BLACKSAD (Tome 1. Quelque part entre les ombres)
Díaz Canales & Guarnido (2000 DARGAUD)

黒猫探偵ジョン・ブラックサドの活躍を描いたハードボイルドB.D.シリーズの第一巻。

欧米では伝統的に擬人化した動物達の登場するアニメやコミックが広く人気を集めていますが、そんな欧米でもリアルさとカリカチュアが絶妙なバランスを見せるJuanjo Guarnidoの絵は近年まれに見る傑作と高く評価されています。

ストーリー:
「…朝飯の消化が悪い朝というものはあるものだ。特に死体となった昔の恋人に再会した朝は…」とハードボイルドお決まりのモノローグで物語の幕は開く。人気映画女優ナタリア・ウィルフォードが自宅のベッドで射殺死体となって発見された。彼女のかつての恋人で私立探偵のブラックサドはなんとしても犯人に裁きを下すことを胸に誓い、独り捜査に乗り出す。
以前、彼女のボディーガードとして紹介した友人、プロボクサーのジェイクから、最初の手がかりとして彼がクビになる直前にナタリアの取り巻きだった男達の一人、シナリオライターのレオン・クロンスキーの名前を聞きだしたブラックサドは、レオンのアパートを訪れる。しかしそこは既にもぬけのからとなっており、居合わせた掃除婦はレオンの友人と名のる「真ん丸な目をした男」がレオンは旅に出たと説明されたと答えた。
ナタリアとレオンが仕事をしていた映画会社を訪れたブラックサドは、そこでも「真ん丸な目をした男」がレオンは旅に出たと連絡してきたと聞かされる。はたしてその男の正体は?

やがて捜査を続けるブラックサドは酒場でのタレコミからレオンが既に殺され、別の人間として墓地に葬られていることを知る。レオンが葬られた墓の前で、一人の人間の存在を社会から完全に抹殺できる程の力を持つ敵について思い巡らせるブラックサドを突然二人の大男達が襲う。彼をさんざんに痛めつけた男達は事件から手を引くように言い残して去っていった。
ボロボロになって自分のアパートに戻ったブラックサドは、今度は突然警察に連行される。そこで友人の警察署長のスミルノフから上層部からの圧力によりナタリア殺害の捜査が打ち切られようとしており、それもやはり敵の力によるものであることを知らされる。そしてスミルノフは動きの取れない自分に代わってブラックサドに、なんとしても彼が犯人を捕らえろと言う。あらゆる責任は自分がすべて負うとまで言うスミルノフに、なぜそこまですると訊ねるブラックサド。スミルノフは「俺はこの世の中が、力を持ったやつでも罪の裁きを受けるまっとうな所だと信じたいんだよ。結局俺はバカ正直なのさ。」と答える。
こうして再び孤独な戦いが始まったブラックサドだったが、アパートに帰ったとたん、彼に新たな銃口がつきつけられることになる…。


「星はその輝きを失った、俺の過去を真っ暗な闇のどこかに迷わせたまま。そして人は過去無しで生きていくことはできない…」とハードボイルド丸出しのクサいセリフで昔の恋人の復讐を誓うブラックサド。

さまざまな脇役達も非常に魅力的です。特にその役柄に合った動物の選択がみごと。

暴漢に痛めつけられる探偵はハードボイルドのお約束。

アクションシーンもハードボイルドのお約束。絵うまいなぁ。

かっこいい警察署長のスミルノフ。なんとなくアラン・シェパードっぽい(w

個人的に気に入っている警察署の風景。警官はみな犬というのが楽しいです。ひっぱられてブーたれてる娼婦のオネーサン達もお約束ですね。

「物語はほろ苦い想いを残した。憎悪と復讐そして退廃に汚れた空気が俺を取り巻く。今、俺はこの世界の中へと放り出される。弱肉強食のジャングル、人が動物のようにふるまう世界に。俺は人の世の闇と続く道に踏み出し、その真ん中を再び歩きだす…」と最後までハードボイルド丸出しのブラックサド。

(2004/02/23)