釜川 右俣 (清津川)  ’01/8/13・14   渡部・河西・斉藤    記=斉藤
13・14 晴れときどき曇り 両日夕方雷雨


  「一度は見てみたい」
  前から三釜の写真を観光地のパンフレットみたいに眺めていた。
  しかし普通の旅行で素晴らしい景色を見ても、感動は長続きしない。長くて10分見ればいいほうだろう。思い出は紡ぎがたいものなのだ。
  でも今回の遡行で見た釜川の風景、そして三釜の姿は深く心に染み込んだ。
  それは、そこまでの道のりと、気の置けない仲間たちと共有した困難と喜びがあったからだろう。

8月13日
  7時前に林道ゲート下の広場に車を置き、急な砂利道をくだり釜川の流れに足を浸す。
  ゲートまでは昨日偵察に入っていたので、わかりにくい大場の集落の道も迷うことなくここまで着いたのである。

  今年の盆山行は新人河西の参加もあり、南会津アブアブ地獄をはずし(たんに我々も弱っちいだけだが・・・)真夏の太陽の下、スカッと爽やかな沢と言うことで、前から行こうと思っていた釜川を選んだ。

  入渓点の取水口からは巨岩帯が続く。
  小さい河西は大きい岩の乗越しに難儀して、早くも水没。
  20mほどのトロは左岸を巻く。巻道の途中に、釣竿が置かれていた。釣師がキジでも撃っているのだろうと、渡部が声を出しながら進むが誰もいなかった。新しい仕掛け、ヤブの中なのに伸びきった5.5mの竿、すぐそばには深い淵。あとで考えても不思議な竿だった。

  トロを越えてからも続く巨岩帯に息を切らせ登っていくと、取水口から30分ほどで二俣に着く。
  天気はまずまず。
  一日 日和って良かった。

  実は、一昨日の夜、釜川近くの道の駅“信越さかえ”に泊まった我々の計画は、その夜降り続いた雨と、翌朝のドンヨリした空とそれ以上にドンヨリした頭(呑みすぎ)により、一日ずれているのだ。
  当初の清水沢先一泊、ノンビリ登って沢中もう一泊なんて計画自体無理があったのかもしれない。

  もともと一泊の沢ということもあり、12日は日和ることとしたわけだ。
  で、丸一日のヒマツブシとして、まずは入渓点の確認をしに林道の終点まで行く。
  大場の集落は、かの高桑氏に「ここに住みたい」と言わしめただけあり、なだらかな山すそに点在する家々、そして見渡す限りの田畑、まさに農村の原風景と言えるたたずまいを見せている。
  でもそれ以上に何かひきつける美しさががそこにはあった。
  それは道端にゴミが落ちてないからだ。
  簡単なことなのだ。都会でもゴミさえなければそれなりの機能美というのも見えてくるはずなのだが・・・
  遠くに見える山はすっぽりと黒い雨雲に覆われていた。

  ヒマツブシの第2段は満場一致で決まった。
  まずはマジックと紙テープを調達し、水上ICへと向かう。そして楢俣ダムへと。
  このところの雨不足で都民の水がめはどのような状態になっているのか・・・を確認しに行ったわけではない。

  行きの車中で、なにを書くかで盛り上がる。

   「もう濡れてるんだね?・すみ放わたなべ参上!」
   「♪振り〜向きざまに誰よ?とは言わないで〜♪・すみ放さいとう参上!」
   「なんか食わせろ!・すみ放かわにし参上」

  しかし、ダムサイトにもキャンプ場にもその車はなかった。
  考えて見れば、我々の持っている情報は「カヌ沈隊合宿楢俣沢?・埼玉ナンバーのデリカ?」だけである。
  カヌ沈オザキ隊長号陵辱計画は未遂に終わった・・・ムナしい・・・渡部も私も四十過ぎたイイおやじというのがなおさらムナしい・・・
  こうして楢俣ダムのように乾ききった気持ちを湯沢ブリューワリーの地ビールで癒し日和見の一日は終わった。

  そんなわけで、1日遅らせて入った釜川だが、晴れてはいるものの雲の多い天気だった。

  二俣を右に入りしばらく行くと大きな淵を抱えた5mCSが現れる。
  滝の右側に乗れるところがあるが、そこまでは泳ぎになる。トップを渡部が、続いて河西が鼻下までもぐり笑いながら?続く。器用なヤツだ。
   そして私も半分溺れかけながら進む・・・
  次の4mCSは左岸を巻き懸垂下降。河西初の懸垂下降だ。念のためもう一本ロープを付け確保する。
  何個か滝を越して、5m階段状の滝を泳いで取り付き登る。間の川原で休憩を入れ、さらに進むと20mの釜。
  渡部が空身で泳ぎ、後続はザックピストンでクリアする。
  ヘツリ、泳ぎ、高巻き。釜川の滝はどれも大きな釜を従え簡単には通してくれない。

  そろそろ三釜に着くだろうと言う頃、3mの滝が現れる。滝の奥にスラブの壁が僅かに見える。
  さながら三釜の前門のような滝は水流も強く、水線通しには進めず、左岸3mほどのバンドをトラバースする。
  ランニングが取れないので、河西に「落ちるときは水の上に飛べ」と指示したが・・・飛べるくらいなら、落ちないかとも思った。
  (河西は真剣に滑ったら腕で飛ぶことを考えていたようだ。)

  なんとか前門の滝を超えると、いきなり目の前に三釜が現れた。
  まさに奇観といえる三釜の大滝は想像以上に大きく見えた。
  両岸に発達したスラブを配したツルツル滝は壮観というより荘厳といえる姿を見せている。
  これまでも大きな滝は見てきたけれど、こんな感覚は初めてだ。
  思わず拍手を打って拝んでしまった。

  しばらく大滝に見とれてから、右側をフリクションを効かせて登り、右から入るヤド沢を越え、中段のテラスで昼休み。
  蕎麦を茹で、とろろをする。おっきな釜を見ながらとろろ蕎麦をすする。オツなものだ。

  いつものようにタップリ食後の休みを取り、穏やかなナメを進むと、6m二段が行く手を阻む。
  右岸を高巻き次の滝も悪そうなのでまとめて高巻く。
  巻きの最中に雨が降り出してきた。ちょうどいやらしいスラブのトラバース中に雨脚が強くなり雷が鳴り出す。
  さんざん泳いでずぶぬれだけど、悲惨だ。
  しばらくヤブをこぐと平らな場所に出た。ちょうどその先に小さなルンゼがある。
  雨はまだ降り続いているので、しばらく様子を見ることにした。
  時計は16時を回っているので最悪の場合はヤブ中ビバークも覚悟する。

  「ここを〜切り開いて〜、そっちの斜面で寝て〜、トイレは今来たヤブの中で〜、水はそのルンゼから持ってきて〜・・・むっ!台所がないのね。」
  状況が状況だけに口には出さなかったが、私はすご〜く不満だった。
  焚き火だ!焚き火ができんではないか!ここでは!

  私の内なる願いが届いたのか、しばらくして雨は小降りになった。
  すかさず渡部と私で偵察に行く。
  ヤブから見えていた小さい川原は、予想通り使えるものではなかった。
  もう一雨降れば確実に水没するだろう。
  アキラメ顔の渡部をよそに私は幕場を探し、先へ先へと進んだ。
  今晩のオカズは九州黒豚の味噌漬。
  なんとしても!なんとしても!焚火でジュウジュウ焼いて食わなければならないのだ!
  正直ここに告白しよう。その時私はひとりヤブに置いてきた河西を忘れていた(ウソ)
  しばらく進み、流れの中にワイヤーがある右岸に幕場を見つけた。
  取って返し、河西と一緒に幕場に着いたのは17:30だった。

  今度は、焚火の準備だ。
  湿った薪にカツを入れ、なんとか火を起こしたが、時折雷鳴がとどろき、焚火も徒労に終わるかもしれない。
  できるとこまでと飯を炊き、肉を焼く。
  こんな状況の中、8年前の万太郎以来うまく飯が炊ける(いつも酒に気を取られ焦がす)。オカズはジュウジュウの肉に葉唐辛子。
  “うんめ〜〜!”と天を仰げば、満点の星空。
  知らぬ間に晴れ渡った星空を肴に酒を呑む。焚火でケツを乾かす。明日はいい天気だ。

8月14日
  6:30に目が覚める。
  天気のいい谷の朝は最高だ。
  夕べは思いもかけない星空と焚火で夜更かしをしてしまった。
  寝たのが11時。
  まだ清水沢にもついてないのだが、しばらくタープの下でまどろむ。
  昨夜の作戦会議では、林道横断点で、進退を考えようと言うことになった・・・が焚火を起こし、餅を揚げ、のんびり朝のティータイム。
  ほんとは小松原湿原も見たいんだけど、みんなして林道終点を考えている。
  まさに“ほうとう流”。

  すっかり日も上がった10:00頃、幕場を後にする。
  そんなナメきった態度の我々に早速6m二段がお出迎え、滝を三つほど高巻き、お次は15mの泳ぎ。今日も楽しませてくれそうだ。
  右岸に滑り台がある12m直瀑はその右岸のバンドにルートがあるが、ビレイもしにくく、落ちたら一気に下まで行く。
  ここまで健闘してきた河西だが、嫁入り前ということもあり、右岸の巻きに入る。
  ワシラ 妻帯者だから責任もてんのです。
  でも、巻きも悪かった。渡部が空身でロープを引き、河西、ザックと順番に引き上げる。
  逃げ場のない私のヘルメットに落石がコンコン当たる。ヘルメットさまさまだ。
  高巻いたヤブから清水沢の出合いが見えた。15mの懸垂で沢におり、その先の左岸台地で昼飯にする。
  天気もいいので、またまたノンビリ昼休み。
   チーズ・鶉卵入りラーメンで腹を満たし、出発するとすぐゴルジュ、暗〜い暗〜い滝を右側の大地から巻き、胸まで浸かるトロを進む。
  いったい昨日から何回泳ぎ、何個の滝を越したのだろう?
  実は泳いでいるとき記録用のちびた鉛筆を流してしまったのでこの記録も自信がないのだが・・・
  (注:あぶないので遡行の参考にしないでください。)誰もせんか・・・・

  もう、いいかげん林道に着かないかなと思いかける頃、小さな滝をかけるゴルジュが現れる。
  右も左も巻きなし。ここまでほとんどトップを任してきた渡部に・・・・ここも任す。
  渡部しばし思案の後、ツルツルの右壁を絶妙のヘツリで突破。ウンウン彼も成長したな。オジサンはうれしい(涙)
  後続二人はザックピストンで引いてもらう。楽だけど冷たい。
  つづく12m二条滝は右側ルンゼを滝の落ち口まで小さく巻ける。
  右手の山肌には、もう林道らしきものが見えている。そしてこの滝を過ぎると、渓相は一気に穏やかになる。
  ほんとにやさし〜やさし〜流れの先に、ここまでの苦労に報いるかのように、これまた穏やか〜なまん丸の釜が鎮座している。
  右から5:1の枝沢が入り込む美しい釜は今回の沢のフィナーレを飾るにふさわしいものだった。

  “終わりよければすべて善し”こうして釜川遡行は終了したか・・・に見えたが、昨日と同じパターン。林道を目前に突然の豪雨。
  真上で鳴る雷にビビリながら、3人でタープを被りやり過ごす。

  結局1時間ほど停滞し、増水した濁り水のなかを進むとあっけなく林道が現れた。
  いろいろ問題のある林道らしいが、橋の上で3人で握手。

  釜川はけっこう厳しい沢だった。林道までとは言え、核心部は初心者には薦められない悪さがあった。

  今回みごとなリードを見せた渡部。初心者なのに笑顔(たまに引きつるものあり)をたやさなかった河西に拍手を送ろう。
  同じ釜の飯を食った河西が、すっかりすみ放の一員となった沢旅だった。 


8/13
6:50 ゲート駐車発/7:00 取水口 /8:30 二俣/8:45 5mCS左岸泳ぎ/9:10 CS4m左岸巻きカワニシ初の懸垂/10:00 5m階段状 ザイル出す/
11:00 20m釜 2mCSザックピストン/12:00 三釜の大滝/12:30 大滝上で昼食/13:40 同発/16:00 雷雨小一時間停滞/
17:30 ワイヤーのある右岸幕(結局清水沢までの間で一番いい幕場だった) /22:00 就寝
8/14
6:30 起床/9:50 幕発/12:30清水沢出合/16:30 雷雨小一時間停滞/17:50 林道/21:15 ゲート 車着