ナメラ沢(奥秩父 笛吹川)
   '99/7/7   斉藤・グレッグ・渡部     記=渡部
晴れときどき曇り


「出合はまだかなぁ?ナメラ沢ってどこ?これ、ほんとに久渡沢だよな?また渡渉?男三人で手ぇつなぐの?・・・あ〜あ、やだなぁ、もぅ。しかし水量多いね。梅雨だもんね。この沢で目一杯じゃないの?今日は・・・
・・・ドヒャー!!でっけえ滝だよ!どうする?
・・・“ミギノホウカラ、イケマース”って言ったってよぉ、グレッグぅ・・・滝の落ち口でハングしてるよ。やだよぉ、朝っぱらからこんなの〜
ちぃと戻ったとこのさ、ルンゼから巻こうよ。ね?そうしよ?!日本の沢はナメちゃいかんのよ!!」
そんなこんなで、巻き降りたとろがナメラ沢の出合だった。
愚かな我々は、道の駅「みとみ」を出てナメラ沢にたどり着くまでに、二時間半を費やしていた。
雁坂トンネルの入り口から入渓したのが大きな間違いだった。
なぜあんな立派な道を見落としたかが不思議なのだが、雁坂峠登山道への車道ははるか先まで延びていて、それを使って入渓するのが、ナメラ沢遡行の重要なポイント・・・というよりも、至極当たり前のことだった。
どんな時にも魔はさす。好事も魔多く、山もまた魔が多い・・・なっ、サイトウ?。
ナメラ沢に入り、しばらく行った小さな河原で一服つけた。
見上げれば青い空。この時期に、この快晴。我々の普段の行ないの成せる技としか言いようがない。
その後も気分サイコ〜〜でナメ床をヒタヒタと進む。ヒタヒタとかペタペタとかモミモミとか、プルンプルンとか、こういった反復表現はなんだかとってもキモチイイから不思議だ。
2段15m滝の流心を斉藤が果敢に攻める。
この男、最近やけに攻めの登攀をする。日常生活に不満でもあるのだろうか?でも、あと5mってところでこんどは滝に攻められた。
両手足の四点のうち一つも動かせないほどのフリクションギリギリ、バランスカツカツ状態。
わかるわかるその気持ち。
“ワタベー!ザイル投げてくれー!!”なんて言ったって、ザイルはあんたのザックの中。な〜に血迷ってんの?
ザイルが自分の背中にあると知った時の斉藤の目は潤みをおびていた。
写真に撮っておきたかったけど、できないもんだよねぇ、これがなかなか。
全てのスリングと補助ロープをつないで、血迷いオジサン救出。
水の冷たさで、指先が完全に麻痺してたみたい。もうすこしで、洒落にならないところだった。
しばらく行って、昼飯にする。激辛カレーパンの立ち食いは旨い。
グレッグは朝もドーナツ、昼もドーナツ、非常食もドーナツ、アメリカ人の食生活ってどうなってんの?
お食事済んで出発。そんで一時間ちょい歩いて、また道草。
実はここでグレッグが○○を○○しちゃったからビックリ!もう、みんなで○○を○○するのに夢中で、時の経つのを忘れてしまった。
そんで、いっぱい○○を○○してきたんだけど、今、斉藤が○○を○○中で、その結果によって、○○をどうするかを○○するので、それまで○○のことは、やっぱり内緒のままでいよう。
なんだか、○○を見つけてから、重くなりかけた足取りが軽くなった。
♪ルンル ルルル〜ン♪と鼻歌を口ずさみながら進む。しばらく行ってまた一服。いつもの事ながら、どうも一服が多い。
するとここで、斉藤がオコジョ発見!・・・と言うよりも、オコジョの方が我々を発見し、近寄ってきたという感じか。あまり人間を警戒する様子は見せず、斉藤のまわりをチョロチョロしている。
だいぶ前に、たしか秋田の大深沢で見たのもオコジョだったと記憶しているが、こんなに近くで見るのは初めてだ。
めまぐるしく動き回るその姿は、なんとも言えない愛嬌があって、かわいいもんだ。
いつまでも遊んでいるわけにもいかないので、オコジョちゃんとお別れをする。
いよいよ流れは細くなり、ツメは紛うことなき日本庭園だった。う〜ん、なるほど奥秩父!田部の重さんも愛した美しい森がそこにはあった。
源頭部の登りはキツかった。
ハアハア、ゼイゼイ荒くなった呼吸は前を行くグレッグのスカシっ屁を二度ほどおもいっきり吸いこんだ。
嘔吐感とメマイを感じながら、まっすぐに破不山山頂に突き上げたころには、あたりはすっかり二種類のガスにつつまれていた。
ナメラ沢は安全で美しい沢だった。危険で不浄な男どもにはもったいない沢だった。
日が昇り、日が沈むまでのあいだに、さまざまな出来事があった。
帰りの登山道では大きな雄鹿が下山する我々を見送ってくれて、その仲間の落とした大きな角は子供たちの学校でのいい教材となった。
父の山行もたまには役に立つのだ。

7/12 10:40AM 私は今、成田空港のロビーでこの収集のつかなくなった記録を仕上げている。
多忙な私は新たなプロジェクトに参加するため、1時間後、ニューヨークへ飛び発つ・・・わけではない。
ただ、お国へ帰るスカシッぺ・グレッグを送りに来ただけだ。
今、私の前を二人の外国人が楽しげに話しをしながら通りすぎて行った。美しい金髪だ。
金髪・・・金いろの髪・・・金 (ムリやりもっていった)
・・・むなしい。無性にむなしい。ナメラ沢のゴールドラッシュは夢と消えてしまった。
下山後、斉藤の“金”調査は三日を要した。結果は惨たんたるものだった。
その道の専門家からのメールには、“川で雲母を見つけた小学生がよく「金だ!金だ!!」と言って騒ぎます・・・”といった、とてもキタン無き解説がていねいに書かれていた。
我々は小学生並だった。
そうか・・・雲母か。「う〜ん、もう」なんてダジャレを言う元気も、ほんとうはないんだけど、でもナメラ沢の雲母には感謝しなければいけないな。
これだけ楽しませてくれたのだから。
そして、雲母を知らなかった、私と同じ小学生並の斉藤とグレッグにも感謝しよう。
知らないということは決して胸を張れることではない。でも、知らないからこそ、楽しめることもある。
山では知らないことが直接危険につながることが多々ある。だからと言って、簡単に知ってしまうことほど、もったいないことは無いと思う。
知を得るまでの道草こそ趣味においては一番の楽しさなのだから。
グレッグは秋葉原で買った電気炊飯器を手に下げて、搭乗ゲートに消えていった。
ほんとうはナショナルの高級品が欲しかったらしいが、斉藤の調査結果を聞いて普及品にしたらしい・・・かわいそうなことをした。
あっ、そう言えば思い出したが、グレッグは大学に席を置く教育学の博士なのだ。
う〜〜ん、ならばナメラ沢の○○が金だとしても、なにも不思議はあるまいになぁ・・・なんちゃって。


7:25道の駅「みとみ」発/8:00雁坂トンネル料金所/8:10同発/9:30久渡沢2段10m滝/10:00ナメラ沢出合/10:15同発/10:40中ノ沢出合(稜線美しい)/11:002段15m滝/11:15 2段15m上休憩/11:50同発/13:05金!?発見/14:00同発/15:20山頂/15:45同発/16:45雁坂嶺/17:00同発(晴れ間見える)/17:15雁坂峠/17:20同発/18:30林道最奥部/19:45道の駅「みとみ」着