That Yellow Bastard
Frank Miller ( 1997, Dark Horse)

狭心症のため早期退職を余儀なくされた50代のベテラン刑事ハーティガンは、その刑事として最後の日を迎えていた。そこに彼が追っている連続少女誘拐暴行殺人事件の情報が入った。
物語は刑事人生残り1時間前、誘拐された少女を救出に向かうハーティガンの姿から始まる。

ハーティガンには既に犯人は州選出の下院議員ロークの息子だと判っていた。しかしこれまでの3件の事件では常にロークの地位と権力が壁となって、彼を阻んできた。直接現場を押さえてローク・ジュニアを逮捕するため、そして何よりも誘拐された11歳の少女ナンシー・キャラハンが4人目の犠牲者になるのを防ぐためにも、ハーティガンは危険を顧みずナンシーが監禁されている倉庫に踏み込んでいく。

その怒りの銃弾で相手が不具になるほどの傷を負わせ、ついにジュニアを追いつめたハーティガンだったが、ロークの力を恐れた同僚刑事の背後からの弾丸に倒れる。しかし重症を負いながらも警察本隊が到着するまで時間を稼ぐことで、少なくとも彼はナンシーまでが口封じのために殺されることは防いだ。

意識不明の重体を脱したハーティガンを待っていたのは、ロークの容赦の無い復讐だった。ハーティガンは少女誘拐強姦とジュニアに対する傷害の罪を着せられるが、唯一の証人である少女ナンシーに危害が及ぶことを恐れた彼は、周囲から浴びせられる非難や軽蔑にもかかわらず、事件について完全な沈黙を守り通す。
妻や同僚達、周囲の人間がすべて彼の元を去ってしまった後、ただ一人彼を信じていたのは、真実を知る11歳の少女ナンシーだけだった。密かに病院のハーティガンの元を訪れたナンシーは、決して真相は話さないと彼に約束させられて部屋を去る際に、愛しているとささやく。

刑務所に収監され過酷な尋問を繰り返されながらも、決して「自白」せず沈黙を続けるハーティガン。彼を支えてきたのは、毎週、偽名で届くナンシーからの手紙だった。
やがてハーティガンの独房での生活も8年を迎えた頃、急にナンシーからの手紙が途絶える。彼女の身に何か起こったのではないかと不安を募らせるハーティガンの前に、突然一人の異様な風体の男が現れる。そしてまっ黄色な肌で悪臭を放つその男が去った後には、切断された若い女性の指が残されていた。

ロークに屈することよりもナンシーを守りたいというハーティガンの気持ちが勝った。彼は意を曲げ自白調書にサインし、すべての要求に従順に応じて保釈を受けることを同意した。8年間の空白の後、すべてを失って一人、夜のシン・シティーに放たれたハーティガンは真っ先にナンシーの安否を確認しに向かう。そして彼が見つけたのは酒場の人気ダンサー、男達の女神となって踊る19歳のナンシーの姿だった。そしてハーティガンの背後、酒場の暗がりからは謎の黄色い男が二人を見つめていた…。


前作までのアクション路線とは趣を変え、今回はハードボイルド・ロマン色が強く押し出されており、プラトニックな愛に殉じるハーティガンの姿が、第1作のマーヴ同様、読者を引きつけます。時間的には"A Dame to Kill for"の前に位置するストーリーで、ナンシーが踊る酒場にはアバに捨てられたドワイトも姿を見せています。
絵的にはモノクロ画面に部分的に単色(黄色)を加えるという実験的なスタイルが独特の効果を生んでいます。

(2005/09/02)