温故知新
       何十年も前の技術、回路や部品が現代でも使えて、しかも性能が良い場合があるかも知れないと言う訳で、独断と偏見です。

1.HiQの同調コイル  2.マルチバンド同調回路  3.ミュー同調機構  4.高周波増幅管には何が良いか?
     5.双三極管のマルチバイブレーター
  6.AF AMPLIFIER SUBASSEMBLY  7.コリンズR390Aのコイルの秘密
     8.アンテナコイルはどうなっている?  9. TRC-75の高周波部分  10.AM-1529/URC  11.Ref IF Amplifier
     12.R390AのIFTの秘密  13.7059と言う真空管  14.R390Aのコイルの更なる秘密?
     15.A Silent TR Switch   16.珍しいBreak In 方法  17.球式VFOの安定化法の一例  
    

       1.同調回路のコイル     

現代の受信機は、トップにバンドパスフィルターを置くのが主流で、同調操作の概念はありません。
しかし、所謂プリセレクター(プリアンプではない)が必要な場合があり、又、アッテネータを併用してトップの性能を補う事もあるでしょう。
夜間の7MHz帯を受信する場合や、昼間でもコンテストでは、アッテネータやフィルターを挿入して問題対処する事があります。
同調回路はコイルとバリコンの組み合わせで、しかもQが大きい素子を使う・・・・は何処へ行ったのでしょう?

BC-779やSP-600のスーパープロBC-34*シリーズの航空機無線機SX-28とかの高周波増幅段のコイルとバリコンの組み合わせのこれぞ同調回路と言われる受信機群が現代でも検討に値するのは特別な思い入れだけでは片付けられない何かがあるのでは。

尤も、コリンズの51S-1は別物でコイルは物凄く小さいです。その為に、コイル群がターレット機構に取り付けてあります。
往時の受信機製作記には、よくエヤーダックス等の空芯コイルの使用例があります。(例えば、QST Jan. 1968 by W5OMX)
商品ではSS-1Rが有名です。この受信機の特徴は、高周波増幅段がなく、HiQのコイルを使っていていきなり7360のミクサーである事。

       2.マルチバンド同調回路  (参考文献:QST July 1954, P23〜P28)

マルチバンド同調回路は、1948年にアメリカのNational CompanyのKingという人がMULTIBAND Tuning Circuitとして最初に紹介したそうです。 その後、幾つかの商用機や自作の送信機器に採用された様ですが、いつの間にか使われなくなりました。

  Kingの基本回路は下図の通りです。 

原理をしめす同調回路 低周波領域における等価回路 高周波領域における等価回路

コイルL1とバリコンC1Aの並列同調回路コイルL2とバリコンC1Bからなる直列同調回路とを、並列に接続した2端子回路網です。
バリコンC1AとC1Bは連動ですが、容量は同じでも違っていてもかまいません。又、コイルL1とL2との間には相互結合は無いものとします。
この2端子回路網は、バリコンとコイルを適切に設計した定数で使うと、通常の同調回路より広い範囲、例えば1:8や1:9という変化範囲を連続して得られるといいます。
従って短波帯のハムバンド、3.5MHz〜30MHzの範囲でコイルを切り替えたりせずに同調回路が製作出来る事になり、送信機や受信機の段間同調に使用出来ます。 但し、途中に不連続な部分がありますが、ハムバンドが外れる様に設計出来るそうです。

但し、注意しなければならない事があります。
バリコンC1AとC1Bは連動ですから、例えば3.5MHzと14MHzが同調する箇所はバリコンの容量が大きい部分でしかも極めて近く、又7MHzと
28MHzが同調する箇所は反対にバリコンの羽が抜けた側でこれも近くなり、間違った周波数を捕らえる事がありますが、それを逃げるやり方
もあるそうです。

低周波領域では、直列のコイルL2が短絡状態で、バリコンC1AとC1Aが並列になります。
高周波領域では、今度は並列コイルL1のインダクタンスが大きいので単にチョークコイルの働きをし、バリコンC1AとC1BはL2に対してスプリットステーターのバリコンとして動作します。

       3.ミュー同調機構

コリンズの機器の特徴の一つは使われているミュー同調機構でしょう。
高周波段の同調機構の素晴らしさは、複雑さもさる事ながら、一気にマルチバンド機器の小型化と性能向上に寄与した点が上げられます。
短波帯をカバーする同調回路をバリコンで実現するには最低でも3組のコイル群を切り替えなくてはなりません。
しかし、さすがのコリンズも初期の頃はマルチバンド化にはコイルを切り替えて一挙動でコアーを出し入れする機構でしたが、後に75Sシリーズではコイルは1組でマルチバンドにはトリマーコンデンサーを切り替える方法になりました。  この種の方式はドレークの受信機類も採用しています。  

尚、同じコリンズでも75Aシリーズでは、コアーの出し入れはメインコイルの1.8MHz帯だけで、他のバンドは並列に小さいコイルを接続していますので両者の中間段階の方式と思います。

  そこでコリンズ社の初期の機器を初めとする幾つかの例を観察してみましょう。 詳細は別項にあります

       4.高周波増幅管は何が良いか?

管球式の短波受信機を製作する時に、高周波増幅管は何が良いか大いに迷うところです。
時代と共に要求される内容が変わってきました。感度が良いだけではどうも駄目らしいです。
現代の受信機の高周波増幅段は別の機能の為に設けられている様に思います。    

  ここでは、先ず、高周波増幅管に求められる性能を列挙してみます。(原文は英語の雑誌でした)
  1.出来るだけ微弱な信号を扱えると同時に大信号で問題を起こさない事。必ずしも増幅度が高い事を意味しない。
  2.ダイナミックレンジが広い事。AGCはその代理にはならない。
  3.リニアリティが良い事。Vg1対Ip曲線で、Vg1の広い範囲でIpが直線的に対応する事を意味する。
  4.もしAGCをかけるならその為に歪まない事。AGCはアッテネータ形式が良い。
  
コリンズ社が好んで使った(又は開発させたのか探してきたか)6DC6(6AZ8の5極管部)は少なくとも上記の3項で特筆される球でしょう。
この様な観点からRCAのデータブックRC-30で数ある高周波増幅用のMT管から探してみました。
曰く、6BA66BJ66BZ66EH76GM66KT6等が候補で、いずれもセミリモートカットオフの球です。
残念ながら、われ等の憧れ(?)の6DC6は、シャープカットオフです。

  本件に関しては、松下さんからご指摘ありまして、RC-30ではその通りだが、他のメーカーの
  データブックではセミリモートカットオフだ。
  6DC6はリモートとシャープの中間の特性ではないか、と仰っています。
  又、RC-30でも、6BA6はリモートカットオフ、6EH7はセミリモート、6DC6はシャープカットオフと
  定義してありますから本当は?です。


これらの内、6EH7が最も優れていると思います。その理由は下記の通りです。但しこの球は、シャープカットオフの兄弟管6EJ7と共に
9ピンのMT管です。
Gmが大きい(12500μ)Cpgが比較的小さい(0.005pF)グリッドバイアスの変化に応じたGmの変化を規定してある。等々
Gmの変化とは次の通りです。
条件:Vp=Vg2=200V、Rg2=22KΩで、Gmが125μ@-19.5V、625μ@-9.5V、1250μ@-6.5V、12500μ@-2Vと変化し、
更に、G1の大信号入力に対する特性が良く、バイアスが-19.5Vで400mV、以下160mV、100mVで、クロスモジが1%未満であると先ほどの
英文の作者(勿論ハム)が記載しています。この事はRC-30にも記載があります。(P263)

       5.双三極管のマルチバイブレーター  

マルチバイブレーターには、ご存知の様に、BistableAstableMonostableの3種類があります。

短波受信機用のキャリブレーターとして1MHzと100KHzの信号源が必要になり、何かないかと探したら手持ちのアセンブリの中に都合良いものが見つかりました。500KHzの水晶発振器と100KHzのマルチバイブレーターを組み合わせたアセンブリです。
回路図、内部の様子と動作を確認している様子を下の写真でお見せします。
現代では、このアセンブリ位は一個のICで実現しています。少し前にはマッチ箱位の基板でトランジスター回路でした。

回路図です。

恒温槽に入れた500KHzの水晶発振回路と双三極管を使った100KHzのマルチバイブレーターを組み合わせたアセンブリで、元は米軍のARC-38というトランシーバーの原発信器に使われていた基準発振器です。

500KHzの信号は実際には外部へは取り出さず、2逓倍して1MHzのサイン波を作ると同時にマルチをトリガーして高調波を数多く含んだ100KHzのスパイク状の信号を作り出しています。

恒温槽はバイメタルとヒーターの組み合わせで、直流の28Vで動作します。
設定温度は70℃だそうです。
アセンブリの内部の様子です。

球は、左の低いのが5654(6AK5)、右側のが5814A(12AU7A)、真ん中の円筒が恒温槽に入った500KHzの水晶ユニットです。

左下にあるのが2逓倍用の同調回路で右下へ行っている白っぽいリード線が出力端子へ接続されています。

右下の茶色い基板上にあるCR類がマルチの抵抗、コンデンサーです。

このアセンブリは実装では全体をすっぽりアルミのケースがかぶさります。
動作確認中の様子です。

オシロに写っている波形は、上が1MHzのサイン波で下側がマルチの波形で丁度1/10に分周されています。

球のプレート電圧は150Vで動作させました。

外部へ出すマルチ回路の出力波形はオシロで観測してもなかなか見にくいスパイク状になっており、相当高次の高調波を含んでいると思われます。

写真に写っている下向きの波形を更に微分した様な波形です。従って細い微分波形です。

       6.AF AMPLIFIER SUBASSEMBLYを観察する  

管球式で短波帯のA3/A1トランシーバーARC-38に使われていた表題のユニットを観ます。
普通、音量の調節は、低周波増幅回路の入力レベルを加減しますが、このユニットにはその様な可変素子が有りません。
アンプの出力ラインのレベルを加減して目的を達しています。

  アセンブリの写真と回路図を下図に示します。

回路図です。

三段のCR結合の低周波増幅です。
IFアンプ出力とサイドトーン信号を入力して、300Ωのライン出力を取り出しています。

初段のカソードには半固定の可変抵抗器が接続してありますが、これは工場調整時に合わせる事になっていました。

通常の音量調節はどうするのか?

300Ωのラインに固定インピーダンスの可変減衰素子が挿入してあり、手元の操作部で音量調節をする構造だった様です。

ヘッドフォーンのインピーダンスも300Ωでした。
内部の様子です。

球は左から5814A、右が5686。
鼠色の四角いのが出力トランスです。

真ん中に見える白いものは出力管のカソードに入っている2μFのコンデンサです。

印刷配線基板の様なものは、端子を打ち込んでコンデンサや抵抗を半田付けして回路を構成してあります。
その板を左右に見える止めねじで取り付けてあります。

       7.コリンズR390Aコイルの秘密  

コリンズ社製の機器にはR390Aに限らずコアーを出し入れして同調をとるコイルが多数使われている事は周知の事柄です。
他社の製品が殆どバリコンを可変素子として使っていますが、コリンズ社はわざわざ製作しにくいコイルを使っているのは何故でしょう?

コアーを出し入れして単純に同調をとる事は簡単ですが、いわゆるシングルコントロールで実現するとなるとなかなか大変です。
もし、直線的に移動するコアーの動きが計算可能で、移動距離が周波数と直線的関係があれば、ダイアル等の回転運動を周波数に変換して表示出来る機構を製作する事ができます。
この方式が、PTOの軸を回転するとあちらこちらにあるコイルのコアーが上下して各段の同調がとれる機構となって各種の機器に装備されています。
実際にR390Aに使われている同調コイルの一部を観察してみましょう。

2ndVIFのコイルの内部写真です。

2ndVIFは3MHz〜2MHzの可変同調回路で、PTOの3.455MHz〜2.455MHzの信号と混合して455KHzの固定IF信号を作り出します。
即ち、クリコンの親受信機となる部分です。

コイルを見ると線材が一見すると無造作に巻いてある様に見えます。
上の方より下に行くほど密着重ね巻きの度合いが大きくなっています。

コイルの向こう側い見える四角いものは同調用のセラミックコンデサーです。
コイルの上の方に見える茶色い板にはトリマーが付いています。
右側にあるのが可変する為のコアーで先端にネジがきってあります。

ケースは長方形の小さい穴にストッパーが引っ掛って抜けなくなります。

コイルアセンブリは、コイルボビンの中に(上から)ビスを挿入してシャーシに埋め込んであるナットで固定されます。
(最初は、この構造がなかなか理解出来ずにいて、取り出す方法が分かりませんでした。)
1stVIFコイルの内部写真です。

1stVIFは0.5MHz〜8MHzまでの入力を一度、17.5MHz〜25MHzに持ち上げてから、次に3〜2メガの親受信機で処理するトリプルスーパーになる部分です。
これによって水晶の個数を節約しています。

コイルを見るとピッチが少しずつ変化している様子が見えます。

このコイルは可変トリマーだけでセラミックコンデンサーは外付けです。

尚、コイルアセンブリの接続端子が何の作業跡も見えない訳は、ピンコンタクトになっていて、シャーシ側にこれに勘合するピンソケットが埋め込んであるからで、交換作業が極めて簡単に可能です。


尚、全体の寸法は、30mmX25mmX45mmです。
又、アンテナコイル群は一寸大きくて、43mmX25mmX45mmです。

       8.R390Aのアンテナコイルの構造は?   

このコイルは解説書(赤本)の説明によると一次コイルと二次コイルの間はファラデーシールドが施されているとの事です。
  どんな構造のコイルでしょうか。回路図では分かりません。

解説書でRFコイルについて記述してある部分です。

この文章中で記述してある「ボビンの穴からネジ止めでシャーシーに取り付けられている」の部分が最初は理解できなくて困りました。

完全に組み立ててある状態では取り外しは不可能です。
スラグラックをはずして更にコアーを抜いて初めてコイルアセンブリを取り外しできる構造です。

  
       コイルアセンブリ
を観察してみましょう。

2種類のコイルアセンブリです。

左側がアンテナコイル、右側がそれ以外のアセンブリです。

アンテナコイルには端子が全部で6個あります。
右側の2個がアンテナ端子へ、左側の4個はRFAのグリッド、AGCライン、アンテナトリマー及びホイップアンテナ使用時の接続用にそれぞれ決められています。

それに対して、その他のものは2端子で単にホット側、グランド側となっています。

寸法は、大きい方が43mmX25mmX45mmで
小さい方が30mmX25mmX45mmです。
アンテナコイルの内部写真です。

緑色のセラコンの下に見えるコイルにそれぞれ2本の光って見える輪があります、これが一次コイルの巻枠と二次側のコイルとの間に施されたファラデーシールドの金属です。

右側に見える白いものはセラミックのトリマーで、上側が二次側の、下側が一次側のものです。

二次側のは同調用ですが、一次側のは、アンテナ入力が125Ωのバランス形となっていて全てのアンテナコイルの入力側を片方の7PFと、もう一方とをバランスを取る為の最大容量12PFのトリマーとなっています。


       9.TRC-75の高周波部分 Mixer-Amplifier AM-1528/URC  

これは、米軍の航空機搭載型の短波帯オールモードトランシーバーの重要なアセンブリの一つで、中間周波(300KHz)の信号をヘテロダインして2.0MHz〜29.999MHzに変換したり、逆にヘテロダインして中間周波に落とす部分です。

これを所有している理由は、真空管使用のトランシーバーの回路やμ同調機構に興味があり、又、場合によっては部品取りの為に、かなり昔にFAIR RADIOから入手して保管してあったものです。
下の写真で、その全体構造やブロックダイアをお見せします。

ブロックダイアグラムです。

送信の場合は、300KHzのSSB信号波と、2.0MHz〜約4MHzの信号、又はそれを何逓倍かしたものとを上手く組み合わせて、2.0MHzから29.999MHzの高周波信号を作り出しています。

受信の場合は、完全に逆の方向に信号が流れて目的を達しています。

逓倍段以外は、全て送受に分けて球を配していて、該当する球のプレート電圧(+130V DC)を切り替えて送受切り替えをやっています。

球の種類は下記の通りです。
5749/6BA6Wを送受の高周波増幅と逓倍後の増幅及び送信時の増幅用に、5814Aを低周波と高周波のミクサーに、5654/6AK5WをX3/X7逓倍に、6CL6を送信時の出力増幅に使っています。
受信時の動作原理を簡単に記しておきます。

2MHz〜29.999MHzの信号をRCVR RF AMPLで増幅し、バンドA(1.7MHz〜3.995MHz)はVAR IF AMPLを通ってLOW FREQ MIXERで
局発の2MHz〜3.999MHzと混合され300KHzの中間周波信号となり、メカフィルを含む増幅回路とプロダクト検波へ導かれます。

一方、バンドB(3.7MHz〜7.699MHz)、バンドC(7.7MHz〜15.699MHz)及びバンドD(15.7MHz〜29.999MHz)はHIGH FREQ MIXERで
1.7MHz〜3.699875MHzへ変換されてLOW FREQ MIXERへ行きます。

この時、第一変換回路の局発として、シンセサイザーの出力である2MHZ〜4MHzの全部又は一部を、バンドBではそのまま使い、バンドCでは3逓倍した6MHz〜11.999250MHzを、バンドDでは7逓倍した14MHz〜26.511625MHzを使っています。

この様にして、1.7MHz〜31.7MHzの短波帯の、実際には2MHz〜29.999MHzの受信が可能となっています。
Top Viewです。

ご覧の様にμ同調機構がシャーシの大部分を占めています。

右上に小さいモーターがあり、左右のパネル裏にある8の字に掛けたベルトを廻してコアーを一斉に上下します。

コアーは上の列のコイル群と下の列のコイル群を同時に駆動する為に、ベルトを含んだ機構は良く考えられたものとなっています。

球の一部は既に他の製作に流用しました。
Bottom Viewです。

左右に貫通しているシャフトはバンドスイッチで右にある茶色い筒状のモーターで廻します。

各段はシールド板で区切ってあります。

バンドスイッチはこんなんで良いのかと思う位に見た目はチャチな構造です。


       10.AM-1529/URC RADIO FREQUENCY AMPLIFIER  

TRC-75というトランシーバには興味あるアセンブリが数多く内臓しています。このAM-1529/URCもその一つで、周波数シンセサイザーの類だと思います。
原理は、2.4MHZ及び1KHZの信号と、1942/1943/1944/1945KHZの信号とから安定な(ドリフトをキャンセルした)2.4MHZ台の信号を取り出すユニットです。 出力周波数は、2400/2399/2398/2397KHZです。内部を写真でお見せします。

AM-1529/URCのA面です。

真ん中の四角い物が455KHZのメカフィルで帯域は約240HZです。

その左にある4個が1942/1943/1944/1945KHZの水晶で、直ぐ上にある黒い2個の部品、これが切り替えのリレー。

上の方にある丸い円筒が真空管で、反対側に、もう2個あります。

       11.Ref IF Amplifier

これも、TRC-75のモジュールでCV-465 Mixer-Oscillatorに入っている基板の一つで基準信号を作っています。
別の基板のSignal IF Amplifierの出力とをディスクリミネーターで比較してメインのPTOの周波数偏差を補正する為のものです。
Ref IF Amplifier基板の様子です。

左の方にある筒状のものが455KHzのメカフィルで型名がF455Q2です。

資料によれば6dB帯域が2KHzとなっています。

入力は白い同軸線で供給しています。

この基板は、メカフィルの出力を3段のトランジスターアンプで増幅するものです。

トランジスターは真ん中上のQ1、T1下のQ2及びコネクタ近くにあるQ3です。

そしてQ3の直ぐ下にあるダイオードで信号を検波してAGC電圧を発生しています。

丸い金属の容器にコイルやトランスが入っています。


       12.R390AのIFTの秘密

R390Aには2/4/8/16KHzのメカフィルが使われていて、その後に3段の中間周波増幅回路が続いています。
増幅回路はIFTを使った普通の回路ですが、実はIFTそのものが一寸普通とは違う事が分かります。
このIFTの中身と回路図をよく眺めてみるとその事がより明確になります。
  写真でIFTの中身を見てみましょう
IFTの中身は?

左から、T501/T502/T503/Z503です。
同調コイルの間隔が狭く、各コイルは抵抗を並列に接続してあります。又、コンデンサーはマイカとチタコンをパラってあります。

メカフィルの帯域が最大16KHz迄ありますから、普通のIFTを普通に使ったのでは帯域が狭すぎて折角のメカフィルの特性を損なう事になります。
そこでこんな構造となったのでしょうか。

最終段のT503の出力側にはダンピング抵抗はありません。
又、Z503はAGC回路に使用されているもので同調コイルは一組だけです。

向こうに転がっているものはIFTのケースで、本体についている上側の2本のネジでとめる構造です。

何故だか知りませんが、コアーが入っているとしても、調整は上側からしか出来ません。
下側のコアーも上から廻すのです。

      13.7059と言う真空管

7059は3極管+5極管の組み合わせのミニアチュア管ですが、データブックを見ると興味深い内容があります。
  
 (1)先ず、ヒーター電圧が単に12.6Vではなく12V〜15Vとなっていて、電流は13.5Vの時に0.195Aとなっています。
 (2)次に、12V管ではよくみるヒーターの中点タップがありません。その為、必ず6.3VX2の電圧が必要です。
 (3)用途がモービル機器となっていますからバッテリーの電圧、例えば13Vを直接接続出来ます。
 (4)5極管部分のCpg1が結構大きく、シールド無しだと0.15pFですが、シールドがあればこれが0.007pFと極めて小さくなります。

この球を取り上げた訳は、ハリクラのSR-400Aと言うトランシーバーの受信部に多用されていて、一度は使ってみたかったからです。
受信部の球数9のうち、なんと4球も7059を使っているのです。

13.5Vで規定してありますが、その事に気付かず6.3Vで使っても動作しています。怪我の功名ですが。

       14.R390Aのコイルの更なる秘密?

R390Aには周波数範囲が異なる各種の同調コイルが使われています。それらは下記の通りです。
先ず、主なる同調回路用として、0.5MHz〜1.0MHz、1.0MHz〜2.0MHz、2.0MHz〜4.0MHz、4.0MHz〜8.0MHz、8.0MHz〜16.0MHz,16.0MHz〜32.0MHz、と特定の周波数帯用の17.5MHz〜25.0MHzと第二中間周波数の3.0MHz〜2.0MHzです。
ここで注目するべきは、最初の6群の変化範囲が何れも2倍となっている事です。

ところで、各同調回路の同調機構はバリコンではなく、コリンズ社特有のコアーの出し入れによる複雑な機構です。
コアーの出し入れの機構は複雑でここでは詳細説明は一寸出来ませんが、コアーを殆んど一杯入れた状態で各群の低い側に同調し、半分以上抜いた状態で上側に同調する様な構造だと推測出来ました。

そこで気が付いた事柄で、知っている人達には何でも無い事でしょうが、使われているコアーの性質に二種類あるらしい事でした。
厳密には、周波数の変化範囲に対してどうやら三種類かも知れません。 写真で調査している様子をお見せします。

R390Aのコイル群とコアー群です。

GDMで同調周波数を測定してコアーの出し入れ状態で変化範囲をチェックしているところです。

右側にある少し小さめのものが17.5MHz〜25MHz用のものと3MHz〜2MHz用のものです。
その他は全て高周波増幅管の入力出力に使われているもので大きめなのがアンテナコイル、小さめの二つがプレート側にある二段の同調用です。

真ん中にあるコアーは左側が変化範囲が狭いもの、右側が変化範囲が広い、即ち変化範囲が2倍となっている同調回路用だと思います。

いずれのコアーもコイルボビンに一杯に入れた状態で同調する筈の周波数の下限になるかどうかをチェックしました。

結果は、左側にある6本は変化範囲を確保出来ませんでした。尚、6本は、3本ずつの組み合わせがある様です。
取り付けてネジ部までの距離が異なる事で判別出来ます。

       15.A Silent TR Switch ?

無音の送受転換スイッチって何? アンテナ切り替えにリレーを使わないだけですが。

昔から、送信アンテナと受信アンテナは大抵のハムの場合、兼用している筈で、何等かの方法で切り替えて使います。
ところが、適当なリレーが無いのが普通です。止むを得ず、最近までは普通のリレーをカタログから選別して装備してきました。

ここで問題があります。高周波電力が通過可能で切り替え速度が適度に高速、と言うリレーは無いうえに、音がうるさい、寿命が短い。

以上の事から、先人は色々考えて、無音の切り替え方法を考案してくれています。下記に幾つかの例を示します。

     
リレーを使わないTR切り替え方法の一例です。
左側の端子から受信機のアンテナ端子へ接続し、球のG1は5pFを介して送信機のファイナルへ、そしてパイマッチ回路を経由して送受兼用のアンテナへ、となります。

通常、CR7はバックバイアスの状態で、信号は多少減衰はしますがCFを通って聞こえます。

キーダウンするとこのダイードが順方向に導通してG1回路をアースして信号を阻止します。

ダイオードは1N4003シリーズの整流用ダイオードが適しています。何故なら、これ等のダイオードの高周波応答は遅いからで、早いと困る訳です。
又、左側の点線部分はシールドボックス内に収納するのが一般的な構造です。

一般的には、短絡しないで信号回路に直列にダイオードを挿入する方法が普通です。その場合には、ダイオードの動作電圧や動作電流
が適切でないと、とんでもない動作をしますから注意が必要です。
又、上の例の微小容量はある程度の耐圧が必要です。更に、タイミングが悪いと球のグリッドに送信信号の一部が印加されてグリッドが
正方向に振れ、グリッド電流が流れる可能性があり、その場合信号回路に異常な波形が発生しTVIなどが起きる事があったそうです。

尚、この回路に使われた真空管は、どう言う訳が6AH6が多かったと記憶しています。

もう一つの例を示します。リレーを使いますが無音性を維持するものです。

リレーを使って無音性を維持する例です。

キーヤーで先ずリレーを動作させ、受信機のアンテナ端子をCでアースへ落とすと同時に、送信機のキーイング回路を動作させます。
アンテナは送信機側に常時接続したままで、受信機には真空管又は半導体のTRスイッチを介して接続するものです。

ここに使うリレーは高周波電力を通過させないので高速なリードリレーが適しています。その為に無音性が保たれる訳です。
太線の部分は勿論、最短距離で接続する事が必須です。

尚、受信機のアンテナ端子をリレーで直接アースへ落とすのも同じ事です。
(出典はアマハン1969年版)

以上の例では、いずれも真空管を使用していますが、勿論半導体回路でも全く問題なく応用可能です。

上の方で適当なリレーが無い、と書いてありますが、実は電力が100W程度なら適当な市販品があります。
松下のNRリレーで、カタログには、定格負荷は抵抗負荷なら10uA〜1A、或いはL負荷ではリレー等となっています。
又、小型、高感度、高速しかも長寿命とあります。高速応答性は動作時間として約1mSですし、長寿命とは通常負荷なら10億回ですが
突入電流が5Aでは1万回の寿命となると記載してあります。5A〜10Aの突入電流でも使える可能性があると読めます。

実際にリレーの断続時の動作音は普通の環境ではまず聞こえませんし、何よりその高速性に着目するべきでしょう。
こんなタイプのリレーは他には見当たりません。積極的に使いましょう。 例えば、FT-850の様にです。

  

       16. 珍しいBreak In 方法

CW 送信で常に気にしなければならない事にアンテナ切り替え方法があります。
特にハムの場合は一個のアンテナを送信と受信で共用するのでアンテナリレーの選択とその切り替え動作が気になり、一旦 リレーを選択したら今度はタイミングの問題が生じます。
送信機を動作させながら(電波を送出中に)アンテナリレーを切り替える事は普通は許されません。

そこで ここで紹介する方法はその問題を解消する一つの方法で 古いQST誌に記載されていました。
Break In System の一例でQST誌1964年7月号に載っていました。

理想的に近いタイミングのフルブレークイン方法を提供してくれています。

回路図ではマイナス電源で動作するリレーを使っていますがプラス電源を使う場合は下側に示す様に極性を変更して対処します。
タイミングとは、先ずアンテナリレーを切り替えてから送信機を動作させ、信号を出し終わってからアンテナリレーを元の状態へ戻す時間関係 です。

動作は次の通りです。
リレーは当初 受信側にあり受信しています。

送信開始でキーを動作させるとマイナス電源が導通してリレーが動作しアンテナを受信側から送信側へ切り替えます。
同時にマイナス電源がCR2 を介してアースされまがR1を含む時定数回路に充電されていた負電位が少し遅れて放電してゼロ電位となり送信回路へ伝達され電波を出します。

次にキー操作で送信が終わるとリレーが動作して接点が受信側へ戻る前に送信機の動作が停止します。
アンテナはリレー接点の動作時間だけ遅れて受信側へ接続されます。

リレーの選択が重要ですがこの例ではハムリンのリードリレーを推奨しています。
現代では幾つかの高速なリレーが入手可能ですが扱う電力によっては選択に苦労します。

       17.球式VFOの安定化法の一例  特に直接キーイングした時で安定するのに時間がかかる場合

球を使ったVFOで直接キーイングして発振周波数が変動するとかチャピるとか昔はよく言われたものですがここに紹介する回路はそれを解消する方法の一つです。
要は発振状態がキーイングの前後で変化しない或いは変化しても僅かであれば良いとの観点から考案された様です。
発振の前後で生ずる大きな電流変化で球の熱平衡に達する時間が長くなるのが問題だといっています。  QST誌1967年09月号に掲載されていました。
KEYジャックに何も接続されていない状態、又はキーアップ時では図の1N34Aが導通していてC4がC3に並列になった事で発振しない定数となり発振しません。
又RFCとR2には適度な+電流が流れその結果各電極に適宜な電流が流れる様なグリッドバイアスとなります。

キーダウンすると1N34Aが導通状態から外れC4は切り離された状態となり正規の回路定数で発振します。
その時 グリッドに発生する高周波で球にバイアスがかかり電流が流れます。

そこで両方の状態の時のカソード電流が同じ値となる様にR2を調節すると電流変化が無い事になります。
従ってキー操作の前後で発振状態が変わらない、この場合電流変化が無く熱平衡状態に早く到達すると言う訳です。

勿論 通常のVFOを製作する場合と同じく部品の吟味や組み立て方法は踏襲するものとします。



続きます