The League of Extraordinary Gentlemen
by Alan Moore & Kevin O'Neill (2000 : America's Best Comics)

時代は「もう一つの」ビクトリア朝世紀末1898年、場所はドーバーの白い崖からフランスに向けて巨大な橋の建設が開始されている「もう一つの」イギリス。
今、大英帝国は未曾有の危機に瀕していた。科学者セルウィン・ケイバーにより発見された反重力物質カーボライトが、イーストロンドンの中国人街を支配するドクター・フー・マンチューにより奪われたのだ。
イギリス内務省のエージェント、ボンド氏の使命を受けたウィルヘルミナ・マレーは、アラン・クオーターメイン、キャプテン・ネモ、Dr.ジキル(& Mr.ハイド)、ハーレー・グリフィン(透明人間)という世紀末の名だたるヒーロー達を率い、大英帝国を守るためカーボナイトの奪還に向かう。果たしてフー・マンチューの目的は?そしてボンド氏を操る黒幕、Mr.Mの正体は?
…というのが、名作「ウォッチメン」の原作者であるアラン・ムーアによるスチーム・バンク"The League of Extraordinary Gentlemen"のストーリー。
このコミックの魅力は、おなじみの19世紀末ヒーロー達の活躍するストーリーもさることながら、あちこちに詰め込まれた19世紀末ネタのおもしろさ。主人公のウィルヘルミナ(離婚する前の姓がハーカー)は実はブラム・ストーカーの「ドラキュラ」の主人公ジョナサン・ハーカーの奥さんだし、カーボライトを発見したケイバーはウェルズの「月世界最初の男」の登場人物、さらに彼等が策を練る大英博物館の陳列品にはリッデンブロック海産イクチオザウルス(ヴエルヌの「地底探検」)や、瓶詰になったコッティングレー・フェアリーの標本が並んでいるといった具合。
ひさびさにオタク心を燃え(萌え?)させる傑作コミックスでした。
オマケとして前日譚にあたる小説も載ってますが、こちらもクオーターメインがジョン・カーターやランドルフ・カーター達とウェルズのタイムマシンに乗って、異次元からの侵略者であるクトゥルーモンスターと戦うという、なかなかトンデモなお話(笑)。

ビル・オークレーによる絵はメリハリがはっきりしたミニョーラ調なので、日本でも受け入れられやすい感じです。特にノーチラス号とネモ艦長の登場シーンはかなりのカッコよさ。ぜひ翻訳が出版されることを望みます。
さらに続編にも期待大。今度の敵はウエルズの火星人だ(^_^)。


↑エクストラオーディナリー・ジェントルメンの面々。Dr.ジキルの後の鏡に映っているのはハイド氏。そのまた奥に映っているのは多分アリス。こういった細かいネタがたまらんです。手前にいるのはポーの黒猫だし、後の若い紳士の肖像画には小さくドリアン・グレイと書いてあるし。

(2001/05/03)