THE COMPLEAT MOONSHADOW
by John Marc DeMatteis & Jon J Muth (1998 Vertigo/DC)

不可思議な異星人を父に、美しい地球人を母に生まれた少年、ムーンシャドウの奇妙な一生をシニカルかつユーモラスに描いた物語。ミニシリーズとして刊行された話を一冊にまとめたもの。
1960年代、叔母譲りの狂気を瞳の奥に抱えた美しいヒッピー娘サンフラワーは、ある日突然、万能にして気まぐれ、巨大なボールのような姿で突然現れては消える不思議な生命体、グル・ドセスにより一瞬にして地球上から誘拐されてしまう。彼らはまったく理解不可能な理由から宇宙中の知性体種族の気まぐれなサンプルを集めてきては、ある種の「動物園」を作っていた。
やがて(これまた理解不可能な理由で)グル・ドセスの一人(?)と突然結婚させられてしまったサンフラワーは、異星人との間に一人の男の子を産み落とす。こうして宇宙中から集められた異星人達が暮らす「動物園」の中で、ムーンシャドウと名付けられた男の子は母親の愛情の元、猫のフロドと書物を友達に生長していくことになる。
しかし彼が思春期にさしかかったある日、(やっぱり理解不可能な理由から)突然、母親、猫のフロド、そして父親代わりとしての(ポンキッキのムックのような)異星人イラと共に動物園を出て旅に出ることを要求された…。
こうして始まったムーンシャドウの旅の物語は母親の死や戦場での悲惨な体験、捕虜収容所の暮らしから一転して英雄として祭り上げられるといった波乱の人生を通して、少年の精神的な成長と共に進んでいく。特にさまざまな体験を共にし、次第にムーンシャドウとイラの心が強く結ばれていく姿は非常に感動的。
フルカラー468ページという大作だが、人間には理解不可能な「運命」にほんろうされる主人公の姿はカート・ヴォネガットの名作『スローターハウス5』を思わせる。登場人物達が皆、心の奥にそれぞれの虚ろさと悲しみを抱えて生きていく姿をシニカルさと優しさが入り交じった目で見つめる不思議な味わいの物語。
ジョン・ミューズの美しい水彩画のもつノスタルジックな雰囲気が、物語に一層の陰影を与えている。