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'02キノコ山行
カヌ沈withすみ放 '02/10/12〜14
記=斉藤
10月12日
夜
入山祝いはヤスさんのキックオフではじまった。
地面に広がる銀嶺立山1升の酒だまりに去年より豊満な三日月が浮かぶ。
硬派で知られるカヌ沈隊のキノコ山行に同行するのはこれで2度目になる。
昨年は入山祝いの席にはお邪魔できなかったが(安堵)秩父柳小屋での楽しい宴会に寄せてもらった。
脱落者も出た壮絶な山行で、カヌ沈のパワーをまざまざと見せつけられたものだったが、その脱落者は今おニュウの1升瓶を蹴り倒した。
他メンバーから「あいつ人間失格になる前に手ぇ打ったぜ・・・」と大声で陰口をたたかれたが、呑む酒はたくさんある。楽しい夜がはじまりそうだ。
満点の星空のもと、入山祝いに集うのは、カヌ沈隊オザキ隊長を筆頭にヨコサワ君、ヤスさん、フカマチ君、サル君。
すみ放はわたしと途中で拾った子供ひとり。そして今回はヨコサワ君と来月結婚する彼女が参加している。
女人禁制のカヌ沈山行だが「結婚したら小遣い3万、山行月いち」打破のためにとメンバーの暖かい配慮だったのだろう。
そして〇〇(未成年なので名前は伏せる)は子供だから不問とされた。
 今朝から苗場越えで入ったオザキ君は我々より早く現地に着いていた。
ヨコサワ君の結婚に落胆した傷心ハイクだとの噂もあったが、そこらへんの所はわたしも良くわからない。大人の世界は複雑なのだ。
苗場への登路、堰堤脇にあるコンクリートの小スペース。銀マットを広げ宴会が始まる。
ヨコサワ炊事班長のツマミが繰り出され、ヤスさんのノーブレスマシンガントークが座を盛り上げる。
ヨコサワ君に寄り添うように座る彼女も楽しそうだ。向かいに座るオザキ君は心なしかさびしそう・・・
冴え冴えとした星空から夜露がおりる中、酒宴は深夜までつづいた。
10月13日
雲ひとつない秋晴れ。
シュラフでまどろむアンニュイなひと時。最後まで起きないヤスさんにそれとなく注目が集まるが今回は大丈夫なようだ。
みんなで朝食を食べる。
「なに勝手にメシくってんだよっ!」「俺のは?」「これ誰の?食っていい?」「あっテメェなに俺の食ってんだよぉ!」「ビールねえ?ビール」
和やかな朝食を終え、幕場を撤収。
酒が足りないので、途中のロッジで調達する。「苗場山
本醸造」。ヤスさんワンキック 2,500円なり。
「たけ〜!ざけんじゃねーよ!あのババァぼったくりやがってよぉ」などと大人だから言わない。面と向かっては。
気を取り直し林道の入り口で車を止め入山する。
実は今回のキノコ狩りは、とある方から教えてもらった秘密の場所なので、大人の約束として伏せておくことにする。
林道を数十分歩いたところで幕場を決め、荷物をデポしてキノコ狩りをすることにした。
まずは腹ごしらえと、サバ缶うどんをすする。
茹でたうどんに、サバ缶、刻みネギ、花がつおをのせ醤油でいただく。ヨコサワ炊事班長考案のシンプルで味わい深い大人の一品だ。
腹を満たして今回のメイン、キノコ狩りをはじめる。狙いはマイタケ。
結婚式の準備があるヨコサワご両人とは
ここで別れ、各自山に散らばる。
わたしは保護者として〇〇と一緒に森に入った。
正直
マイタケが簡単に取れるとは思わなかっが、落葉の季節を前にした静かな森にいるだけでも満足だった。
子供らしく元気に駆け回る○○を横目に、耳カスみたいなキノコをむしりながらのんびりとした時間を楽しんだ。
いいかげん飽きた頃〇〇が美味そうなブナシメジを、サル君がクリタケを見つけた。人数分にはとても足りないが、とりあえず天然のキノコが食べられる。
時間もおしてきたので、キノコ狩りを終了し、幕場で焚き火をはじめる。
やや幕場から離れた水場で珍しくオザキ君がキノコの下ごしらえをしている。
一緒に里芋をむいている子供に話しかけているようだ。
『あぁ〜ビール呑みてぇ。1,2,3・・・7本。ん〜6人だからぁ』
『〇〇!呑もうぜビール。呑めよビール』
「やですよ!そうしたらあたしのせいにするんでしょ?!」
『あっ!そうだ〇〇さっき呑んでねえよな?』
「え〜わかんないけど」
『プシュ!ゴクゴクゴク』
「あっ!・・・・・」
『・・・・・・言うなよ(目線で)』
“あとビール何本ある〜?”
『ろっぽ〜ん!』
「・・・・・・」
オザキ君。気をつけたほうがいい。子供はすぐチクるから。
今夜は炊事班長のヨコサワ君がいないので、わたしがグリルマスターとなる。大役が務まるか少々不安だが・・
まずは焚き火の上に網をのせ豚の味噌漬けを焼く。
“ジュ〜” 「うんめぇ〜!すげ!うめ〜!」“ジュ〜”
「うんめぇ〜!すげ!うめ〜!」“ジュ〜”
「うんめぇ〜!すげ!うめ〜!」
数枚に切り分けた肉片は、あっと言う間に無くなっていく。
「テメェ〜なに食ってんだよ!」「あっこれ俺のね♪」「あ〜ソコんとこうまそ〜」「あ”〜〜食べたい!食べたい!」
幹部が食べてから、隊員が食べる。秩序正しいありようが見ていて気持ちいい。
残りが少なくなるころ「じゃさ。ジャンケンで決めよう!ジャンケン!」

民主的に解決するのも大人の知恵というものだ。一番人気は脂の乗った端の方。
「ジャンケン!」「やり〜!」「この三角のとこ!ここうめ〜!」
次に先ほど仕込んだモヤシのサラダ。
「うぉ、何これ!うめ〜!」「よこせ!よこせよ!」「あ〜〜食べたい!食べたい!」「斉藤さん
これどうやって作るんすか?うんめぇ〜これ!」「まわせよ!早くよ!」「あ”〜〜食べたい!食べたい!」
持ってきた油で餅を揚げる。
本当はマイタケの天麩羅が食べたかったのだが、冷静に餅を揚げるのが大人ならではの機転というものだ。
切り餅をそのまま油に放り込み、醤油をたらし海苔をまく。
「うめぇ〜!これ何?」「すげ〜これ!すげ〜うめぇ!」「あっオマエ何個食ったんだよ」「ビール!ビール!」「2、4、6
あと1個づつな」「俺まだ2個しか食ってないんだけど・・・」
ヨコサワ炊事班長におよばない拙い料理ばかりだが、うまいを連発するカヌ沈隊。大人の礼儀を心得ている。さすがだ。
最後にキノコたっぷりのキノコ鍋。なぜか採った以上のキノコが入っているが、経済力のある大人ならではの鍋というべきだろうか?
「ブナシメジどこ?ブナシメジ?どこ?どこ?」「あの〜鶏肉いっぱい入れてください」「うめぇ〜!このゴボウ」「酒は?酒?」「・・・誰か一本割ったからなぁ。。」「ありゃ山の神に捧げたっつったろ〜!苗場山買ったろ〜よ!」
エレガントな食事も終わりひとごこちつくと焚き火を囲み会話が弾む。
「乳輪!ジョジョ!ジョジョ!」 “ブリブリ”
「ごっつぁんです!」・・・「うわぁ!クセ。マジでくせぇ!」(以下略)
あまりにもインテリジェンスあふれる内容なので割愛するが、ホントにカヌ沈の面々はスゴイのだ。
世界を股にかけるエリートビジネスマンであったり、ヤスさんは、あんなことやこんなことしても安定した人生設計ができる一級建築士という資格をもってたりする。
サル君も岩石を研究する理学博士で、海外の学会に出席し
「そのとき!マグマドーン!マグマドーン!」とコマネチばりのボディランゲージで各国の研究者に一目置かれているらしい。次回はチリに行ってアニータに会うという行動派だ。わけわからんが。
そんな彼らと語り合う知的な会話は、都会のコ洒落たバーで呑むよりも、はるかに楽しく有意義なものだった。
男らしくサル君のモモヒキを奪い取ったオザキ君は一足先に寝入ったが、この夜も深夜まで酒宴はつづいたのだった。
10月14日
夜半ぱらついた雨も上がり、うす曇の朝を迎えた。
昨夜のキノコ鍋を暖めなおし軽めの朝食とする。
「なんか?これ何ですかね?」
〇〇が手についた汚れをしきりに気にしている。
『ウンコ』
「ちがいますぅ〜!!ぜったいちがいますぅ〜!」
『あ、地団駄踏んでる!地団駄!ほんっと子供みたいだなぁ〇〇は』

食事の最中に目の前の川に2頭のカモシカが飛び込んできた。
「うわぁ!!スゲ!」「なにあれ?」「カモシカ!カモシカ!」「写真!写真!」「今クマいましたよ!」「ちっがうよ!バカ。カモシカだよ」「すっげ〜!オスとメスかな?」「やらせろ!やらせろ!ってカンジ?」
(以下略)
アダルトな山行は終わり、朝食をおえた我々は帰路についた。
沢旅の終わりはいつも淋しい。サル君を越後湯沢で、オザキ君、フカマチ君を川越で、業平でヤスさんを降ろす。
ひとり、ふたりと抜けていくごとに自分も現実の世界に引き戻されていく。
ハンドルを握りながら、今年出会った人たちと楽しかった出来事に思いを馳せる。
瀬音の森にはじまりMSCC、カヌ沈、ウラ沈隊といろいろなところにお邪魔した。南州太郎も真っ青のお邪魔ぶりだったなぁ。
楽しい1年だった・・・
助手席に座っている子供が言った。
「カヌ沈の方がよっぽど子供ですよね?」
・・・・・・・
しばしの沈黙のあと、私はためらうことなく大きくうなずいた。
フロントガラス越しに見る月はさらに豊満となり三日月とは言えない姿を空に浮かべていた。
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