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V for Vendetta
by Alan Moore & David Lloyd (1988 DC/Vertigo)
1988年、ロシア・ポーランド間の紛争が引き金となり第3次大戦が勃発。それに続く気象異変は農作物に壊滅的な被害を与え、ヨーロッパは飢餓にあえいでいた。そんな状況下、イギリスではノースファイアと名乗るファシズム政権が誕生。有色人種や社会主義者、ゲイ・レズ等マイノリティー達を治安維持の名の元に強制収容所に送り処刑する。
そして1997年、ロンドンは首相アダム・スーザンと「フィンガー」と呼ばれる特高警察による恐怖政治、そして全ロンドンを集中管理するコンピュータ・システム「フェイト」の支配下で表面的な秩序を得たかに見えた。
11月5日の深夜、餓えと貧困のためやむなく身を売ろうとした16歳の孤児、エヴィー・ハモンドはフィンガーのメンバーに捕まる。その時、闇の中から突如現れ彼女を救ったのは、喜劇の仮面とマントに正体を隠した「V」を名乗るアナーキストだった。彼と共にビルの屋上に上ったエヴィーはそこから、爆破され炎上する国会議事堂とそれに続いて夜空に広がる美しい花火を見ることになる。そして彼が「シャドウ・ギャラリー」と呼ぶ地下基地にエヴィーをかくまった「V」は、次々に政府施設の破壊と要人の暗殺を繰り返していく。
いったい「V」とは何者なのか?フィンチ警部は部下のドニミクと共に懸命の捜査を続ける。やがて「V」が強制収容所で使われていた部屋の番号、すなわちローマ数字の5を意味するのではないかと考えたフィンチは、暗殺された要人達の経歴を調査してがく然とする。犠牲者達は皆、大戦後の動乱期に秘密裏に生体実験が行われていたと噂されるラークヒル収容所に勤務していたのだ。さらにここ4年間にラークヒル収容所で働いていた人間は皆、突然の事故や原因不明の病で死亡している。5年前にラークヒル収容所で何があったのか…?
昔のギャングものやホラーもののコミックを代表するようなロイドの絵のスタイルは、最近のハデハデなアメコミフアンにはまず受け入れられないので翻訳はムリでしょうが、いかにもムーアらしい、ポリティカル色ムンムンの地味で渋いお話でした(^_^;。
人は責任と共に自由を他者に委託することなく、全ての個々人が自らその権利と責任を選び取らねばならないというムーアの主張は、名作「ウォッチメン」から引き継がれています。そういう意味ではアナーキスト「V」はオジマンディアスの平和を拒否して死んでいったロールシャッハの生まれ変わりと言えるかもしれません。
ただ、本当の主役とも言える一般市民の態度が「V」のアジテーションにより変化していく過程をもう少し描いてほしかったとも思います。ラストの市民の暴徒化はやや唐突な印象を受けました。
しかしイギリス人の「政府による管理」への嫌悪には、他のヨーロッパ諸国と違った独特なものがありますね。古いところでは「プリズナーNo.6」あたりにも見られますが。

それにしても「V」って梅図かずおの「笑い仮面」に似てる…(笑)。
(2000/05/15)
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