各話コメントー改訂版ー(8〜13話)

第8話●血がとまらない (OA:1981.03.05 / 地上波再放送無)
上京したての若い男女が駅のコインロッカーでふとしたきっかけで知り合い、愛し合うようになる。青年は彼女にプロポーズするが、彼女は血友病だから結婚できない、といって断る。諦めきれない青年は、B・Jを訪ね、ウソの手術をして彼女を安心させてやって欲しいと頼む。女性には血友病の症状が出ないから、子供に遺伝はしても、彼女自身は安全だろう、とB・J。ついでにと、青年の血液を採取し検査したB・Jは愕然とする。
彼は生まれ付き悪性貧血で、余命幾ばくもなかったのだ。あと1年半の命と宣告された青年は、残された人生を謳歌するため、上京してきたのだった。
1度は青年の依頼を断ったB・Jだったが、青年のために、彼女にウソの手術を施す。そっと立ち去る青年。「手術」を終え、気付いたB・Jが慌てて後を追う。B・Jが発見した青年は瀕死状態になっていた。青年はB・Jに手紙を託し、息をひきとる。
「手術」後回復し、退院する彼女をB・Jは、2人の思い出のコインロッカーへと連れて行く。ロッカーには、青年が恋人に宛てた今生の別れの手紙が入っていた。

注:原作の要約なので、実際のドラマ内容とは異なることが予想されます。

コメント:
この回は何故か1982年の再放送ではカットされていた。後に、放映当時の新聞によって、その存在を知ったものである。
血友病を扱っているのだが、それがどうやら血友病患者の団体から、クレームがついたらしい。
『ウルトラセブン』の第12話、『必殺仕掛人』の第28話のような、いわゆる「お蔵入り」なのかどうかは不明。ホームドラマ・チャンネルの再放送でも、「内容を考慮して」外されてしまったのが残念。…見たい…。
本放送時、次の第9話のEDでお詫びのテロップが流れたという話もある。
第9話●助けあい (OA:1981.03.12 / 再:1982.03.31)
ある夜、坂東は酔っ払いの中年男・蟻谷(演:前田吟)と意気投合し、公園で『雨降りお月さん』を唄って世間話をしながら、陽気な夜を過ごした。その夜、付近で殺人事件があり、坂東は容疑をかけられたが、蟻谷の証言で、濡れ衣を免れる。
ところが、今度はその蟻谷が車に踏切へ追い込まれ、電車にはねられた。どうやら蟻谷は、会社の汚職事件の責任を負わされ、自殺したと見せかけるために命を狙われたらしい。
「今度は自分が助ける番」と、B・Jは、珍しくグレーのスーツ姿で、蟻谷の収容された病院に乗り込む。

世間から抹殺された格好の蟻谷は、このまま死んでいたほうがよかったとB・Jにこぼすが、B・Jには秘策があった。

数日後、世間から後ろ指を差されながら悲しく生きていく蟻谷の妻と子の前に、福本と名乗る中年男性が姿を見せる。

コメント:
冒頭の
「雨降りお月さん」の場面と、B・Jの扮装になった坂東が、トレード・マークの黒いコートではなく、グレーのスーツ姿で病院の廊下を闊歩する姿が、昔から妙に印象に残っている。あの乱れた長髪に、ドス黒い頬の傷跡のB・Jの顔に、ビシッとキメたスーツ姿の、ミスマッチが面白かった。
政府高官に扮した遠藤執事が侍従に扮したスーツ姿のB・Jを、鷹揚な態度で呼び寄せるさまが可笑しい。
第10話●灰色の館 (OA:1981.03.19 / 再:1982.04.01)
坂東は、菊岡 不二子という女性(演:ジャネット八田)から、ユトリロの名画を買って欲しいと頼まれた。手術代にするのだという。大金を携え、これからB・Jに頼むのだという。
B・Jが案内されたのは、広壮な館の地下室。そこには全身火傷を負った、廃人同様の男が閉じ込められていた。不二子は兄だというが、どうも様子がおかしい。更に患者を調べてみると、後頭部に鈍器で殴られた跡が見つかった。倉持警部(演:藤岡琢也)が調べたところ、不二子に兄はいないことがわかった。
しかも、彼女の夫・正英(演:入川保則)が失踪中だという。
手術を終えたB・Jに、不二子は告白を始める。B・Jの睨んだ通り、患者は夫の正英だった。夫の出張中にしていた浮気がばれ、激しく折檻された時、思わず花瓶を夫に投げつけた。花瓶は夫の頭を直撃し、うずくまって倒れ込んでしまった。
気がつくと夫の身体を焼却炉で焼いていたという。その時、「ギャーッ」という悲鳴が上がり、全身火ダルマになった夫が焼却炉から飛び上がった。夫は焼却炉の中で息を吹き返したのだ。
B・Jの手で元の姿に戻った夫・正英は館へ戻り、自分を殴り殺した上、焼いた妻へ、「同じことを味わわせてやる」と、不二子に灯油を浴びせ、火を放った。
駆けつけたB・Jは、真っ赤に焼け爛れた顔になった不二子を救い出し、車に乗せ、今度は不二子を手術すべく、自分の屋敷へと向かった。
コメント:
何といっても、不二子の告白シーンで出てくる、全身火ダルマの男が「ギャーッ」といって、飛び上がる場面のインパクトはあまりにも強烈であった。
ほぼ原作に沿っているが、原作では兄と妹で、兄がいわば先天的なサディズムから、妹を虐待するのに対し、本作では妻の浮気が発覚してから、夫が妻に折檻を加える話に変わった分、「大人向け」ドラマっぽい設定になっている。
ラスト、B・Jが不二子を救い出し、車に乗せる場面で、チラッと映る、真っ赤に焼け爛れた顔も又、強烈なインパクトを感じた。
私の知る限りでは、
『土曜ワイド劇場』『江戸川乱歩の「美女」シリーズ』の1つ・『白い乳房の美女・江戸川乱歩の「地獄の道化師」』で、あばら家で硫酸を浴びせられ、苦痛に悶える女性の顔と、同じシリーズの『桜の国の美女・江戸川乱歩の「黄金仮面U」』で、吊り橋からの転落事故で、岩肌に顔面を打ち付け、石榴のようにはぜ割れた伊吹吾郎の顔、と並ぶ強烈な顔面映像体験である。
しかし、依頼人の女性(本作では不二子)が、最後に顔面に大火傷を負う場面だけは、無気力に灯油を浴びせられ、火を放たれる本作よりも、火炎放射器で直接顔面を炙られる原作のほうが、はるかに強烈なインパクトがある。

レモンの代わりに大根紅茶を淹れるピノコはお茶目。それよりも、復讐心に取り憑かれた入川 保則がピノコを突き飛ばしてピノコが倒れた際、B・Jのとった処置に大注目!ピノコの胸の蓋をパカっと開け、心臓コンピューターがショートしている。ピノコはアトムもといウランちゃんだったのか…。

B・J語録:
「真の意味で天才を理解できるのは私のような天才だけだ。」
「愛は両刃の剣だ。一つ間違えると人をも殺す。今度はあんたの番だ。」

第11話●鬼子母神の息子 (OA:1981.03.26 / 再:1982.04.02)
幼児の連続誘拐事件が起こっていた。犯人側から要求された身代金が出し渋られると、薔薇の刺青が施されるというもの。
或る日、イサオ(演:徳石光浩)という少年が行方不明になった。数日後、坂東は、イサオの母・操(演:松尾嘉代)に拳銃で脅され、B・Jの屋敷への案内を強要される。
操は顔に傷を負っていた。
実は、操が連続誘拐犯の首魁であり、警察の疑いをそらす為、息子のイサオを偽装誘拐したのだった。顔の傷はイサオにつけられたものだったのである。操に手術を施したB・Jは操に改心を迫るが、操は自分の犯行は世の中への復讐だと激白。自らグイっとめくって見せたその胸元には真紅の薔薇の刺青が。それはかつて夫の事業が失敗した際、借金のカタに売春組織へ売られたときに刻まれたものだった。夫はそれを苦に自らの命を絶ったのであった。B・Jは操に鬼子母神の話を聞かせる。

仕上げの再手術を施された操は漸く犯した罪を悔い、自らの命を絶とうとするが、B・Jに止められる。イサオに生き恥さらすよりは…と抵抗する操の顔の包帯を解くB・J。

全てを解決するためにB・Jがとった手術の内容が明らかになる。

コメント:
この回が、「イントロダクション」で述べた、再放送の時、京都へ連れられて泣く泣く見る事ができなかった回である。
予告編で見た、松尾嘉代演ずる「鬼子母神」が、グイッと胸元をめくってB・Jに深紅の薔薇の刺青を見せ付ける場面の強烈な印象は、生涯忘れることはないだろう。
B・Jが2度目の手術で施した顔は、こんなこと言っていいのかわかりませんが、コメディ女優として一世を風靡した、し○ざ○未○さんにどうしても似てる気がしてなりません。
第12話●奇妙な関係 (OA:1981.04.02 / 再:1982.04.05)
一億円強奪犯を追っていた倉持警部(演:藤岡琢也)は、犯人・曽根カズオ(演:岩谷隆広)とその恋人・チャコ(演:根岸季衣)の逆襲に遭い、崖から転落。曽根も腹を撃たれ、重傷を負った。2人を手術することになったB・Jは、曽根の腎臓を倉持に、倉持の肝臓の一部を曽根に移植した。
追う者と追われる者。カーテン越しの会話から、やがて2人の間には奇妙な友情が芽生える。

倉持はかつぎ込まれた先がB・Jの館であることがわかり、興奮を隠せない。一方、曽根は入院中に時効が成立したものの、世間を憚って顔形を変えてくれとB・Jに頼むが、B・Jは肝移植の費用として1億円の手術料を要求する。チャコの勧めもあって曽根は強奪した1億円をそっくり手術料としてB・Jに納め退院してゆくが、倉持と曽根が互いの正体を知ったとき…!?

1人残された倉持警部にB・Jが提案したことは、自分への詮索をやめさせる代わりに倉持に1億円を持たせるというものであった。つまり1億円強奪犯は時効で取り逃がしたものの、1億円だけは取り戻したということになるのである。

「友達だからな…倉さん…」ポツリと漏らしたB・Jの言葉に、倉持はB・Jの正体を朧ろげながら悟る。

コメント:
珍しくコメディタッチで描かれるこの回。曽根とチャコを尾行する倉持警部はケイコを連れて、ついにはラブホテルに潜入する。何とかケイコにカモフラージュの色っぽい声を出してもらおうとする警部は、あべこべにケイコに変態だの覗きだのとさんざん言われた挙句、色事を1人で演じる羽目に…(笑)。
今では『サッポ○一番』のCMでお馴染みの藤岡琢也が、似合わん女形を演じるさまは絶品(?)。
第13話●終電車 (OA:1981.04.09 / 再:1982.04.06)
B・Jに魅せられていた女医・鈴木このみ(旧姓:桑田)(演:江波杏子)がいた。
ある夜、坂東と終電車で偶然出会ったこのみは、脚でも何でもどんどん切ってしまう医者で、ブラック・クィーンと陰口をたたかれていたが、彼女は寧ろその風評を誇らしげに思っていたのである。

そんな折、恋人の建築技師(演:中野誠也)がクレーンに足を挟まれ、かつぎ込まれた。恋人の脚の切断を余儀なくされたこのみは、すがる思いで坂東にB・Jの手術を頼む。B・Jは見事に恋人の脚を切らずに治し、今ではこのみと結婚、アフリカで活躍しているという。

終電車を乗り越した坂東を、このみは自分の病院へ連れてゆく。翌日の手術を控え、このみは病院に泊り込むことになっていたのだ。このみは坂東に今の悩みを打ち明ける。夫に、医者を辞めてアフリカに一緒に来てほしいとせがまれているのだが、外科医という職業に、自分の勤務する病院に、未練があり、そしてもしかしたらB・Jへの思いから、日本を発つ決心がつかないのかも知れないと。

坂東はこのみに睡眠薬の入ったブランデーを飲ませ、B・Jに変身し、翌朝の手術を勝手に済ませてしまう。3000万円の手術料を要求するB・Jに、このみは「あなたこそ人間のクズだ」と罵り、平手打ちを喰らわせる。

職場放棄と、部外者を勝手に上げた咎、それと病院のメンツのために、このみは病院を辞めさせられてしまう。

坂東の元へ押しかけた彼女は不満をぶちまけるが、坂東の口から意外な言葉が語られる。ひょっとするとB・Jは、このみをアフリカへやるためにわざと恥をかかせたのではないか。寧ろある種の愛を感じていたのではないか、というのだ。

「いずれにしても、今度のことは先生にとって最後のチャンスかもしれませんね。どうぞアフリカ行きの終電車に乗り遅れないようにして下さいよ。」
「もしかしたら、ブラック・ジャック先生というのは…あなたご自身では…?」

そんなこのみの言葉を、坂東は笑って否定する。

数日後、このみはアフリカ行きの決心がつき、機上の人となった。B・Jのもとへ一通の手紙が届く。
このみは人生の終電車に間に合ったのであった。

コメント:
最終回はこれまた渋いエピソードとなった。原作ファンの方にはお馴染みの、
「ブラック・クィーン」先生が登場する。

本作では、最後に人を送り出す、という最終回にふさわしい締めくくりとなっているが、同時に、本作ならではの、B・J=坂東・一人二役を、今まで誰も見破る登場人物が現れなかったのが、それに感づくキャラを出すことで、一層最終回らしいエピソードとなった。
坂東としては、核心を衝かれた格好であり、内心ぎょっとしたのかも知れないが、それを笑って受け流す辺りに、私は当時、少年だったにも拘らず、
「大人の男」の余裕を感じ、ちょっぴり憧れたものだ。
終電車でバッタリ出会った男のせいで、失態を演じさせられ、仕事をクビになったが、人生の終電車には間に合った、という意味合いも込められた、非常に味のあるタイトルである。
尚、終電車は、原作では、西武新宿線で、どうやら高田馬場から上石神井行きに乗って、1駅目の「下落合」で降りたようだが、本作では、深夜の多摩川を渡る京王線になっている。ブラック・クィーン先生の勤める病院は八王子らしい。(車両は、名車の誉れ高かった、今はなき5000系という電車だった。でも最初のホームのシーンだけ6000系。…ま、よくあることです。)

B・J語録:
「人助けをして殴られたのは初めてだ。さようなら、酔いどれ天使。」


加山雄三のブラック・ジャック目次