ナルミズ沢(宝川)  '01/7/14・15   渡部・斉藤・河西    記=河西
14・15 ほとんど晴れ


7月から梅雨らしい雨も降らないまま、関東の梅雨明け宣言をほんの数日前に聞き、「いや、やったね」と思いつつ金曜日の夜に集合。
「なんか、サイトウ忙しくて連絡とれない」という隊長のメールを見ていたので、大変だなぁと思っていたのに、当の下山隊長は隊長のうちでおいしいカレーを目いっぱい食べ、波乗りジョニーのダビングを済ませて白の開襟シャツと半ズボンといういでたちで悠々と現れた。コンセプトは“夏の少年”らしい。
途中、道を間違えちゃったりしたが、波乗りジョニーを何度も聞いて明日の宴会のためにメロディを頭に強制インプットしつつ、水上へ向かう。
今回の山行は、ナルミズ沢を大烏帽子山近くまでつめる予定。

その日は、夜中の2時近くに水上インターを降りたすぐの道の駅にテントを張り、入山祝いをする。
雲もなく、星がくっきりと見え、明日の天気は心配ないなーと安心して眠りに就く。
でも、隊長は「トイレいかないの?星がきれいだなぁ。あ、独り言だから気にしないで。.....だれも何も言ってくれない。」としばらく言っていた。案外さみしがりなんだろうなーと思った瞬間だった。

7/14
翌朝なかなか起きない隊長を横目に、ちゃくちゃくと準備をすすめる。
林道のゲートに向かう途中、川面が白く煙っていた。幻想的で山に来たなーという実感が湧いてきた。天気もいいし、途中でみたスラブの美しさにナルミズ沢への期待は膨らむ。
隊長らは、3年前にナルミズ沢に入ったことがある。林道のゲート付近では、工事をしてしまっているため、当時の印象とはだいぶ違ったらしい。
それにしても、あっつい!林道は整備されていて、道周辺の木が伐採されていたりして、容赦なく照り付けられじりじり焼かれてしまう。
やっと登山道に入って日陰になるなーと思ったが、初っ端から急登。山って、やっぱりそんなに甘くない。
その後は緩やかな登りと下りを繰り返すようにして渡渉点に向かう。
途中の水場はオアシスだった。こういう、アメとムチっぽい状況って私の場合アメの部分が印象に強い。だから懲りずに沢に繰り返しいくのだろう。ある意味、学習能力がないって話もある。
渡渉点にて前方から人がひょっこりと現れる。沢で人に会うのってすごくびっくりする。
ジャングルで行方不明になってた人を発見したかのように、「人だ!人がいる!」と言ってしまった。
ひょうひょうとした痩せたおじさんで、Tシャツの色が印象的だった。何年着てるんだろう?「昨日は雷雨でねぇ。大変だったよ。」というその目はとてもイキイキしていた。
星好きのオジサンが星を語るときといっしょの目だ。

隊長らは(昨日から単独で東黒沢に入っている)カヌ沈隊のフカマチさんの心配をしていた。
そういえば、朝のうちはあんなに晴れていたのに、今は雲が多くなっている。青空が所々見え隠れするくらいだ。天気予報くらい聞いとけばよかった...。山の天気は変わりやすいってことを、すっかり忘れていた。
ここから沢に入る。水量は多くはない。
30分くらいでウツボギ沢との出合いにでる。河原が広く、沢という感じはしない。ここで両隊長はおもむろに竿を取り出し仕掛けをつくりだす。
今日は大石沢の出合で夜の大宴会をする予定で、そこまで普通にいっても2時間くらいだから、ここから魚を釣り釣りのんびり行こうということだった。
エサになる川虫を取るため石を片っ端からひっくり返していると、すでにイワナを釣り上げている。渓流釣りって難しいのに...。さすがです。
その先はしばらく小さい滝やゆったりとした釜や淵が続く。

「あーここだよ。例の場所。」と隊長。ナルミズ沢では何年か前に増水中の渡渉で人が3人くらい亡くなっている。その問題の滝にたどり着いた。
滝自体はそんなに高くはないが、釜は深そうだ。なんとなーく、気分が沈む。隊長が巻き道を探している間、「写っちゃったらどうする?」と写真を撮る下山隊長。
「それより、淵に飛び込みましょうよ。」と誘うが、イヤイヤをされてしまう。言ってはみたものの、やっぱり入る気はしない。
前に見たテレビで霊は水とともに移動するという話を思い出す。いやー、いくら 大好きな滝登りでも、ここは高巻きに賛成。右側をあがっていく。
そうこうするうちに、大石沢の出合に到着。右側の斜面には少し雪渓が残っていた。
食料調達に釣りが始まる。隊長らはそれぞれ一匹ずつ釣り上げていた。
夜は、酒を飲み飲み高級国産牛を天下のグリルマスターに焼いてもらい、いい思い。
山の中でこんなにお腹いっぱいになれるとは想像していなかった。たまに雷が鳴ったりして、スリルも味わえた。
そして二次会では、下山隊長はマイクを取り出し、血と汗の(?)結晶である替え歌のメドレーが始まる。ひととおり歌い終えると「明日は早めに動かなくちゃだめだから、寝よっか」ということで、就寝。

7/15
翌朝も天気が良い。早々に支度をし、幕場に余分な荷物をデポして出発する。
途中ナメ滝やら釜がたくさんあって、昨日以上に楽しい。
良い具合のナメ滝を前に、「滑りません?」と誘いをかけるが、「サイトウがやるならやる」と言って逃げられる。こういうのは、一人でやっても寂しいだけなので諦める。パンツがぬれるとそんなに嫌なんだろうか?2人ともお腹がとっても弱いのだろうか?と何度も自分に問い掛けるが、もちろん答えはでない。
次第に深い釜が連続するようになる。あれはもうゴルジュって言うんだろうか。お尻まで濡れちゃうなぁ、あ、足の置き場がないなぁ、こっちかなぁとやっているうちに水流に押されて、岩壁にへばりついた格好のままプーと流れ、胸まで漬かってしまった。
両隊長は笑っていた。なんだかとっても楽しそうだった。あがると水が刺すように冷たい。むやみに水に浸かりたがらない隊長の気持ちがちょっとだけ分かった気がした。
しばらく行くと奥の二股に到着した。左側が大きく崩壊している。そして今回二回目の雪渓が右の斜面に残っている。ひとつは壁のように立ち上がっている。山あいから前大烏帽子が見える。所々に岩が見え、木が生えていない。自分の知っている山の姿とまったく違うせいか、青空の中のその姿はとても大きくて、静かで強い。
ちょっと進むと今度は沢を埋めるほどの雪渓。近くに行くとひんやりと涼しい。もう7月の半ばだというのに、こんなに雪が残っているものなんだと感心する。
雪渓の真ん中は空洞になっていて、覗き込むが向こう側までは見通しは利かない。
中央は亀裂が入っているようなので、左側を笹に頼りながら進むことにする。
実はここがコワイと思ったところだった。雪渓は危険だというのと、笹はつかむのには良いけど歩くには滑ってしまうから。必死になって這いずるように進み、無事雪渓を越える。
しばらくいくと、また雪渓が...。今度はすでに真ん中が落ちてしまっていた。でも危ないので、右側の斜面を笹と灌木に頼りながら進む。
8M魚止滝を右側から登り、しばらく行くと大きな木が目につかなくなってくる。
二股を右に行くと沢の幅自体もぐっと狭くなり、水量も減る。
木がないということは容赦なく焼かれるということ。ともかく暑い!このあたりは幅が狭いが緩急変化に富んだナメ滝状。とうとう隊長自ら、「すべっちゃう?」の声がでた。
反対なんてしませんよ、わたしは。下山隊長に相談もせずおもむろに荷物を降ろすと、青空の下天然ウォータースライダー。このあたりから、景色も好く暑いため楽勝ムードでバカ写真なぞを撮りつつ進む。
しかし、さすが下山隊長。もうこの頃からすでに下山後のビールの為、計算が始まっていた。
すべての行動はビールの為、この一歩がトンカツにつながるという強い意志が、足が止まるたびにオーラのように伝わってくる。(というよりは口に出してはっきり言っていた)
最後の二股の付近は、ここが山頂近くかと疑うほどの笹が山肌を覆い尽くしていて別世界のようだ。
まさか、山の奥の奥がこんな風になっているなんて普通は考えないだろう。
さらに、沢が枯れてしまうころには、一面に草原が広がる。
吹き抜ける風が冷たくて気持ち良い。できることなら、こんな場所で3時間くらいノンビリしたいものだ。いや、苦労して登ってきたかいがあったなぁとつくづく思った。でも、本当の苦労はまだまだこれからだった....。
ここまでくると、すぐそこに大烏帽子山から続いている尾根が見える。
一番低いところを目指して進む。ここで一本入れることにする。行動食をとってその後の登山道に備える。
尾根の反対側はきりたっていて、登ってきた側とはまったく趣きが違う。進行方向のその先の山肌にうっすらと登山道が見分けられる。
あそこは登りたくないなぁ。でも、ちょっと方向違うから登んなくて済むな。この時は靴が濡れていることを除けば、私はピクニック状態になっていた。
「そろそろ行きましょう。ピッチを上げて行かないと、ビールにひびきます。」という下山隊長の一声で出発。笹ヤブの中をすすむ。
ニッコウキスゲがそこここに咲いていて、ちょっと登りがきついけど登山って良いね気分を盛り立てる。すぐに登りが終わる。いやー、後はくだるばっかりか〜。がんばろうっかな。と思い、踏み後を目で追っていくと、ちょっと下ってまた登っている。しかもかなりの急登。さっき「登りたくないなぁ」と思ったあの登山道だ。思わず振り返り両隊長に訴える。「ここ登るんですかぁ?他に道ないんですかぁ....?」最後は言葉に力が入らない。

笹ヤブの下りはとても怖い。ツルっと滑るからだ。
ここで1つマーフィーの法則(なつかしい....)を発見する。
笹ヤブで滑った人を笑うと、笑った人も必ずすぐ滑る。自分と隊長は漫才のように、何度もこの法則の実地調査をくりかえした。
つらい時には、おもむろに「ほ〜ぅと〜ぅ」と叫びつつジャンクションピークに到着。朝日岳を経由して荷物をデポした大石沢の出合へと向かう。
ここで、やっと昼食を摂る。
後で聞いた話だが、下山隊長はビールの為に昼食も抜く覚悟だったらしい。表情に出なかったところが、またニクイが、ビールにかけるその思いが強烈だった。水の摂取量まで押さえてますから....。
食事を終えたころから、雲行きが怪しくなってきた。雷鳴さえ聞こえる。雨が降り出して増水する前に、渡渉点まで行かねばならない。おふざけなしで高速移動を始める。なんとか雨に降られず渡渉点に到着し、さらに先を急ぐ。もくもくと歩き続ける。下山はとてもつらい。沢はあんなに楽しいのに....。

だいぶ長く歩いた。先を行く下山隊長が、立ち止まってふりかえっている。どうしたのかと思うと、「♪け、も、の、みち〜みたいな〜♪」こ、この歌が出たということは!やっと林道に到着。後ろで隊長も口ずさんでいる。
林道に着いてしばらくすると、今までなんとかもっていたのに大雨が降り出す。ま、登山道で降られるよりは、とは思うが強烈などしゃ降り。
先をいく下山隊長がとっても不服そ〜うな顔で時折振り返る。そんな顔で見られたって、私たちにもなんにも出来ません。でも、ビールと味噌カツには間に合ったので満足だったことであろう。
ほんとに最後の雨だけが余計だったと言えるくらい、良い沢だったし天気も上々だった。そして、自分の想像がつかない日本の山の奥の姿が見れたことが、よかった。
日本の自然て奥が深くて、まだまだ捨てたものではないんだと思うと、また別の沢も見たいと思った。でも、下山はきらい。

Photoキャプション/斉藤


7/14  7:10 発/9:30 宝川渡渉点/9:55広河原/11:00昼食(そうめん)/14:10大石沢出合・泊/
7/15   7:00 同発/8:40奥の二俣/11:40大烏帽子の草原/12:40朝日岳JP/15:00大石沢出合 昼食/15:30宝川渡渉点/18:00頃下山/