Nocturnes"参照)と出会う…。
"Orpheus"
地獄から妻を取り戻そうとしたオルフェウスの有名な物語をベースに、父親であるドリームとオルフェウスの関係を描いた、サンドマンの物語全体のキーとなる話です。(母親は"Dream Country"に登場したカリオペー)
三千年前のオルフェウスとエウリディスの結婚式にはエンドレス達も全員参列しますが、自分の王国を捨てたデストラクションの姿が描写されるのはこの回が初めてです。
"The Parliament of Rooks"
母親のヒッポリタが妊娠中に2年を夢世界で過ごした("Doll's House"参照)ため、生まれた子供のダニエルは自由に夢世界を行き来できる能力を持っていた。
ある日、母親が目を離した隙に夢世界に迷い混んだダニエルを保護したカイン、アベル、イブの三人が順にそれぞれの物語を語って聞かせる。
個人的にイブの語る「アダムの三人の妻」という話が好きです。また、この回でジル・トンプソンが描いたチビキャラ版サンドマンがなぜか人気を博し、後に"At Death's Door"が描かれる遠い原因となりました。
"Ramadan"
その昔、栄華を極める都バクダットを永遠に残したいと願ったカリフがドリームと取引をするという物語。クレイグ・ラッセルのグラフィカルな絵が非常に美しく、サンドマン全体の中でも最も人気が高い短篇です。