Peter Pan (Tome 3. Tempête)
Régis
Loisel (1994 Vents d'Ouest)

ストーリー:
海賊達から救出したタイガーリリーと共に訪れたインディアン部落で、英雄として祝宴に招かれたピーター達だったが。ピーターに好意を持っているタイガーリリーと、父親の酋長の間でいさかいが起こり、結局彼らは早々にインディアン達の元を後にする。

一方、前回の争いで大事な拳銃をピーター達に奪われてしまったフック船長は、ネバーランドの住人、パン達の仲間の妖精の子供を人質にして、拳銃との交換を要求してきた。
拳銃と交換で無事に人質を取り戻したパン達だったが、海賊達の危険度はいよいよ増してきており、ピーターと共に海賊達をネバーランドから追い出す作戦を練ることにする。

ネバーランドの住人達は皆、遠い昔から人間の神話や伝説、物語の中で語り継がれ生き永らえてきた、空想世界の住人だった。しかし近年になり人々の心や生活から想像力が失われ始めると共に、彼ら空想世界の住人達はその数を減らしてきていた。
そして今、セイレンがうかつに呼び寄せてしまった海賊達が、島に隠されている宝を狙っている。だがネバーランドに隠されている宝とは、実はフック船長が信じているような金銀財宝などではなく、ネバーランドを、空想世界の存在を支えている根源的で大切なものなのだ。
幸い現代の人間世界でも、まだ子供達の心は空想世界に向かって開かれていることことを知っていたパン達、ネバーランドの住人は、子供たちの中でも特に想像力に富んだ子供を自分たちのリーダーに迎えて助けてもらうため、ティンカーベルを送りだした。そして彼女が見つけ出したのがピーターだった。
さて、ピーターの考え出した計画は、島の洞窟に偽の宝(難破船から運び出した金銀財宝。ピーター達には何の価値もないが、海賊達が喜びそうなもの)を隠しておき、わざと海賊達に発見させるというものだった。宝を手に入れれば、彼らは満足して島を立ち去るだろう。
ピーターの名案にネバーランドの住人達は喜び勇んで準備を始める。やがて財宝を運ぶための筏も完成し、それにセイレン達が海底から集めてきた財宝を積んで、ドクロ岩の洞窟に向けピーターとパンは嵐の近づく夜の海へと出ていく。

ところが運悪く、偶然ピーター達の姿を見つけたフック船長が彼らの後を追ってきていた。嵐の中、筏の財宝を奪おうとするフック船長とピーター達の争いが始まる。そして戦いの中で、パンはフック船長の銃弾に倒れてしまう。
ピーターは嵐の中、必死で傷ついたパンを仲間達の元に運び込んだが、パンの傷は深く、ネバーランドの住人達には手の施しようが無かった。

そこでピーターはティンカーベルと共にロンドンに戻ることにする。かつて医者の助手をしていたことがあり、医学知識のあるクンダル氏に助けを求めようというのだ。
ピーターが去って以来、ロンドンの貧民窟で病床にふせっていたクンダル氏だったが、帰ってきたピーターの話を聞き、実際にティンカーベルも目にして、彼に銃弾を摘出するための手術の手順を教え、必要な手術道具を与えて送りだす。

ネバーランドに戻る前に、ピーターには気になっていたことがあった。一つは孤児院の仲間達のこと、そしてもう一つは後に残してきた母親のことだった。孤児院の仲間には、すぐにまた彼らを迎えに来ることを約束して、ピーターは母親の元に向かう。ネバーランドから持ってきた金貨を母親に渡せばきっと喜んでくれるだろうと思いながら、ピーターは恐る恐る家の戸をたたく。しかしそこで彼を待っていたのはベッドの上の母親と見知らぬ男、そして母親の残酷な言葉だった…。


2巻までのユーモラスな展開はすっかり影を潜め、物語はいよいよシリアスになっていきます。そしてクライマックス、ピーターの母親の家で起こる思い掛けない事件。ある意味19世紀末を代表するような実在(?)の人物が登場し、世紀末ロンドンを舞台にした物語は意外な展開を迎えます。

(2006/03/01)