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小説版ヘルボーイ
by Christopher Golden etc. ( Dark Horse Comics)
日本でも人気の高い、マイク・ミニョーラ原作のアメコミ「ヘルボーイ」シリーズですが、アメリカではコミックの登場人物、設定にのっとった小説版ヘルボーイも刊行されています。
Odder Jobs
そのタイトルが示すように"Odd Jobs"の好評を受けて企画されたアンソロジー第2弾で、主にホラー系の作家による16の短篇が収録されています。
"Odd Jobs"以降、ヘルボーイ本編でさまざまな設定が明らかになってきたことを受けて、自身の素性の謎に苦しむヘルボーイ、という切り口の作品が多くなったようです。"Odd Jobs"ではヘルボーイがバケモノをぶちのめすワンパターンなエンディングが気になりましたが、今回は逆に、なんとなく煮え切らなくカタルシスの少ない結末の作品が多いような気がします。
収録作中では、ヘルボーイの世界に刑事ドラマを持ち込んだ"Newford Spook Squad"、第二次大戦中、ユダヤ人魔術師が民族を守るために作ったゴーレムが現代に蘇り、ホムンクルスのロジャーと戦う"Of Blood, Of Clay"、私立高校の男子寮に出現したマンティコアにより、クライブ・バーカーばりの惨劇が繰り広げられる"A Full and Satisfying Life"、ヘルボーイとリズの乗ったジープが砂漠を疾走し、それを灼熱の炎でできた地獄の番犬達が追いかけるシーンが美しい"The Glass Road"などが印象に残りました。
また、映画版ヘルボーイの監督ギレルモ・デル・トロの書いた短篇も収録されています。
The Bones of Giants
ホラー作家クリストファー・ゴールデンによる長編小説第2弾 。
ノルウェーのツンドラで発掘された「神々のウォーハンマー」ムニョルニールの戦士として選ばれたヘルボーイが、エドマンド・アイクマン教授(短編"King Bold"["The Right Hand of Doom"収録]に登場)の手によりコペンハーゲンの地底から復活した白骨の巨人、古代の巨人族の狂王スリムと戦うというストーリー。
巨人王国の復活のため北極圏の荒野にそびえる巨人達の城塞ウトガルドに向かうスリムと、それを追うヘルボーイとエイブ、アイクマンの娘ペルニラ。ストーリーはウトガルドで「いかずちのハンマー」ムニョルニールを手に巨人達(のゾンビ)と戦うヘルボーイ、上空を舞うオーディンのカラスと城塞の上から見つめるヴァルキリー達という北欧神話的な実にかっこいいクライマックスを迎えます。
Odd Jobs
コミック原作やホラー小説分野の作家らによる14のヘルボーイストーリーが収録された短編集。
冒頭を飾る「メデューサの復讐」"Medusa's Revenge"は話の展開やビジュアルなイメージが最も原作のコミックに近い作品。ギリシャの小島で伝説のメデューサが(アテナの盾に付いた首のままで)よみがえるお話です。石にされたメデューサの犠牲者達はメデューサが死ぬと呪いが解けて元の姿に戻りますが、粉々にされた石像もちゃんとグチャグチャの肉片に戻るというのが悪趣味(笑)。
収録作品の中では最も長い「ジグソー」"Jigsaw"は大学の標本庫に保存されていた魔術師の首(ジグソーパズルの様にバラバラ)が甦るお話。フランスを舞台にホラー映画風のプロット、描写が美しく、登場人物の情感に踏み込んだ好編でした。
「スケア・クロウ」"Scared Crow"は「嵐の夜、酒場でひとりの男が奇妙な話を語りだした…」というホラー小説定番の設定を使った話ですが、実にイイ感じで雰囲気が盛り上がる割にはオチがやや肩透かしで惜しい。
「配達済み」"Delivered"は言葉を話すニューヨークの巨大ネズミ(オカルトマニア)とヘルボーイが奇妙な取引をするというコミカルな作品。
ヘルボーイが登場しない唯一の作品「燃やせ、少女よ、燃やせ」"Burn, Baby, Burn"では少女時代のエリザベス・シャーマン(BPRDのパイロキネティック)が主人公。超能力者の悲哀を描いた定番のプロットで"Cry, Baby, Cry"をもじったタイトルが全てを語っています。
他にも単なるコミックのノベライゼーションというイメージを超えてバラエティに富んだスタイルの作品が集められていますが、設定上ヘルボーイが強すぎるためどうしても解決部分がワンパターン(ヘルボーイが敵をドツキ倒して終わる)に陥りがちで、その辺をカバーするために各作家とも苦労している感はいなめません。
The Lost Army
クリストファー・ゴールデンによるヘルボーイの最初の長編ノベライゼーション。
1986年、エジプトの砂漠で消息を絶ったイギリスの考古学調査隊の捜索に向かったヘルボーイの前に、紀元前6世紀、同じく砂漠に消えたカンビュセス王の軍隊が変わり果てた姿でよみがえるというストーリー。当然それを操る古代の魔術師とヘルボーイの対決が見せ場の、もろにインディー・ジョーンズ+ハムナプトラなお話になってます(w
クライマックスはエジプト−リビア国境での近代兵器を備えた国連軍とミイラのカンビュセス王軍(とっくに死んでるので強い、強い(笑))との激突。
どの話も(特にゴールデンの小説は)簡明な文章でとても読みやすい本ですが、やっぱりマンガのノベライズは洋の東西を問わずいっしょなのでしょうか?
どの本にもミニョーラ自身によるイラストが豊富にちりばめられているので、フアンの人はぜひ一読をお奨めします。
(増補:2005/03/06)
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