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快眠と睡眠時間の短縮に重点をおいています.「睡眠の俗説」はイントロ(序章),「睡眠の医学」は快眠と睡眠時間短縮の科学的な裏付けとなる簡単な知識です.
ナルコレプシーなど,睡眠障害や病気はここでは扱わない事にしました.これらを扱いだすと内容が大幅に増えてしまうし,高度に専門的な医学の知識が必要だと思うからです.とはいえ,要望があったり,興味が湧いたりすれば追加するかもしれません.
昼寝をしたから夜なかなか眠れないという場合と同じ原理で,夜勤などの日に昼寝をして寝だめをする事は出来ます.つまり,その日限りの寝だめはできます.しかし,例えば平日寝る時間がないからと言って,その分だけ休日に寝るという数日以上にわたる寝だめは出来ません.
俗に寝だめができると言われる人は,実際に寝だめをしている訳ではありません.彼らは多少寝不足でも気にならないだけで,実は休日に不足分を補っているのです.
科学的に朝方の人と夜型の人がいる事が分かっています.
朝型の人は午前中に思考力のピークを迎え夕方には思考力が落ちてきます.一方,夜型の人は昼頃にやっと思考力のピークを迎え,夕方でも思考力が落ちません.
この他にも自由型というタイプの人がいます.自由型の人は概日リズムの調節ができず,体内時計のリズムでしか生活できない人で,名前に反して非常に不便です.例えば,ある自由型の人の体内時計が 1 日を 25 時間として時を刻んでいるとすると,その人の起床時間や就寝時間は毎日1時間ずつずれていき,修正する事が出来ません.
一般に睡眠時間は 8 時間が良いと言われますが,最適な睡眠時間は個人差が非常に大きいのです.なお,最適な睡眠時間と個人の能力の間に相関関係はないので安心して下さい.
適正睡眠時間が 6 時間未満の人です.世界は広く,適正睡眠時間が 1 時間未満の人さえもいます(注 : 諸般睡眠者や長眠者の人は決してまねをしてはいけません).短眠者は全人口の 5〜10 % です.
短眠者としてはナポレオン [ Naporéon(仏)] が有名です.しかし居眠りが多く,あちこち具合が悪かったという話もあります.彼の適正睡眠時間はもっと長く,実際には短眠者ではなかったと考えられます.
適正睡眠時間が 9 時間以上の人です.長眠者は短眠者と同じく全人口の 5〜10 % です.長眠者の例としては,何と言ってもアインシュタイン [ Albert Einstein(スイス)] が有名ですね.彼の平均睡眠時間は1日 10 時間だったと言われています.が,彼も他の研究者と同じように徹夜したりしていたので,実際は分かりません.
これは本当です.成長ホルモンなど睡眠中のみ分泌されるホルモンがあり,その中にプロラクチンというホルモンがあります.プロラクチンは肌に潤いを与える効果があるので,十分に睡眠を摂るとプロラクチンもそれだけ多く分泌され肌の潤いが増し,睡眠不足ならカサカサになるという訳です.
なお,プロラクチンは昼寝など,概日リズムと関係のない睡眠でも分泌されるので,昼寝をするのも良いでしょう.ただし昼寝は就寝に影響のないように,10〜30 分にして下さい ‡1.なお睡眠中にのみ分泌されるホルモンの中には,プロラクチンとは反対に,概日リズムと密接な関係のあるホルモンもあります.
寝つきが悪くなるので,寝る前に化学的にも物理的にも精神的にも体に強い刺激を与えてはいけません.アルコールは入眠作用があって,適量なら健康にも良いです.しかし,本人が酔ってきたと自覚できる量では多すぎで,少しリラックスしてくる程度でやめましょう.飲みすぎると睡眠の質が格段に悪くなります‡2.その他,次に示す事はしてはいけません.
就寝前に言えることは,とにかくリラックスする事です.詳細を省けば,快眠はこれに尽きます.
朝は,準備運動をすればすっきりします.頭の準備運動と体の準備運動がありますが,好きな方をやればよいでしょう.声を出すのもかなり効果的ですが,近所迷惑になりかねないので注意してください.もちろん全部やっても良いです.それ以外にも次のような点に注意して下さい.
しかし,最後にものを言うのは気合です.寝不足でなくても起きようとしなければ,やはりいつまでも眠ってしまいます (~ _△_)~ zzzZZZZZZ
その他,睡眠に関する細かい事をピックアップします.
睡眠時間を短縮するには,睡眠の質を良くして睡眠時間を短縮する,という方法を採ります.つまり,睡眠の「量」は減らさずに,時間だけ短縮するのです.
「睡眠の質が良い」とは,睡眠時間全体に対して,深い眠りであるノンレム睡眠の時間が長い事を言います.つまり,ノンレム睡眠の割合を増やしていけば,睡眠時間も短縮できます(Fig.1 ,Fig.2).レム睡眠とノンレム睡眠については 4.1 で詳しく扱います.ここでは,レム睡眠が浅い睡眠,ノンレム睡眠が深い睡眠とだけ捉えておきましょう.

この図では睡眠時間は約 8 時間.一つ一つのノンレム睡眠は短い.

この図では睡眠時間は約 4.5 時間.睡眠時間は少ないが,ノンレム睡眠をしている時間は Fig.1 の場合とほぼ同じ.十分質の良い睡眠を摂っているので,睡眠時間は短縮されても体に無理がかかっていない.
Fig.1 のような睡眠から Fig.2 のような睡眠にするには,「睡眠不足や疲労している時に人間の体が睡眠の質を向上させて,それを補おうとする現象」を利用します.よく「泥のように眠る」,「死んだように眠る」,「夢も見ていない」などと言われるような眠り方です.つまり,睡眠時間を短縮していけば良いのです.単純ですね.しかし,急に睡眠時間を減らしたり,短縮する方法を間違えると,辛いだけでなく健康や安全を害する場合があります.次項から睡眠時間を短縮する方法を説明していきます.
睡眠時間を短縮する時は起床時間を一定にして,就寝時間を徐々に遅らせていくという方法を採ります.そこで,睡眠時間を短縮する前に起床時間を一定にしておかなければなりません.
まずは現在の総睡眠時間を計算しましょう.総睡眠時間とは,通常の睡眠時間だけでなく仮眠など全ての睡眠時間を合計したものです.
次に起床時間を決めます.起床時間を決めたら,現在の総睡眠時間と同じ時間だけ眠り,決めた時間に起きるように,就寝時間を決めます.
まずは睡眠時間を変えずに生活して,起床時間を安定させましょう.
なお余談ですが,長い昼寝をしなければ( 10〜30 分‡8)朝起きた時点で生物時計が調節され,その日の就寝時間がおよそ決まります.個人差はありますが,起床時間からおよそ 17 時間後に眠くなります.したがって,起床が遅いとその日の夜は必然的に眠くなる時間が遅くなります.翌日の朝早く起きなければならなくて今夜早く眠りたいという日は,その日の朝早く起きましょう.
1〜2 週間経ち,決めた時間に無理なく起きれるようになってから睡眠時間の短縮を始めます.だいたい 30 分を 1 単位として, 2 週間に 30 分ずつ減らしていくのが目安です.
例えば,元の総睡眠時間が8時間の場合,最初の 2 週間は睡眠時間7時間半で過ごし,次の 2 週間は睡眠時間 7 時間で過ごす,というようにします.なお,睡眠時間の短縮は就寝時間を遅くする事で行います‡9.
目的の睡眠時間まで短縮したら,その睡眠時間と起床時間を守って下さい.特に起床時間は,前述の通り就寝時間を決める要素なので重要です.
睡眠時間を決めても,疲れていたりいなかったりして必要な睡眠時間は毎日変化します.しかし,この変化を無視して,ひたすら決められた睡眠時間を貫き通して下さい.どうしても疲れが取れない時は 1 日だけ睡眠時間を 30 分伸ばし,翌日から睡眠時間を戻しましょう.
このように徐々に睡眠時間を減らしていく事で,無理なく睡眠時間を縮めていけます.大抵の人は 4〜5 時間まで短縮できるという説もあります.
人の睡眠量は遺伝子で決められています.したがって,ある時間以上睡眠時間を削るとどうしても疲れが取れないという場合は,その時間があなたの適正睡眠時間であると考えられます.無理せずにそれ以上の短縮を諦めて下さい.
睡眠の効果はその睡眠段階によって異なります.睡眠段階とは簡単に言えば睡眠の深さです.大雑把に言って睡眠段階にはレム睡眠 [ REM sleep ] とノンレム睡眠 [ non-REM sleep ] があります.
レム睡眠は,意識はないが脳波は起きている時と同じ状態で,浅い眠りです.この時に脳内の情報を整理し,その結果として夢を見ます( 70〜80% ).一方ノンレム睡眠は REM を示さない睡眠段階の事で,脳も体も休んでいる状態です.この時も夢を見ますがレム睡眠の時より見ている事が少ないです(0〜50%).REM とは急速な眼球運動 [ Rapid Eye Movement ] の
レム睡眠とノンレム睡眠は 70〜110 分間隔で繰り返しているので,個人差はあるものの 90 分の整数倍の時間帯はレム睡眠である事が多いです.そこで,睡眠時間を 90 分の整数倍にすると起床時間にレム睡眠がぶつかって,寝起きが良いという事になります.
一般に, 3 日以上無眠だと怒りっぽくなり,集中力や作業効率も落ちてきます. 5 日以上経つと幻覚が生じてきて,危険な状態になります.また,睡眠不足の時は,本人が気づかないうちに一瞬だけ眠ってしまう事があります(フラッシュ睡眠).フラッシュ睡眠が車の運転中や,危険な作業中に起こると大事故につながるので,該当する人は普段から睡眠不足にならないように注意して下さい.短時間の昼寝も有効です.
概日リズムとは,外部環境を一定に保った時に現れ,生物の行動や生理現象が概ね(circa)1 日の(-dian)周期(rhythm)で変動する現象の事です.微生物から動植物まで,非常に多くの生物に見られる現象です.人間の場合は 24±5 時間周期の概日リズムを刻みます.
概日リズムを司る部位を生物時計 [ biological clock ] といい,生物時計によって時が刻まれ,調節されています.生物時計は 1 個体に複数ヶ所あり,例えば日光に当たるなど,時間に関係がある刺激によって概日リズムを微調整しています.
人間の場合,生物時計がずれると疲れやすく,無気力になり,登校拒否,出社拒否につながります.ひどい場合にはうつ病になる事もあり,注意が必要です.また,免疫力も弱くなり,病気になりやすくなるなど,いい事がありません.
年齢による平均睡眠時間の推移を近似式で表すと次のようになります(『図解雑学 睡眠のしくみ』の統計資料から導き出しました).ただし 10 歳未満および 80 歳以上では成り立ちません.
y = 平均睡眠時間(分),x = 年齢(歳) とすると,
(女性の睡眠時間式)
(男性の睡眠時間式)
男性は 30 代で,女性は 40 代で睡眠時間が最も短くなります.また,男性は女性より必要な睡眠時間が長いです.事実,(2)式の右辺と(1)の右辺の差は,
となり,この式は常に正で,これは男性の平均睡眠時間は同じ年齢の女性より多いという事を示しています.
若いときの女性は短時間で男性より質の良い睡眠が取れるので,睡眠時間が短くても不自由しません.しかし,年をとってくると徐々に質が落ちてきます.睡眠時間は短いのに質が落ちてくるので,年と共に女性は睡眠不足になりがちになります.つまり女性の場合,年齢と共に睡眠「量」が減ってきて,やがて男性の睡眠量より下回ってしまいます.男性の場合,睡眠の質は年齢によって余り変化しません.
なお,この式で導出される睡眠時間は平均の睡眠時間に過ぎません.1章で述べたように適正睡眠時間は想像以上に個人差があるので,式の結果は飽くまで参考程度にして下さい.