ストーリー:
舞台は19世紀末のロンドン、貧民窟に住むお話し好きの少年ピーターは、近くの孤児院に暮らす孤児達のリーダー格で、いつも彼らに白雪姫などのおとぎ話を話して聞かせてやっていた。けれども孤児達が最も好むのはピーターが話してくれる、彼のやさしい母親と、その暖かいキスについての話だった。
確かにピーターには孤児院の少年たちのあこがれ、母親がいた。しかし現実にはピーターの母親はアル中の娼婦で、いつもピーターを殴りつけては酒を買いに行かせるような女だった。
ピーターの周りを取り巻く貧民街の酔っ払い、売春婦、通りに潜む変質者達。ピーターの心には大人たちへの軽蔑と憎しみが育っていく。
一人だけ、そんなピーターを不憫に思っていつも食事を与えて、字の読み方を教えてくれていたのがクンダルという老人だった。
ある夜、酒場で酔っ払い相手に屈辱を忍んでめぐんでもらった酒を母親の元に持って帰る途中、クンダル老人に出会ったピーターは彼から初めて自分の父親についての話を聞いた。
ピーターの父親は裕福な家庭に生まれた空想好きな少年だった。しかし船の遭難で両親を失って以来、すっかり気難しく人付き合いの悪くなった彼は、いつも波止場に来ては大海の冒険へと乗り出す船をながめてばかりいて、当時船員をしていたクンダル老人の友人となった。
やがて成人となり財産を相続したピーターの父親は、そのすべてをつぎ込んで一隻の船を買う。当時、すでに彼と知りあっていたピーターの母親は、なんとか彼をつなぎ止めようと、ピーターを身ごもっていることを打ち明けるが、それは逆効果だった。彼は生まれてくる息子を見ることもなく、冒険の航海へと乗り出し、そして再び帰ることは無かった。
クンダル老人から、彼の父親が残していったものだというギリシャ神話物語の本を受け取ったピーターだったが、その後、家まで帰る途中、夜道で変質者と野犬に追われて酒のビンを落として割ってしまう。怒り狂った母親に殴られたピーターは家を飛び出す。
川岸の小屋の中で寒さに震えながら、父親が残したギリシャ神話物語を読みふけることで過酷な現実を忘れようとしているピーター。そこに光り輝く流れ星が飛び込んでくる。それは鈴の様な音を立てる小さな妖精、ティンカーベルだった…。
ジェームズ・バリの原作で、ディズニー映画として有名になったピーターパンの物語を下敷きとして、ピーターがどのようにしてピーターパンとなったのかを明らかになるお話です。
丹念で表情豊かなロワゼルの絵が、ピーターが永遠の少年であることを選択する理由となったロンドンの貧民窟の悲惨な生活から、おとぎの国なりのシビアな現実が支配するネバーランドに至る舞台の雰囲気を幻想的なフィルタで描き出しています。