私が2000年4月に、東京都小平市に単身赴任となってから始めたのが自転車である。
中学生の時、4段変速のセミドロップ車で友達と衝動的に、横須賀の自宅から小田原まで往復約150キロを1日かけて走ったことがあった。
この年になって、あの時の感動をもう一度味わえないだろうかと思ったのである。
「よし、ランドナーを買おう。面倒だから女房には内緒で買ってしまおう。」(注1)
こう決めるとすぐに、当時からのあこがれであった神田の『アルプス』というオーダー専門の自転車屋に出掛け、水色のランドナーを注文してしまったのである。
普段、このランドナーは社宅の6畳間の壁に自転車用のラックを作って、そこに掛けておいた。
私が気に入って何度か出掛けたのは西多摩郡檜原村であった。日本の名滝100選にも選ばれている「佛沢の滝」までは、小平から往復約70キロで日帰りのツーリングには適度な距離である。

まえがき
自転車といっても競輪ではない。
サイクリングである。
手や尻が痛み、家に着いた時は疲れてヘトヘトではあったが、自転車を使えば自分の力だけであんなに遠くまで行くことが出来るんだ、と単純に驚いた。自分の世界が広がったような感じがした。
当時、毎月購読していた自転車雑誌によく掲載されていた「北海道一周」や「日本縦断」などの紀行文を読むたびに欲しくて仕方がなかったのが、そこで使われている『ランドナー』というツーリング専用車であった。しかし、それは中学生にとっては大変高額なものであった。

もちろん買い物などには使わなかった。買い物にはママチャリなのである。
滝の近くには、ここの水で入れた美味いコーヒーを飲ませる喫茶店や手打ち麺とさっぱりスープのラーメン屋などがあり、お薦めである。
自転車で旅(たとえそれが1日でも「旅」である)していると電車や自動車では経験できない人との触れ合いがある。
食堂のおばさんが開店の45分前にも関わらず食べさせてくれたり、地元の人にお茶をご馳走してもらったり、訳もなく酔っ払いに誉められたり、不思議なことにツーリングの度にこのような出会いがあるが、これもまた楽しみの一つである。
2002年、2年間の単身赴任が終わり神奈川県の自宅に帰って来た。
現在もこの自転車は自宅車庫の壁に設けられた専用ラックに鎮座し、出番を待っているのである。
(注1)もちろん、後日、しっかりと女房には説明済みである。心配しないでいただきたい。
それどころか、2001年には女房用のランドナー(ミキスト)まで買ってしまった・・・という訳だ!

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