選択度改善方法     Q5'erの登場     PBTについて

先人は如何にしてスーパーヘテロダイン受信機の選択度を改善したのかを検証してみるのも一興。と言う事で過去の雑誌等に掲載されたものについて の記述です。
スーパーとした訳は一般的に中間周波増幅段で選択度を稼いでいるからで、0-V-1などの再生検波はここでは取り上げません。
先ず最初にQマルチを取り上げます。
原則として周波数変換管のプレートに接続して使う外付け型のQマルチです。
往時にはユニットとしてドレーク社とかヒースキット社などから販売された模様です。

スイッチをPEAKの位置にして実効的にQを増大させ選択度を稼ぐ方式です。
NULLの位置では反対に信号を減衰させるいわば除去する為にあります。

右側の球が発振管で左側はインバーター管となります。

この回路では 部品が欠損していてPEAK側しか動作しません。
左側の球のプレートとスイッチの間に赤で追記した様にプレート抵抗として数100kΩが必要です。

この型のユニットは選択度が不足する受信機で後付けで手軽に使用可能ですが使う方の受信機の局発の安定度が問題となる筈です。
因みに国産の受信機では9R59などのオプションで存在しました。

Qマルチはコリンズの有名な75Sシリーズや75A-4でも採用された事は周知の通りです。
IFTを直列に配置し微小容量で結合して選択度を稼ぐ方法です。
この例は1956年版のアマハンに製作記事が載っていました。

下の方にあるQ57erと考え方は同じですが物凄い個数のIFT群です。

奥にある11個の方が50Kcs中心のCW受信用の狭帯域回路です。
手前側にある少し大型の方は50Kcs〜53Kcsのバンドパス特性を持つPHONE受信用だそうで、3Kcsと狭いですからAM波の片側サイドバンドだけを受信対象とするのだそうです。

この機器が実用になるかどうかはIFT群の経年変化が小さい事が必須だったでしょう。
勿論受信機の局発も安定度が問題になるのはQマルチと同様です。

これ程までにしなくてもRF1IF2の標準的な短波受信機でも455KcsのIFTを2個ないし3個を直列接続した例はいくつもあります。
ダブルスーパー形式にして選択度を稼ぐ受信機の記事が古いアマハンにありました。

この例では1st IFを1700Kcsにとってイメージ比を良くし、100Kcsの低いIFに変換し更に検波に再生方式を採用したものです。

ご覧の様に2nd Convでは水晶発振方式の自励でしかもカソードの電位を変えて受信機全体の所謂RF Gainを変えています。
ゲインを変えても周波数変換の機能が変化しないので本文ではその為に水晶に金を掛けても惜しくない筈だと記述があります。

更に再生検波は周波数が100Kcsの固定ですから簡単に調整可能としています。

この回路方式はQ5erと同じですが少し違うと思います。
クリスタルフィルターの出番です。

(A)は多くの全波受信機に採用されたシングルクリスタルフィルター回路です。
図のR1で選択度を多少とも広く出来ますしC1でパスバンドの片側にヌルの位置を調節できますので持て囃されたものです。
帯域が狭い数100csだと矢張り局発の安定度が問題となります。
R-388/URRやR-390Aでも使われていますが局発の安定度が問題ないので実用になった筈です。

(B)の方は数Kcs異なる二個の水晶を使ってある程度の帯域を確保する方式のものです。
周波数差が小さければCW用、数Kcs例えば2Kcs〜3KcsならPHONE又はSSB用として用いられてきました。
しかしどちらの回路方式も周波数が455Kcs程度の領域では使われても高周波或いは低周波領域では水晶の入手難の問題がありました。

(B)の方式はSSB通信が開発段階では数多くの製作調整情報が各種の雑誌に掲載された時期がありました。
例えばSSB専用受信機に応用した例で水晶の選別方法や新しい方式のAGC回路を提案した下記の記事があります。
Some Ideas in a Ham-Band Receiver, May 1960, QST byW9BIY and W9IHT


クリスタルフィルターは後年同一周波数の水晶片をシリーズに接続し間に少容量のCでアースへ落とすいわゆるラダーフィルターが出現して自作が容易になります。
Q5'erの登場です。即ち 了解度を表現するQRKを5にするものと言う意味です。

これは455KcsのIFでは選択度が不足する場合に50Kcsや100Kcsの低い周波数に変換して全体ではダブルスーパーにし選択度を稼ぐものでQRKと言う略号が示す如くA3電波受信時の混信を減らし了解度を向上させるものだったのでしょう。

松下電器から主要構成部品のコイル類のキットが販売されていた記憶があります。

製作応用上で注意しなければならないのは増幅段数が多い為にゲインがあり余りノイズが結果的に多くなる事でした。
実際に使っている人の受信機で7メガ帯を受信するとその事が実感できました。
ハリクラのSX-117の例です。

SX-117はコリンズタイプの親受信機にQ5'erを付加したものと考えられます。
そのVIFは6.0Mcs〜6.5McsでFIFが1650Kcs。そしてQ5'erが50.75Kcsを中心とするものでノッチフィルターと選択度を三段階に切り替える回路を備えています。

左図において2nd MIXERの後に直ぐに50KcsのIF増幅段を接続しなかったのは50Kcsのイメージ混信を嫌ったのでしょう。

この方式はハマーランドのHQシリーズや国産のスターのSR-700などの受信機でも採用されていました。
ドレークのR-4Cの例です。

R-4シリーズはハイフレのIF段とプリミックス方式のシングルコンバージョンの後に50Kcs台のQ5'erを付加したタイプの受信機として有名です。

R-4Cでは更に回路の工夫でパスバンドシフトとノッチフィルターを標準装備しクリスタルフィルターの選択使用が可能です。











R-4Cではパスバンドシフトですが一般的にはパスバンドチューニングPBTとして広く採用されたもので中間周波の帯域を狭くする方式があります。
その部分だけを下図に示します。
パスバンドチューニング回路の例です。
455kHz辺りでは優秀な狭帯域のフィルターが入手可能ですが往時には困難な時に、たまたま別の周波数のクリスタルフィルターを持っていたら実施すると効果あるものでした。
即ち 455kHzセンターの信号を周波数変換し狭帯域のクリスタルフィルターを通しもう一度変換して元の455kHzセンターの信号に戻すものです。
ここで11.215MHzのローカル信号を少し変化させると10.760MHzのフィルターを通る時に高域側又は低域側がカットされて帯域が狭くなり目的を達する性質を利用します。
フィルターのセンターとローカル発振の周波数を選別して応用するとなかなか便利な機能を実感できます。
実機ではFT-101Z/FT-901などで標準装備でした。
実際 最近入手したコリンズんぽ75S-1でCW用のフィルターもBFOの水晶も無い場合に確かめてその効果を体験しました。

続きます