第壱部隊 みだれ髪
例のカレー入れのような物から煙が出始めて2分後、何者かがその物件から出現した。
「ニイハオ。ボンジュール!!私、こういう者です。どうかよろしく。」
例の物件から出現した人物が渡した名刺には、『〜願ひかなえま候〜 Mr.アルコールランプの魔王』と書かれていた。
「願いをかなえるっぺか?」
「さようでござる。クライアント殿。無償でどんな願ひでも1つだけかなえて見せま候。これは20年に1度の大安売り、いやいや、
大サービスでやんす。」
いきなり謎の人物が出現した上に、しかも願いをかなえるなんて言われちまったから、3人は暫く考え込んでしまった。そして、少し迷った後に頼む事を決めた。
「じゃあ、お願いします。……でも、これって本当に無料なんですか?」
「も〜ちろんでおじゃる!!では、願ひを言ひたまへ!!」
3人は少し相談して、願いを言った。
「罪なき雄介君を蘇らせて下さい!!」
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「そうか。それでよろしいですか?」
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はい |
| いいえ |
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勿論3人は『はい』を選んだ。
「うっうっ…。友情ぢゃ…。……ムッ!!(気合い)……さあ、これで願いはかなえけり。サービスで記憶も修正しといたでおじゃる。
では、また会おう!!チャオ〜」
『ありがとう』と言う間もなく、あっという間にMr.アルコールランプの魔王は去って行った。
しかし、3人はまだ驚きと不思議な感覚の渦中にいた。
―――翌日
3年4組の教室の風景は、普段と全く変わってはいなかった。机の上に置かれていた花瓶が1つに減った以外は。
そんな光景を航・映明・孝允と3年5組の佑馬・清和が世間話をしながら眺めていた…………その時!!
奴は現われたのであった……。大音量のBGMと共に……。
「な、何だ?この音楽は?」
「何処かで聞いたことがあるような気がするんだけど……思い出せないなぁ。」
「これは、魔王のテーマなんじゃない?」
「ねぇ……そんな事より問題は扉にずっと映っている人影だと思うんだけど。」
そんな風に戸惑っているうちに、奴はいつの間にか5人の前に現われていた。
そして、頃合いを見計らって不気味な口調で声を出した。
「お客様、一体どうなさったのですか?」
「え……?うわ―――――っ!!!」
奴の姿を見て、全員が驚いた。もう校舎の外まで聞こえそうな声で叫んでしまった。
それもそのはず、5人の目の前にはあの死んだ筈の
ABE(以下 熊蔵)が不敵の笑みを存分に浮かべながら
その場でくるくると回転していたのだ。しかも貞子ムエタイバージョンで……。
当然、事情を知っている航・映明・孝允の3人にはとても不思議な感覚が漂っていた。
「ねぇ、航君。あの人物(=熊蔵)って一体何だと思う?」
「さぁ〜? おらっちには全く分からんちゃん。」
「生物じゃないの?」
「そうか!」
熊蔵は、今の言葉を深く胸に刻み込んだ。そしてその直後、「貞子ムエタイバージョン」の実行により
乱れた髪を刹那で後ろに束ねた。
それを目の当たりにした航は、密かに思った。
(熊蔵、髪を結ぶの相当慣れとるばい……。)
しかし、他の皆はそんな事は全く眼中になかった。そう、ビルの100階から落ちた筈の熊蔵が
何故こんな所でニッコリとしているのか、不思議に思う気持ちがいみじく大きかったからだ。
未だに教室の中にいる者全員が驚いている最中、熊蔵は再びソムリエ的態度とこの上ない満面の笑顔で
飛び掛るような勢いで語り掛けて来た!!
「あの、私がここにいるのがそんなに可笑しいので御座いますか?ご意見、ご感想をお持ちのお客様は、
なんなりと私にお申し付け下さいな。」
熊蔵のその発言を聞いて、早速孝允が熊蔵に単刀直入で聞いた。
「熊蔵君、君は何かの衝撃みたいなもので蘇ったのかい?そうじゃなければ、ここに熊蔵君がいるのは
どう考えたって、可笑しいでしょ?」
その言葉でピンときた航と映明は、孝允の傍に近寄り、小声で話し始めた。
「ねぇ……孝允君……熊蔵が蘇ったとなると、まさか昨日の『Mr.アルコールランプの魔王』が関係しているのかな?」
「……でも、例えそうだとしても、お願いしたのは雄介君の方だけだよ?」
「…確かにそうだよね……。じゃあ、まさか魔王の方が間違えたとか?」
「いやー……、いくら何でも間違えるって事はないと思うんだけどなぁ……。」
「…となると…一体どうして…?うーん……」
そうひそひそと3人で話していると、また熊蔵が足音一つもたてずに3人の方に近づいてきた。
「お客様?」
振り向いた3人は当然ながら再び驚いた。
「ん?ギャーッ!!神出鬼没ー!!」
「何もそんなに驚かれなくても。私は、ただ普通に近づいただけですよ?」
航は、即座に言い返した。
「だから、それが驚くんだってば……。
ところで熊蔵、今、体温はある?」
「いきなり何を言うんじゃ?失礼な奴じゃ。……ほら、体温はちゃんとあるぞ。嘘だと思うなら俺のおでこに触れてみろ。」
航は熊蔵の額に恐る恐る手をつけた。
「あ……本当だ。普通の体温だ……。」
「ほらみろ。……まさか、俺の事を幽霊とかゾンビだとでも思ってたのか?まったく……あっ、孝允君の聞いた事に答えてなかったな。」
「そうそう。」
「うーん……そうだな……別に蘇ったわけじゃないと思うんだけど…確か、この前妙な夢を見た直後から暫く気絶していたみたいなんだよな……
新聞の日付を見たら2日程経っていたし。」
「へぇー…………。」
この事を聞いてABEを除く皆はほぼ確信した。
「ABE君の話からして、やっぱり蘇ったって考えてもおかしくないんじゃない?」
「うん……。」
「でも、本当に気を失っていた可能性も考えられなくはないけどね。」
「おい。さっきからヒソヒソ話が多いぞ。みんな一体どうしたんだ?」
またもや、いつの間にかABEは5人が集まった所に来ていた。やはり、足音一つたてずに。
慌てながら、映明が弁明をする。
「い、いやいや、色々とみんなで相談とかをしているんだよ……。あまり他の人たちに知られたくないから、小声で話していているだけだってば。」
「ふぅーん……そうか。じゃあ当然、俺にも聞かれちゃあ困る話ってワケか……。まぁそれなら仕方がないか。」
何とかバレずに済んで航はホッとした。そして、思った。
(ふぅ……危なかったバイ。でも、熊蔵が意外に物分りがよくて良かったぁ……。)
すると、熊蔵がニッコリとしながら航の肩にポンと手を乗せてきた。
しかも、その手は戦慄いていた。
「ふふふふふ……航くーん、何か言ったかな♥」
「(げっ!聞こえてた?)……べ、別にわては何も言うてなかとよ。」
「そうか……ん?誰か来たみたいだな?」
熊蔵の言った事は別に嘘ではなかった。雄介が教室の黒板側の扉を開けて入ってきたのである。
「みんな、おっはよー!!」
「あ、おはよう。」
例の事情を知っている3人以外は、当然の事ながら全く不思議に思わず雄介にあいさつを返した。
しかし、『Mr.アルコールランプの魔王』と会った3人は、取り敢えずあいさつは返したが、
戸惑いの様子は隠せなかった。孝允と映明が熊蔵に見つからないように気を付けながら、
小声で航に話し掛ける。
「本当にこれは一体どうなっているんだろう……?魔王が蘇らせる人を間違えたってことは考えられなくなったけど、
熊蔵君が復活した理由が全く分からなくなっちゃったよね?」
「……確かに。どうやって奴は復活したんだろう?」
「さあー……俺っちには全然分からんちゃん。」
すると、熊蔵がまた3人で話をしているのに熊の第6感(熊感)で気付いたらしく、3人の方に向かって近寄って来た。すでに半ギレ状態の
表情で、しかも髪を束ねているゴムを外した『貞子』状態であったので、その恐ろしさ・おぞましさはこの上なかった。
「なあ、やっぱり何か俺に隠しているだろっ!!そうやって俺を疎外するのなら、毎週ジャンプ・サンデー・マガジン見せないからな!」
それを聞いて一番慌てたのは航だった。
「何っ!それは困る。でも、本当に何も隠してないってば。……ねぇ、孝允君・映明君?」
「う、うん……隠してないよ。」
しかし、今回の熊蔵はなかなか引き下がらなかった。
「本当か……?どーも、あやしいな。」
「えっ……?」
熊蔵の追及はなかなか止みそうな気配を見せない。
思いきって話してしまった方がいいのか、それとも何とかして誤魔化した方がいいのか、
航・映明・孝允の3人は考え込んでしまった。
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