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水無川本谷
(丹沢)
'92/11/8 曇り 時々 晴れ 単独 記録 渡部
今回はみんなに振られて単独行である。
初心者の単独行ほど恐ろしいものはないのである。
私みたいなのが遭難などしようものなら、もうケチョンケチョンだろう。
「無計画、無関心、無反省、無知蒙昧、脱肛、水虫、きゃ〜ドン・ジョンソンに似てる〜」このくらいのことは言われるだろう。
当たっているからしかたがない。
入渓点の戸沢を大倉と勘違いして、麓をあっちこっち迷い、やっとのことで滝沢についた。もうここで遭難しそうであった。
丹沢は今年の五月に斉藤と溯った葛葉川以来になる。かと言って以前丹沢にあしげく通ったわけでもなく、記憶にあるのは大山からヤビツ峠に歩いたことくらいだから、何も知らないのも一緒なのだ。
滝沢からの林道を一時間半で戸沢のキャンプ場につく。そこからしばらく登山道を行けば入渓点。
身支度をして、沢を行く。本谷は水量の少ない渓で、滝もそこそこの高さをもっている。
人気のある渓なので巻き道ははっきりしてはいるが、岩質が脆く、足元がガラガラと崩れるので気が抜けない。
途中、右岸を巻きそこなって懸垂下降になる。なんと、これが我が人生初めての懸垂下降なのだ。
でも家族に呆れられながらも、自宅の階段で何度も練習したから大丈夫。ロープさばきも軽やかにスルスルスルッと降り立てば、なぜか一人でほくそ笑む。
「うーん、好判断、練習の成果がここで出たな、うん、うん」と、大満足でロープを束ねて見上げると、スキップしても登れるくらいの傾斜に見えた。
F7を越えたあたりから、ふり返る景色が美しい。他に入渓者のいない一人ぼっちの渓。
一人でたどる渓は心やすらぎ、いいものだ。ていうのは嘘。ほんとは登山道を横切ったあたりから、行こか戻ろかの微妙な心境だったのだ。心などちっともやすらいでなかった。
F8(だったと思う)付近には遭難者の慰霊プレートが張っつけてあって、こういうの見ると(遭難者には申し訳ないが)私はゾクっとするたちなのである。
「ガラ、ガラ、ガラ」っと落石の音がした。
「そこにいるのは判ってるんだぞ。出てこい」誰もいるわけないのに、大きな岩に向かって大声を出す。かなり情けない。
ここから歌をうたいながら行くことにする。メリーさんの羊にした。
源頭の堰堤を越え、左にある踏跡に入る。しばらく登り、小尾根の反対側へ越えてトラバースする。
遠く秦野の町のむこうに太平洋、そして紅葉が美しい。
いくつかの獣道を見送り踏み跡を見つけ、それを詰めると登山道に出た。塔ノ岳山頂でカロリーメイトを食べて大倉尾根で下山。
途中、新芽ノ茶屋で大きな満足感にひたりながらビールを飲む。いい休日だった。
4:40駒形インター
/6:00大倉着/7:00滝沢着/8:30戸沢着/9:00入渓/11:30源頭堰堤/12:40登山道/13:00塔ノ岳山頂/13:30塔ノ岳発/14:40戸沢着/16:00滝沢着
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