THE SANDMAN: Doll's House
(1990 Vertigo / DC Comics)

アフリカ原住民達の神話として、一万年前、ドリームの求愛を拒んだために地獄に幽閉されることとなった女王ナダの物語が語られるプロローグに続いて、舞台は現代、今回の主人公である若い女性、ローズ・ウォーカーの元に移る。
ある日、イギリスに住む大金持ちの老婦人が自分の真の祖母であることが判明したことから、ローズは生き別れの弟を探すために単身アメリカに戻り、奇妙な住人達と共にフロリダでのシェア・ハウス生活を始めることになった。
一方、夢世界ではドリームが「渦」と呼ばれる夢世界を破壊する存在が生まれたことに気づいていた。 しかしまずドリームには、彼の不在中に夢世界から逃げ出した4体の「夢」達を捕らえるという仕事があった。
最初の2体、ブルートとブログはかつて死んだヒーローの幽霊から自分達の「サンドマン」を作り出すことで、ローズの弟、ジェブの夢の中に隠れていた。しかしついにドリームにより発見され、夢世界に連れ戻され幽閉されることになる。そして彼らが作り出した「サンドマン」(DCコミック70年代ヒーロー版)もその存在を終えた。
一方、ローズは弟を探す旅の途中、アメリカ中から連続殺人鬼達が一同に会するコンベンションが開かれているモーテルに紛れ込んでしまう。そしてそのコンベンションには、夢世界から逃げ出した第3の悪夢「コリント人」も参加していた…。
ゲイマン二作目の長編エピソードですが、彼のオリジナル色が強く出た最初のエピソードとも言えます。いくつかのストーリーラインが巧みに交差しながら物語を織り上げていく構成がみごとです。

"Preludes & Nocturnes"で地獄でチラっと姿を見せたナダですが、彼女とドリームの関係が今回のプロローグで明らかになります。そして第三長編"Season of Mist"のメインストーリーに深くかかわることになります。 また"Preludes & Nocturne"最終章のデスに続いて今回はデザイアとディサピアが登場しますが、エンドレスというキャラクター達の関係についても"Season of Mist"のプロローグで、より明らかにされます。

その他、今回登場したキャラクター達を見ていくと、インターミッション的に挟まれた短篇"Men of Good Fortune"で登場する不死となった男、ホブ・ガドリングはサンドマン全編を通じてドリームの数少ない友人として何度も登場することになります。インターミッションとして短編を挟む形式はゲイマンが気に入ったようで、この後も何度か使われます。

夢世界から逃走した悪夢コリンティアンも非常に人気があり、後のエピソード"Kindly One"で再生された後、"Dreaming"、"Sandman Presents"等のスピンアウトシリーズでは主役を務めたりもしています。 同様にもう一人(?)の夢、フィドラーズ・グリーンも人気が高く、この後も様々なエピソードに登場します。 またローズのフロリダでのシェア・メイトとして登場した女性バービーは、彼女の夢世界(第6章"Into the Night"でチラッと描かれている)を舞台にした第四長編"A Game of You"の主人公となります。

なお"The Doll's House" TPBの冒頭にはゲイマン自身による"Preludes & Nocturnes"のあらすじが収録されていますが、これはサンドマンの単行本として出版されたのは"The Doll's House"が最初で、その時点ではまだ"Preludes & Nocturnes"は単行本として読むことはできなかったため、"The Doll's House"から読み始めた読者への便宜として用意されたものだそうです。
同様にDCによる営業的な判断から、冒頭に第8話"The Sound of Her Wings"も収録されました。(現在の版では収録されていません。)

(2004/04/18)