|
BREATHTAKER
by Mark Wheatley & Marc Hempel (1994 Vertigo/DC Comics)
物語は干からびた老人が、一人の女性の腕の中で息絶えるシーンから始まる。彼女、チェイス・ダロウは政府の極秘プロジェクトによって生まれたミュータントで、出会った相手を魅了し同時に生命力を吸い取ってしまうという「マタ・ハリ効果」と呼ばれる能力の持ち主。問題は彼女自身がその能力をコントロールできないことだった。
彼女はプロジェクトの実験台となった母親とともに組織を逃れてきたのが、生長するにしたがい無意識のうちに母親の生命力も奪いつくしてしまい、やがては孤独な逃避行の日々を続けるようになっていた。大富豪ポール・レイモンドの愛人として暮らしていたチェイスだが、彼が干からびた老人となって死ぬ姿を見て、自分が他の人間にとっては破滅を知りながらも愛さずにはいられない麻薬のような存在であることを痛感し、彼女は再びあての無い逃避行に出る
追跡者、"ザ・マン"もまたチェイスと同じプロジェクトによって生まれたミュータント。彼の場合はその能力は肉体の超人的再生力。チェイスとは逆に政府のトップ・エージェントの広告塔、スーパー・ヒーローとして映画やコミックにも登場。アクション・フィギュアの販売会議に引きだされるような日々を送っていた。
レイモンドの死亡から再び政府による捜索が始まる。自分自身もチェイスに魅せられながらもそれを追うザ・マン。こうして二人のミュータントの追跡劇が始まった…。
人から奪うばかりで何も与えることの出来ない存在、そういう自分自身に苦しむチェイスを中心にストーリーは進んでいくが、物語のラスト、長い逃避行の果てに彼女はついに自分が与えることの出来るもの、自分自身の存在意義を見つけることになる。
DCコミックのVERTIGOシリーズとして刊行されているが、暗い話の多いVERTIGOシリーズの中では、非常に読後感の良い話だった。
絵を担当しているマーク・ヘンペルはサンドマン・シリーズの"The Kindly One"でも活躍しているが、そのカラーインクによるグラフィカルな絵は非常に美しく、僕は大フアンなのだ(^^)
 |