釜ノ沢 東俣 MSCC
(奥秩父 笛吹川)  ’02/5/25・26     MSCC・斉藤=記
25 快晴 ・ 26 晴れ時々雪、雨



キラキラの沢に行きました。

5/25
前夜の酒が抜けも醒めもしないのは毎度のことですが、抜けるような青空の下、名渓釜ノ沢に向かいます。
5月のはじめに来た時より一段と深みを見せる緑と東沢の清流が充血した眼を癒してくれますが・・・
「それにしても早い。」
MSCCのメンバーはグングン登山道を登っていきます。いちばん後ろを歩くボクはついて行くのが精一杯なのにさっきもウィスキーを呑んでしまいました。

・・◆・◆・◆・◆・・

 今回は図々しくもMSCCの山行にお邪魔しています。

思えば昨年の3月頃、MSCC主催者であるにん2さんからいただいた一通のメールがはじまりでした。
出しっ放しの我が会HPに目をとめていただいて、MSCC・カヌ沈隊・モンキーズによる関越硬派野営連合?なるものに加えて?いただいたのか?どうもそこのところはよく分からないのですが、とにかく沢の仲間が一気に広がりました。
 中でも今をときめく?カヌ沈隊とは地元も近いこともあり山や里で何度か遊んでもらいました。

肝心のMSCCはと言うとネットでのやり取りのみで、本格的な山行にご一緒するのは今回がはじめてです。
にん2さんは謙遜しますが、すみ放とは比較にならない山行回数、中身の濃さ、充実したメンバーを揃えるMSCCとはいつか一緒に行ってみたいと思っていたのですが、やっと実現したわけです。

今回のメンバーはにん2さんを筆頭にしんちゃん、まみちゃんの女性ふたり、岸波さんににん2さんの会社の部下シマダ君、そしてボクの総勢6名のパーティーです。

前夜 みとみの駐車場で一泊し、のんびりと10時ごろ出発です。
西沢渓谷への吊り橋を渡り、東沢の川原におり、鶏冠谷の出合いを過ぎると登山道が続きます。いつもより重めのザックに早くも息が上がります。みんな早いのです。歩くのが。でも釜ノ沢へのアプローチはホラの貝ゴルジュ、乙女沢、東西のナメ沢の出合滝など見どころも多く気が紛れます。

 はじめて見たホラの貝ゴルジュは5月の太陽と萌える新緑を映しこみ、なんともたとえようのない色の水をたたえています。とても明るく不思議に険悪なものを感じませんが、ルートを知らないボクは、にん2さんが“泳ごう”などと恐ろしいことを言わないよう願いました。
幸いそんなこともなく、左岸を高巻きやがて登山道も終わり長い川原歩きになります。
しばら歩くと東のナメ沢出合につきました。一段目の滝を登ったところで、一本入れます。にん2さんがウルイを今宵のおかずにと採っていました。
ナメの傾斜に体を預け、真正面の太陽を浴びると不思議に人間も光合成ができるような気になります。にん2さんが差し出した採れ立てのウルイをかじると日向の香りがしました。
 たっぷり休憩をしてスラブの滝を下っていくと、上からにん2さんが滑り降り(落ち?)てきました。
 にん2さんも予期していなかったのでしょう。「ああぁ〜〜〜」と、とても楽しそうな歓声を上げていました。笑顔をたやさないところはさすがMSCCの主催者です。

ところで今回、MSCC山行にお邪魔するにあたり、にん2さんから「しんちゃんのリーダー養成山行を兼ねているので、何も知らない振りをして下さい」とひとつだけ条件が出されていましたが、もとよりヨッパライが口をはさもうなど考えてもいません。
 むしろ、しんちゃんもまみちゃんも沢登りなどするようには見えない可憐な女性なのですが(じゃどういうのならいいのかと聞かれても困りますが・・)ボクより大きなザックを担ぎ登るのには逆に驚かされました。

そんなわけでしんちゃんを先頭に遡行はつづきます。
途中、大岩のある川原で右岸にへつりの練習が出来そうなバンドがありました。
にん2さんとアイコンタクトをとり二人で取り付きましたが、見た目ほど簡単ではないというか、かなりヤバソウです。にん2さんが行き詰まり。ボクも行き詰まります。ジリジリとバック。息詰るムーブの中、にん2さんの楽しそうな歓声が目の前を通り過ぎていきました。
往生際のわるいボクは、なんとかひとつ上のバンドを乗り切ろうとしましたが、とても塩梅が悪くさんざんみんなを待たせたあげく振り出しに戻りました。 
釜ノ沢は甲武信ガ岳への登路として昔から使われており、巻きもしっかりとしています。ただ、スラブの沢はちょっとしたスリップが大事故につながります。しっかりとフリクションを確認しながら登りました。
西のナメ沢出合いにはお昼頃つきました。こちらも見事な滝をかけています。本流はまるでプールのようです。
対岸の川原で食事をしながら見ているとにん2さんとシマダ君がクサリを頼りに登っていきます。とても元気なお二人です。
しかし本当に快晴です。お天道さまは偉大です。見るものすべてがきらめいて疲れを癒してくれます。

そろそろ釜ノ沢に着こうかという頃、まあるいお釜が現れました。右側を歩きます。へつるというほどの傾斜じゃないけれど、こういうお釜は押しなべてつるつるで、同じ傾斜で深く深く釜へいざなってくれます。先頭のしんちゃんがズルズルと沈んでいくのを見てイヤな予感がしました。すみ放では、パンツラインはひとつの目安です。なぜなら酒呑みゆえにお腹を冷やすのは禁物ですし、なぜか焚き火の時にケツが痒くなるからです。でも予感どおり沈みました。

そんなこんなで、やっとたどり着いた釜ノ沢出合い。10m魚止ノ滝はとても直登できないので左のスラブを攀じ登ります。
灌木伝いに落ち口に降り、もうひとつスラブ滝を登ります。
ここでシマダ君がこの滝を滑りたいと言いだしました。彼はその風貌から山にこもる過激派学生のように見えますが、考えることも過激でした。日陰にある滝壷は見るからに冷たそうです。岸波さんの「もう少し小さい滝でやれば?」の助言でシマダ君もあきらめたので、ひとごとながらホッとしました。
 さてそこからは大きな見どころ、千畳のナメです。
ジャバジャバと歩くと、飛沫が太陽にきらめき、まるで天の川を歩いているようです。苦労して来たかいがありました。
ヒタヒタ、ジャブジャブと登りつめた8mスラブ滝の前で一本いれていると、ウォータースライダーに未練を残すシマダ君が滝壷に飛び込みました。
彼は二回目の沢登りだそうですが、ガッツがあります。ただ沢の水はまだとても冷たく、滝壷も深いことを彼は学んだようです。

いくつかの滝を越えて3時をまわった頃、両門の滝につきました。滝で出合う二俣は他でも見たことがありますが、スラブの双子滝は間にヤマツツジのアクセントを添え、なかなかの美瀑です。ルートは右俣の左岸。しっかりとした巻き道がついていますが、高度感があるのでアンザイレンで巻き登ります。すぐに出合う迷い沢を分け、ヤゲンの滝、6m滝を過ぎると広川原が続きます。
すでに先客の幕場がありましたが、とにかく幕張り放題の広い川原で、6人がゆったり泊まれる幕場を心置きなく探せます。
しばらく行った林の中に絶好の幕場を見つけ、巨大タープを張りました。ブルーシートじゃないところがお洒落です。早速焚き火の準備。
岸波さんとシマダ君が取り憑かれたように拾ってきた薪が山のように積み上げられ、長い夜が楽しめそうです。
沢で冷やしたビールで乾杯。ウルイのおひたしにバター炒め、MSCCオリジナルメニュー?「ネギにゃんちゅう」、ボイルソーセージ、ボクがお口汚しに持ってきた煮豚もあっというまに売り切れ、メインディッシュはカレーライス。質素なすみ放の食事とは雲泥の差でデザートには杏仁豆腐まででてきました。
すっかり満腹で焚き火も近寄れないほど盛大です。お酒もすすみ、ほろ酔い気分になったころ、しんちゃんがご丁寧にプリントした“源流で歌おう”を出してきました。
にん2さんにおだてられ歌などうたってみます。
“ヤブに戸惑う弱気なボク♪ロープすがるあの高巻き♭・・・・・・鏡のような釜の上で♪重い荷は〜いつの日も〜ダメ〜♪”
こんだけ食ったので明日は荷が軽くなるでしょうか?

5/26
寒さで目が醒めたました。いつものことです。高々と張られたフライの下では、テロテロのシュラフも腹回りのゼイ肉もまったく効果はありません。
にん2さんとしんちゃんも同じだったようで、ボクよりも早く起きて焚き火をおこしご飯を炊いています。
一度ガバッと起きたのですが、またしばらくまどろみます。梢の合間の青空が、今日も楽しい遡行を約束してます。
 しっかりと食事を取り、にん2さんとしんちゃんが作ってくれたオニギリを携え、9時過ぎに出発です。
今日もしんちゃんのリードで隊列を組みます。
早くも息があがりますが、ズルをしてみんなと違うルートをごまかしごまかし登ります。今日は長い下山が待っています。体力を温存しなければいけません。
40m4段ナメ滝を過ぎると水師沢の出合です。今度は読図の練習です。「コンパスと地図の位置、沢の形状、水量比、沢床の高さ、尾根の張り出し、周りの状況を見てだね・・」にん2さんの解説に頷くしんちゃん。さぁ〜ドッチに行くリーダー?。
でもその前にまみちゃんが「甲武信ガ岳→」の看板を発見してしまいました。
リーダーしんちゃんのルートファインディングは独創的です。あえて困難な道を選ぶ新米リーダーに にん2さんもやや心配顔ですが、必要以上の手助けはしません。でも しんちゃんなら登攀力もあるし立派なリーダーになれるでしょう。課題はやはりルーファンでしょうか?(スミマセン偉そうに)

さて、ナメの中に小滝をかける沢を登っていくと3段30mのスラブ滝が見えてきます。源頭部への最後の関門は二段目で木賊沢を分け本流には30mの大滝がかかっています。
傾斜もややきつめの滝を慎重に登り、木賊沢を渡渉し大滝の左岸を巻きます。巻き道からの景観はなかなか見ごたえがあります。
5月のはじめに雪であきらめた釜ノ沢下降ですが、確かに雪が付いた状態では、かなり危険なものだったでしょう。スラブの沢は滑り落ちたら止まりません。
大滝を巻いてから延々と続く(ように思われる)ナメや小滝を登っていくと、ややガレてきます。
見上げるとポンプ小屋が遠くに見えます。にん2さんは左に入るガレ場から甲武信ダイレクトなどと恐ろしいことをおっしゃいますが、聞こえないふりをして黙々と沢を詰めあげ、ポンプ小屋からジグザクの道を甲武信小屋に向かいます。
 あいにく空は曇って気温も下がってきたようです。もう満開かと思っていた山頂の石楠花はまだ蕾も色づいていません。
甲武信小屋でおにぎりを食べていると、この季節には珍しく大粒の雪が降って来ました。
すみ放であれば山頂にこだわらず“即撤退→里でビール→酩酊”のセットプレイに入るのですが、MSCCは気合が違います。ボクもつられて登りました。
雪の合間をついて空身で登ります。あいにく山頂の眺望はいまひとつですが、替わりに可愛らしい小鳥と出合うことができました。
にん2さんに教えてもらった「キクイタダキ」の名のとおり頭に菊の花びらをちょこんと乗せたその小鳥は近づいても逃げようとしないのです。それどころか にん2さんの差し出す手に乗るではないでしょうか!野生の小鳥が手に乗るなんて、まるでおとぎ話みたいな光景です。さすが響子さんの源氏名を持つにん2さん(なぜだかは知りませんが・・笑)小鳥もお姫様と間違えたのでしょうか。
前にナメラ沢で会ったオコジョもそうでしたが、秩父の動物たちは人懐っこいようです。熊にだけは懐かれたくありませんが貴重な体験でした。
しばし山頂を楽しみ、また降り出した雪に追われるように小屋まで降ります。
あとは下山です。遠くに春雷を聞きながら木賊山をトラバースし、特記することもないほどの高速下山です。途中石楠花のトンネルが車窓を流れるように見えました。
なが〜いなが〜い徳ちゃん新道の下山も終わりを告げる頃、また雨が降ってきました。
登山道終点の西沢山荘に着いたとたんに大粒の雨。廃屋となっている山荘の軒下でしばし雨宿りします。充実した沢旅もまもなく終わりです。

昨年行ったカヌ沈山行もすごく面白かったけれど、大勢でワイワイ登るMSCC山行もすごく楽しめました。
なにか人のお家にお邪魔したみたいで、ワクワクしてクセになりそうです。
さしずめ男兄弟ばかりの家がカヌ沈隊で、きれいなお姉さん(妹?)のいる家がMSCCでしょうか?
後半天気のくずれもありましたが、楽しいメンバーとキラキラの沢を満喫することができました。

最後の林道を歩いていると、カラーから白黒の世界に、まるでオズの魔法使いみたいに日が暮れていきます。
雨上がりの山にかかる虹を見ながら、出るのはオーバー・ザ・レインボウの鼻歌です。


9:30 車発 /11:10 山の神/13:00 西のナメ沢(お昼)13:20発/14:10 釜ノ沢出合/15:20 両門の滝/16:45 広川原 幕
9:15 広川原幕場発 /10:00 水師沢出合/12:30 ポンプ小屋/12:40 甲武信小屋(気温7度)/14:30 小屋発/ 17:10 林道着(雨宿り)/18:10 車着