漆黒の箱


漆黒の箱に入った輝くトラペゾヘドロンこそは禁断の宝石であり、這い寄る混沌を召喚することのみならず、時空を超越することすら可能なアーティファクトであるが、これを所有する者は闇の眷属から狙われること確実であるのだ。
カーターが私にこれを託しつつ「絶対に箱を開けちゃだめだ!パワーが放出してしまう!宝石をみては駄目だ!」と警告したのだが、その禁断のパワーの魅力に抗うことできずに開けてしまったのだった。
その宝石を凝視するとあらゆる任意の時空間を感じるころができる・・・しかもどこにでも行けそうだ・・・魂が吸い込まれて行く・・・
どこだ、ここは?
周囲を見渡すと甲冑を着た武者が走りまわっている、唐突にここが長篠の合戦をひかえた武田陣中であることが理解できた。
信玄公の跡を継いだ武田勝頼公が織田徳川連合軍に挑む長篠の合戦は、馬防柵によって足止めされた武田騎馬軍団が信長の鉄砲3段撃ちによって壊滅させられた戦として有名だ。
軍議が始まり家臣達が発言する、
小山田信茂と穴山信君が突撃を進言し、馬場信春と内藤昌豊は慎重論である。
実はこの戦は単純に鉄砲3段撃ちのみで勝負がついたわけではなく、織田信長は計略をしかけてくるのだ。
すなわち重臣佐久間信盛の偽装寝返りと、徳川家臣酒井忠次による鳶の巣城奇襲だ。
これらによって突撃することになってしまうのを阻止せねばな。
早速進言しよう「敵方に、我が方の鳶の巣城を奇襲する動きあり!これを迎撃するべし!」
それに対して馬場信春が答える「うむ、喜兵衛の言うこともっともじゃ、しかし我が方は兵を割く余裕がない」
そこに真田信綱が続く「我が真田家の乱破部隊をさしむけようぞ!よくぞ敵の動きを察知した!さすがは我が弟じゃ」
どうやら私は真田信綱の弟の喜兵衛という武将になっているようだ。
表がざわめいた、どうやら使者が来たようだ。
その使者が軍議の席に来て言う「それがしは織田家重臣佐久間信盛の家臣でござる。我が主は常々信長公に虐げられこのままでは切腹させられるは必定、そこで今こそ勝頼公に力を貸して信長公を撃つべく立ち上がるのでござる、武田騎馬軍団の突撃に呼応して内部より織田家を崩しもうす、すみやかに突撃なされませ」
それを聞いた穴山信君が言う「これぞ千載一遇の好期でござる!ささ!突撃の合図を!」
これは織田信長の計略なのだが、あえてそのことは伏せておこう。
突撃することを約定してその使者を帰し、早速進言する「あれは織田信長の計略、我等をおびき寄せる罠に相違あるまい、ここは動かないのが上策なり」
それに対して小山田信茂が言う「いずれにせよ突撃して撃破せねば勝利はない、このまま手をこまぬいていては武田家の威信地に落ちるは必定」
そこで勝頼公が言う「明日、突撃する、皆用意せよ」 
これに馬場信春が反論する「お待ち下され!敵は大量の鉄砲を装備して我等を迎撃する構えですぞ」 
穴山信君が言う「美濃守ともあろう者が臆したか、我等の騎馬突撃こそ無敵なり!」
さらに武田信廉が言う「やはり突撃しかあるまいのう」
かくして軍議は終わった。
まずいぞ、このままでは突撃して玉砕だ、鉄砲を防ぐ手段さえあれば・・・
ふと竹林が見えた、そうだ竹の束で盾を作ろう!
さっそく同僚の曽根昌世に話すと彼も賛同してくれた。さすがは信玄公をして我がまなこと言わしめた武将だな。
しかし手が足りないなと思っていると、馬場信春と内藤昌豊と山県昌景が手勢を連れてきて手伝ってくれた。
彼らと対鉄砲戦術を考えてみよう。
議論した結果、竹束の盾を持った足軽を先陣として敵の鉄砲を防ぎつつ前進し、その背後から弓隊が援護射撃を行ない、敵がひるんだところで騎馬隊による突撃を敢行すべしと決まった。
そして明朝の軍議、対鉄砲戦術を行なうべしと進言する馬場内藤山県らと、あくまで騎馬突撃にこだわる小山田信茂、穴山信君、武田信廉ら武田親族衆の対立が始まった。
私も曽根昌世とともに無策な突撃の危険性を説くが、親族衆の力侮りがたく、勝頼公の心も騎馬突撃にかたむいた時、返り血を浴びた真田信綱が帰陣して来た、どうやら自ら鳶の巣城救援に行っていたようだ。
彼が言う「奇襲をしに来た敵方の酒井忠次隊を逆に奇襲して撃破しましたぞ! 勝頼様、我が弟と曽根昌世こそは信玄公をして我がまなこの如しといわしめた武将、なにとぞ進言をお聞き入れくだされ」
 勝頼公が答える「うむ、対鉄砲戦術とやらをやってみようか」
よし!これで勝てるぞ!
さあ出陣だ!
竹束の盾をかまえた足軽を先陣にして出陣する。
織田方の鉄砲隊の射程内に入るといよいよ敵の射撃が始まった!
しかしその銃弾のことごとくは竹束の盾によって防げる!
そのままじりじりと前進し、足軽隊の背後に展開する弓隊に攻撃を命じた。
先陣の足軽隊の頭上を放物線を描きながら飛んだ矢が敵の鉄砲隊に降り注ぐ!
いいぞ!あとは騎馬突撃だ!
目をこらして敵本陣を見ると、いた!信長だ!
信長の声が聞こえてきた「いあ!しゅぶにぐらふ!千匹の仔を孕みし森の黒山羊に千人の若者の生贄を!」
すると地面が揺れはじめた!しかも地面が割れて、そこから蝕腕をそなえた異形の怪物が現れて我が竹束の盾を持った足軽隊に襲いかかる!
信長って何者だ!?
ふと、懐に漆黒の箱があるのに気付いた。
これはなんだっけ?
箱を開けて見て思い出した、これは輝くトラペゾヘドロンだ、その輝きから目をそらせない・・・
「おい!」・・・ん?・・・誰かが呼んでいるようだ・・・「おい!しっかりしろ」カーターだ!どうしてカーターこんな所にいるの?
「こんな所って、君の家じゃないか、君のことが気になって来てみたらやっぱり輝くトラペゾヘドロンに魅入られていたね、この宝石は見る者の精神を時空を超えさせるから危険なんだ」じゃあそんなの私に託すなよカーター


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