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Anansi Boys
Neil Gaiman (William Morrow, 2005)
ファット・チャーリー・ナンシーは子供の頃からエキセントリックな父親に悩まされてきた。成人すると故郷のフロリダ(と父親)から逃げ出し、今はロンドンで資産管理会社に勤めている。
何をやってもパッとしないチャーリーだったが、どうにか平穏な生活を築きあげ、婚約者のロージーとの結婚式を控えていた。ロージーの主張でしぶしぶ父親を結婚式に呼ぶことに同意したチャーリー。しかしその機も機、彼の元に飛び込んできたのは父親の訃報だった。
フロリダに戻った彼を迎えたのは、昔から彼の家の近所に住んでいて親交のあった老女達だった。そしてどうにか父親の埋葬をすませてロンドンに戻ろうとするチャーリーが、老女達に告げられたのは、父親が実は「神」だったこと。しかもアフリカ神話のトリックスター、物語の神アナンシだったという事実だった。しかも彼には幼いころ生き別れになった兄弟までいるという。
老女達の言葉が信じられず、キツネにつままれたような気持ちでロンドンに戻ったチャーリーの元に、やがてスパイダーと名のる男、彼の兄弟が現れる。そして彼もまた、父親ゆずりの魅力と不思議な力を持った「神の息子」だった。
突然家に押し掛けてきて、婚約者を横取りし、彼の生活をめちゃめちゃにしてしまったスパイダーをなんとか追い払おうと、チャーリーは助けを求めて再びフロリダの老女達の元を訪れる。
故郷の「魔女」達の力を借りて、世界の始まり、神々の住む世界を訪れたチャーリーに、スパイダーを追い払う手伝いをしようと申し出たのは、アナンシに恨みを持つ「鳥女」だった…。
現実世界では婚約者のロージー、資産管理会社の社長で悪党のグラハム、魅力的な女性刑事デイジーを巻き込んで、ロンドンとカリブ海のセント・アンドリュースを舞台に殺人事件を巡る大騒ぎが、そして神話世界ではアナンシの血筋を絶やそうとする仇敵達との戦いが始まる。
「アメリカン・ゴッズ」に登場したカラオケ好きの神様「アナンシ」・ナンシーの息子(達)を主人公に据えた長編で、重くシリアスな雰囲気の「アメリカン・ゴッズ」とは対照的に、コミカルで軽妙なタッチの作品になっています。
コミカルと書きましたが、正直言って物語の冒頭部分、次々に繰り出されるユーモラスなシーンや設定があからさますぎるというか、ここは笑うべきところなんだろうな、というのが見てとれて、逆に醒めてしまって全然笑えず、ひと月ほど読むのをやめて放り出してしまいました。イギリス人ゲイマンのユーモアが微妙というか、モンティ・パイソンぐらいはじけてしまえば別なんですが。
しかし物語の中盤、チャーリーが神々の世界を訪れて鳥女と取引し、現実と神話世界の境界が曖昧になってくるあたりから、ゲイマンらしさが出てきて、がぜん面白くなってきます。終盤は「ネバーウェア」を思い出させるようなスピード感あふれる展開で一気に読ませます。
主人公チャーリーが急速に真の自分を見いだしていくあたりは、少々ご都合主義的な感もありますが、「ネバーウェア」と「アメリカン・ゴッズ」の延長線上にありながらも、ユーモラスで明るい雰囲気をたたえた、良くも悪くもゲイマンらしさの出た作品でした。
(2006/05/31)
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