惣角沢(奥多摩)  '00/7/9   渡部・堀米・斉藤    記=斉藤
晴れ・夕方雷雨


“カミナリ三日”というけれど、週はじめに続いたにわか雨は、ニワカどころか観測史上2番目の大雨を降らせた。
いつものように有楽町ガード下の飲み屋に行ったら、半地下の店は水没しオバチャンがタライを持って浮かんでいた。
そして、追い討ちをかけるように8日、台風3号が関東を直撃。

翌日7月9日、日曜日。台風一過の青空が広がり、湿度の低いカラッとした沢日和になった。
前回沢デビューを果たしたノリマキ(堀米)を車で拾い、奥多摩に向かった。
途中覗いた本流の水量はかなり多いが、とにかく取り付きまでと車を進める。
神ノ戸沢の橋を越えると、道は段々と狭まり、周りの山も切り立ってくる。
山の上にポツンと建っている民家を見て“ありゃ村八分だな”と渡部が不穏当なことを言う。
5月の連休以来の沢だが、林道終点にある惣角沢の入渓点は薄暗くちょっと遡行意欲をかきたてない。いわゆるちょっと萎えちゃうってとこでしょうか?
見物のオジサン?と二言三言世間話をし入渓。
  惣角沢は前半に核心部が続く。  F1〜F4と大きな釜を持つ滝が続いているが初心者のノリマキにはチトきつい。
ザイルを出してF2までクリアし、F3にたどり着く。
手前に流木のはさまるF3は腰までのへつりとシャワークライムで越せそうだが後の時間も考えて左岸の仕事道を使いF4ごと高巻くことにする。
植林帯は意外に傾斜がきつく、ノリマキが落ちると洒落にならないのでザイルを固定しプルージックで安全確保。
仕事道が沢床に近くなるところで再度入渓し、しばらく行くと、天敵釣り師二人を発見。  微動だにしない後姿に、意志の強さ?を感じ、内緒で高巻く。
沢はやや倒木が多く、開放感はないが、ところどころで夏の日が差し込む。
一つ目の二俣(1:1)を過ぎると石積み堰堤、小滝がつづく。
前からノリマキの勇姿でも撮ろうとカメラを向けるが、なかなか顔が上がらない。
ん〜〜わかるわかるその気持ち。
前回の竜喰谷でもだいぶ苦労していたが、我々の膝下はノリマキの膝上、ホールド・スタンスは届かない、左足のところは右足、要は我々のトレースをするとトッテモ大変大変ということだ。
女性ゆえに体力的な問題もあるだろうが、沢ではキャリアも必要になる。それは単なる“慣れ”とも言うが、我々も苦労しながら覚えてきたものだ。
もうひとつ言うと沢登りはふたつのソウゾウリョクが要求される。
道なき道を自分なりのルートと体力の組み合わせで乗り切る創造力と、次に何が起こるかを考える身を守るための想像力だ。
な〜んてこと言う前に、記憶力の無さをノリマキに指摘されてしまう私だが。。

そうこうするうちに1:4の二俣にたどり着く。本流の左岸に山仕事の小屋が朽ち果てている。
ちょうど時間もいいので昼飯を食いながら作戦会議。ノリマキのファイティングポーズを確認し試合続行。遡行開始。
途中何本かのガレた枝沢を見送ると、やや開けたところでF5(2段10メートル)登場。左側をザイルを出してクリア。
つづいてS字?F6を登りしばらく行くと伏流になってくる。
そして最後の5m涸滝を登ると、奥壁につきあたる。大きな岩壁の下からコンコンと水が湧き出しており、ここが惣角沢の源頭だ。
記念写真を撮った後、壁の左側を回りこむようにトラバースし足場のいいところで一服。呼吸を整え一気に登るがアザミが多くて痛い。
先行の渡部が道に出たらしく口笛が聞こえた。初心者のノリマキには胸突き八丁、最後の難所だ。
傾斜のきつい斜面をなんとか登りきり、保冷剤と一緒に隠し持ってきたビールで乾杯。小蝿の多い登山道でゆっくりと休み出発した。
登攀具とメットを外せば、あとはルンルンハイキングだ。
この一帯はカタクリの群生地で春先には可憐な紫色の花を見せ多くのハイカーで賑わうそうだ。カタクリ保護も兼ねてか、登山道はよく整備されている。
惣岳山を経由し、道は何度かアップダウンを繰り返し尾根を真っ直ぐと進んでいく。
そして、しばらく行くと右手に奥多摩湖の湖面が見え、するどい車のエンジン音が聞こえ、登山道には白ワンピ・ハイヒールのオネーサマが・・・・・?
たどり着けばそこはローリング族のたむろする奥多摩周遊道路・月夜見駐車場だった。
与太話をしてる間に陣場尾根への道を通り過ぎてしまったようだ。相も変わらず登山道では緊張感がない。
沢では必死こいてコンパスを振る渡部でさえも「そうそうそう、そんな感じそんな感じ!」で“昭和のいるこいる”状態。(おまけにこのシトは地図もコンパスも忘れてる)こればっかりはスミホウ恒例行事になってしまった感がある。
結局、小河内峠まで戻り陣場尾根に出て、もう日も暮れかけようという頃に、駐車場への分岐(案内板あり)に着く。
道は民家(小林家)の敷地を通り抜け、そこからは1メートル幅の舗装路が九十九折に下っていく。
コンクリートの道はかなりの傾斜で、疲れきった膝が笑うほどだ。たぶん山の仕事をしている家なのだろうが、ここから毎日通勤したらかなり健康になれるだろう。
ヘッデンを忘れた私は、薄明かりに浮かぶ舗装路に助けられ、かろうじて道を拾う。
・・・・しかし地図は忘れるわ、ルートミスするわ、ノリマキには“沢慣れた”と言うより“単なるだらしないオジサン”と思われただろう。(すでに思われてるか・・・・?)
そうそうそう、しょうがないしょうがない!そんなもんだよ‐そんなもんだよ‐‐!”(なぜか も一度“のいるこいる”)
長い小道をダラダラと下り沢を渡り、駐車所についたとたん雷光とともに雨が振り出してきた。
帰路、閉店まじかのラーメン屋に入る。
いつも呑み過ぎ食い過ぎで後悔する我々だが、ノリマキのキビキビしたオーダーで塩梅よく腹を満たすことができた。
村八分はイヤだけど腹八分はとってもイイのだ。


9:30入渓/10:50F3左岸高巻仕事道へエスケープ/11:20沢に下りる/11:45釣師二人右岸の仕事道で回避/12:00二俣1対1?一瞬迷う/
12:20 1対4左岸廃小屋跡昼飯/12:45同発/13:00 1対3二俣/14:20源頭部の雰囲気 所々伏流カジカの声/14:25 F7(5m)右に枯れ沢/
14:50奥壁(記念写真)左回りこみ詰め/15:30登山道(御前山―惣岳山 鞍部)ビールで乾杯/15:55同発/16:00惣岳山/
17:40何故か月夜見の駐車場(引き返す)/18:15小河内峠(藤原バス停まで3.3k)/18:25同発/19:00駐車場への分岐 看板あり/19:30駐車場