CLOCKWORK
by Philip Pullman (Scholastic, 1999 )

"His Dark Materials"(「ライラの冒険」シリーズ)の作者として知られるフィリップ・プルマンによる童話です。

「…そして時計仕掛けのような物語もあるのです。一度ねじを巻いたらもう何もそれを止めることは出来ません。物語はその定められた結末に向かって進んでいきます。そして登場人物達にはどうやってもその運命を変えることは出来ないのです…」

昔々、ドイツの小さな町、グロッケンハイムにはドイツ中から称賛される大時計がありました。その仕掛け時計には百以上もの精巧な人形が組み込まれていて、時計が時を告げるたびにその人形達はまるで生きているかのような動きをみせるのです。 その人形達は長年にわたってグロッケンハイムの時計職人の弟子達が作ってきたものでした。時計職人の弟子はその修業を終えた時に一人前のマイスターとなった証として、自分が作った最高の人形を一体、大時計に付け加えていくしきたりになっていました。

ある冬の夜、町の人々が集う酒場の団らんの中、時計職人の弟子カールだけは一人絶望に打ちひしがれていました。明日は町の大時計で自分の作品を人々に公開しなければいけないのに、彼は人形を作り上げることができないでいたのです。

やがて町の人々が楽しみにしている、小説家のフリッツによるお話の朗読が始まりました。彼はかつてオットー王子とその息子フロリアンの身に起こった不思議な事件について語り始めます。
それは狩に出たはずの王子のソリが、真夜中に王子の死体と息子を乗せて館に戻ってきたという恐ろしい事件でした。不思議なことに、王子の死体はその胸の中に組み込まれた精巧な時計仕掛けによって自動的にムチをふるい馬を走らせ、ソリを館まで戻らせていたのです。
そして王子の死体と時計仕掛けを調べた学者は、このような不思議な仕掛けを作ることができるのはただ一人、カルメニウス博士をおいて他にはいないという結論に達します。いったい王子達の身に何が起こったのか…。

フリッツがここまで語ったところで突然酒場のドアが開き、一人の男が入ってきます。なんとそれは話の中に登場したカルメニウス博士本人でした。
恐怖に狩られて酒場を逃げ出した町の人々をしり目に、カルメニウス博士は絶望して座り込んでいるカールにある申し出をします…。

子供向けの童話ですが、二つの物語が溶けあって一つの不思議な物語を作り出していく構成がみごとで、またその不気味で幻想的な雰囲気はE.T.A.ホフマンの物語を彷彿とさせます。とにかくプルマンのストーリーテラーぶりには脱帽。
レオニード・ゴアによる幻想的な挿絵も美しく、英語を勉強する中高生にはうってつけのテキストだと思います。
(2004/03/15)