STARDUST
by Neil Gaiman & Charles Vess (1997〜 Vertigo/DC Comics)

ニール・ゲイマンの中編小説にチャールズ・ベスがふんだんに挿し絵を入れた絵物語。VERTIGOから4分冊として刊行された後に1冊にまとまったヴァージョンも出された。
1999年にAVON BOOKSからハードカバーの小説としても刊行されている(ISBN:0-380-97728-1)が、断然ベスの挿し絵のあるこちらがお奨め。

舞台はビクトリア朝イギリスの片田舎、ウォール村。妖精界と境界を接するこの村では、9年に一度、5月1日の一日だけ、妖精界の住人達との間で取引を行う市場が開かれていた。
物語はウォールの農場の一人息子、ダンストン・ソーンが市場で出会ったエルフの娘と恋に落ちるところから始まる。
17年後、二人の間に生まれた主人公のトリスタン・ソーンは少し気弱で夢見がちな若者へと成長し、自分の出自を知ることもなく雑貨屋の店員として働いていた。村一番の美少女に恋したトリスタンは、ある夜思い切って彼女にプロポーズするが彼女は笑って相手にせず、たった今落ちた流れ星を自分にプレゼントしてくれたらプロポーズを受け入れると答える。恋は盲目。こうしてトリスタンは地上に落ちた星を探して、境界の向こう、自分の本当の母が住む妖精界へと旅立つことになった。

ところがその流れ星というのは、死の床にあった妖精界の王ストームホールド81世が天高くそびえ立つ城から投じたトパーズの首飾りだった。その首飾りを手に入れた者が次の国王となる。王の三人の息子達は父の弔いもそこそこに首飾りを求めて馬を走らせる。
一方妖精界の別の場所では年老いた魔女達が、地上に落ちた星の探索を開始していた。星の心臓を手に入れれば、彼女らは再び若さを取り戻すことができるのだ。
やがて妖精界を苦労しながら旅してきたトリスタンはやっと地上に落ちた星を見つける。しかしそれは足を骨折した一人の美しい娘だった…。

ゲイマンらしく魅力的なキャラクター達が数多く登場するが、僕が気に入っているのはストームホールド王とその息子達。王には7人の息子がいたが王位継承を巡って暗殺合戦を繰り返し、現在生き残っているのは3人。で、国王を含めて死んだ者たちは皆亡霊となって生き残っている者にくっついてまわり、暗殺合戦を「観戦」しながら「なかなか上手い手を考えたな」とか「惜しいところまでいったんだがな」と批評しあってる。そして脱落した者も順に観戦者に加わっていくという、どこかブラックなユーモアを感じさせる存在。物語の最後にデスもチラッと登場(といっても文中でDeathをHerと女性形で呼んでるだけだけど)。

本の扉にも"Being a Romance with the Realms of Faerie"とあるように、結局は伝統的なフェアリーテールの骨格をふまえた、トリスタン君と星の娘イヴァインを巡る結構クサいラブストーリーだったりする(嫌いじゃないけど(^_^))が、それでもどんどん物語に引き込まれてしまうのはゲイマンの語り口の上手さだろう。やっぱりストーリーテラーの物語と呼ぶのにふさわしい。


← …典型的なラブコメ構図じゃん(^_^;

(1999/12/13)