豆焼沢
(奥秩父 滝川)   '99/6/4・5   渡部・斉藤     記=斉藤

4・晴れときどき曇り 5・晴れ


6/4
昨年8月の湯桧曽以来、久しぶりの山行。
金曜日の夜出ということで、出張から帰ったばかりだが、あわただしく用意をし家を出た。
今回は渡部が買い替えた"ルシーダ"で行くことになり、遅く着いても入山祝いの宴会も寝場所も困らない。
関越花園ICを出て国道140号をひた走り、豆焼橋の駐車場に着いたのは0時をまわっていた。
川又から滝川沿いに走る国道は、雁坂トンネルの開通に伴い驚くほど整備されていて、途中にあるループ橋は、忽然と現れたUFOのように山あいの闇に光りのラインを描いていた。
"便利さや時間と引き換えに、道は山を蝕んでいく。
雁坂の頂に伸びる沢達はどうなっているのだろう・・・・"そんな事を考えながら、軽めの入山祝いをして床に着いた。
6/5
翌朝は快晴。 5時半に目を覚ました。
真新しい駐車場は5,60台は置けるスペースがあるだろうか、トイレもきれいで気持ちがいい。
駐車場には我々のほかにも3パーティーのテントが張られていた。
一番早く撤収した男一人女三人のパーティーが、豆焼沢への仕事道を探して右往左往しているのを横目に、朝飯を取り、我々としては珍しく早く6時半に出発した。
豆焼沢の第一の核心部は、豆焼橋下から雁坂大橋までの小滝群・ゴルジュとホチの滝。
時間もあるし下から遡行しようと豆焼橋の近くを見回したが、降り口がよく分からず、モチゴヤ沢からの仕事道を使いエスケープする事にした。
駐車場の横にある排水溝は、"なにもここまでしなくとも・・・"と思うくらい階段状に固められたモチゴヤ沢のなれの果てだ。
工事のために作られた仕事道は途中スチールの階段が組み付けられておりしっかりした道だった。
痩せ尾根の頂上から笛の音が聞こえた。先行パーティーはまだヤブの中らしい。こちらも笛を吹いて道のありかを知らせたが、大丈夫だろうか?
途中、木々の切れ間に黄色く塗られた雁坂大橋が見えてくる、ガイドでは橋の真下にホチの滝があると書いてあるが、ここからは姿は見えず滝の音だけが聞こえてくる。
小一時間ほど歩くとトウガク沢にたどり着く。ここもモチゴヤ沢と同じく塗り固められた階段だ。山腹には大きな鉄の扉があり、これが工事中に出た大鍾乳洞の入り口だろうか。
さらに進むと小沢を横切る道が崩壊しており、そのまま小沢を降り豆焼沢に入渓した。
登攀具をつけ一服している間に竿を出してみたが、アタリはない。お魚はお留守か引越ししたのか・・・・途中ゴミも少なかったので釣り師もあまり入っていないのだろう。イコール魚もあまりいないということか。
今宵の肴はあきらめて竿をしまい遡行に専念する事にする。
なにぶんブランクが大きく、運動不足で足がふら付く。

久しぶりの渓流タビの感触と水の冷たさを味わいながら、奥秩父らしい苔むした渓相の中を進むと8m2段のトオの滝に出た。
一段目に取り付いてみると3歩めがイヤラシイ。
一本アンカーを取りたいところだが難しそうだ。まごまごしているうちに3人パーティーが後ろから来た。
我々はあっさり先を譲りギャラリーに変身、一服つける。
いかにもベテランらしいリーダーが取り付いているが、やはり間にピンが打てないのか強引に登り切った。
後続の二人の確保に入ったところで、我々はあっさりとあきらめ右岸の巻きにはいった。
"あぶないことは、しちゃならぬ"我が山岳会十戒その十。
夜の町で散々悪いことしてるわりに、ここらへんは潔いのだ。(ウソです。)
根性無しの我々は、ふらつきながらもナメを愛で滝を登り久しぶりの沢を楽しんだ。
この渓の親分50m大滝は上部がトイ状になっており直登は篤志家に任せることにし、右岸を巻く。
うす曇りになってきた空を見上げ、時計を見るとまだ11時をまわったばかりだった。
考えてみれば前半の核心部を仕事道で全部巻いてしまったわけで、日帰りのペースだった。
少し早めの昼飯を取ろうと進むと、折りよく小さなゴルジュの左岸に二張ほどのスペースを見つけた。・・・ここがガイドにあるビバーク適地かな?と思いながらラーメンをすする。
食事中、朝、道を間違えたパーティーが通過していった。話を聞いてみるとワンゲル部の学生で、今晩は雁坂小屋に泊まって、明日ナメラ沢を下降し山梨側に降りるそうだ。
朝からヤブをこいだ上に、体よりも大きなザックを担ぐ女の子のパワーにオジサンたちは深く感心するのであった。
一服した後、19m4段を見学し、5mを左岸にランニングを取りぬけると、その先に幕場があった。
時間は13時30分、つめることもできる時間だけれど久しぶりの焚き火もしたいし終了とする。
のんびりタープを張っていると、3人パーティーの人たちが上がってきた。その人たちもここに泊まると言うことで、一緒に焚き火を囲むことにした。
薪を集め、少し早い酒盛りをはじめた。
3人は横浜の山岳会の人たちで、酒を飲みながら沢の話、山の話に花が咲いた。
特にリーダーのU氏は縦走メインの冬山、スキーツアー、沢登、岩、何でもござれのベテラン山屋でいろいろな話を聞かせてくれた。
でも何より驚いたのは酒の話・・・縦走で酒を軽量化するために"エチル"を持っていくとのこと・・・(なにもそこまでと思ったが。現にU氏はその晩ウイスキー600ミリリットル以上を摂取していた。)
夜半、早めに寝た渡部がごそごそと雨具を着込んでいた。星空がキレイだったそうだが、放射冷却で非常に寒かった。
6/6
翌朝、U氏たちは前夜の打ち合せどおり4時半起き6時にスタートしていった。
シュラフカバーから顔を出して挨拶すると、U氏は何事もない顔で歩きだしていった。・・・・・・我々も岩トレと肝トレで修行せねば・・・・(しかし肝臓はどうやったら鍛えられるのだろう)
誰もいなくなった幕場で、焚き火を燃やし、ゆっくりと朝食をとる。
今日はいつものゆっくりスタートで9時に幕場を後にした。
天気は申し分なく、夏のような日差しの中をしばらく行くと、すぐに二股となる。
二又は左から20m2段と右から60mのナメ滝が合わさっており、60mのナメは、正面から日をあびて水晶のような飛沫をきらめかせていた。
「ここはイッチョ中央突破!」とシャワーを浴びながら登っていくが、水の冷たさに手がしびれ、すごすごと中盤から脇にトラバースする私であった。
次の5mナメを過ぎると、沢は源頭の雰囲気となり、右側にガレ場が広がるところで、左からルンゼが入り込む。
本流は右側だが、ガレ気味なので、左を一気につめ上げる事にした。3級ほどの岩登りで一気にコンターをあげると、登山道下の森に入り、ヤブ無しであっさりと道にでた。
名渓、豆焼沢。下流部はだいぶ開発されてしまったが、源頭部のナメの美しさは、さすがに雁坂に突き上げる沢だけあった。
思えば5年前、入ろうと思って橋の工事のため入渓できなかった沢だが、(そのときは入川・真の沢に入った。)なにか約束事を果たせたようでうれしい気分になった。
しかしトンネルの開通により、今後どう変わっていくのだろうか・・・階段になってしまったモチゴヤ・トウガク沢を思い出すと、暗い気分になる。
終了点から数分歩くと雁坂小屋に出た。ビールを飲みながら小屋のおやじさんと世間話をし、帰路を黒岩尾根にとる。
道すがら、シャクナゲの花がそこかしこに咲いており、ひきつった足の痛さを忘れさせてくれた。


6/5・6:30豆焼橋駐車場発/7:30トウガク沢/8:00豆焼沢/9:40 8m2条/13:30幕場
6/6・9:00幕場発/11:00終了/11:40雁坂小屋/(黒岩尾根経由)14:40林道/15:20豆焼駐車場着