ZOO Tome 1
Frank & Bonifay (1994 Dupuis)

物語の舞台は20世紀初頭のフランス、ノルマンジーの片田舎にある、古い広大な邸宅とそれに付属する私設動物園。

医師のセレスタンは、奔放な養女のマノン、そして寄宿人でありマノンの恋人でもある彫刻家のビュジーと共に、祖父から相続した風変わりな遺産、動物園を管理し、数多くの動物達を養っている。

しかし、今では動物園を維持管理するための遺産ももはや底をつき始めており、修理も間に合わず朽ち果てていこうとする動物園を、彼らは懸命に維持しているような状態だった。

ある日、自分たちの手で動物園の修理するため、廃材をもらい受けに町に出たセレスタン達は、廃材の運搬を申し出てくれたジプシー、ピオトルの一行と知りあい、動物園の修理も手伝ってもらうため、彼らを邸宅に招く。
ピオトルのワゴンには彼の母親、妻の他に一人のロシア人女性、アンナが同行していた。
かつてロシアの狩人の妻だったアンナは、狩人達の喧嘩騒ぎに巻き込まれ、夫を失い、彼女自身も鼻をそぎ落とされるという苦難を生きぬいてきていた。
やがて建物の修理も終わり、ジプシー達が邸宅を去る日がやってきたが、アンナはセレスタン達と共に邸宅に残ることになる。

鼻はその持ち主の魂の象徴であるというロシア人達の迷信。そして鼻を失い「呪われし者」として忌まれる身となったアンナ。
けれども、一度失われたアンナの「魂」は、マノンの助けを借り、やがて動物園という小宇宙の中で、静かに癒され再生していく。
こうして朽ち果てようとする古い動物園という小宇宙の中で、四人の男女の平穏な生活と、その世界を保とうとする静かな戦いが続いていく。
しかし外の世界では第一次世界大戦の足音が聞こえ始めていた…。


医師セレスタンの養女で、生命力にあふれた娘、マノンをはじめとして、魅力的な登場人物ばかりですが、なんといってもこの物語の真の主人公は、彼らが暮らす動物園です。
かつてのベルリン動物園をモデルとした建物や内部の描写には、廃墟テイストも加わって実に幻想的かつ魅力的な小宇宙を作り上げています。

アニメーターでもあるアーティストのフランク・ペーによって描かれた、セピアを基調とする絵の中を生き生きと駆け回る動物達。そして空間を満たす光の美しさ。私が今まで読んだ中でもベスト3に入る、非常に美しいBDです。

なお、こちらのサイトで、この物語についての詳しい情報や、数多くのフランク・ペーの絵を見ることが出来ます。

(2006/10/03)