食品安全委員会御中

「米国・カナダの輸出プログラムにより管理された牛肉・内臓を摂取する場合と、我が国の牛に由来する牛肉・内臓を摂取する場合のリスクの同等性」に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見(パブリックコメント)


■はじめに

 貴委員会は食品のリスク評価を科学的に行なうもので、リスク管理機関の影響や政治的な配慮で評価が左右されてはならないとされていますが、BSE問題について、この間の国内管理措置見直し、米国産牛肉輸入再開に関する評価の経過を見ると、残念ながら、貴委員会の中立性が守られているとは必ずしも言えない状況にあるようにも感じられます。貴委員会が設置される契機となった「BSE問題に関する調査検討委員会報告」の精神に立ち返り、貴委員会が中立的な立場から評価を行なわれることを要望します。

 BSE問題については食の安全を評価する上で科学的な知見が十分とは言えない状況にあるように思われます。不確実性のあるデータに関しては不確実性のあるものとして扱うのが科学的な態度だと思います。しかし国内管理措置見直しの際、1989年のSBO規制があったにもかかわらず英国の食用にされた牛を100万頭として計算されたほか、仮定的な数値による計算で評価をされました。今回の評価でも特に輸出プログラムの遵守についての仮定的な前提をして評価しておられます。貴委員会が評価された結果は権威あるものとして受け取られますので、不確実なものは不確実なものとしての評価を行ない、評価結果の出し方に十分留意をお願いいたします。

 今回評価が行なわれた米国・カナダ産の牛に関しては、情報のほとんどが相手国政府から提出されたものであり、その検証が日本の行政によって行なわれていません。評価を受ける側の資料を鵜呑みにした評価と受け取られないよう、リスク管理機関に対して、事前のデータの検証と保証を求めるべきと考えます。

 今回の評価の終盤になって追加されたミンク脳症とCWDは大変重要な意味を持っていると考えます。答申案ではこれらの事項について専ら牛に対する侵入リスクを評価しておられますが、ミンク脳症についてはむしろ牛からの感染が疑われるものであり、米国各地でのCJD集団発生の疑いとともに、米国型BSEの疑いを評価する材料として扱うべきと考えます。米国型BSEが存在する場合、侵入リスクの評価もサーベイランスの結果も全く意味を失い、非常に大きなリスクが存在する可能性を否定できないと考えます。また国内対策の大幅な見直しも必要になると考えられるので、評価をお願い致します。


■1.米国型BSEの有無について評価してください

(1)ミンク脳症が米国型BSE由来でないか評価してください

 ミンク脳症問題はミンクから牛への感染リスクの問題というより、米国の牛の中に存在したTSEの汚染リスクとしてとらえる必要があると考えます。

 ミンク脳症の感染源について、非BSE型TSE(米国型BSE)の牛が給餌されたためと報告されていることは答申案に述べられている通りですが、ミンク脳症の試料を牛に与えた場合の症状がBSEの典型症状でなかったことが報告されていることは、米国型BSEの存在を強く疑わせるものです。この事実はまた、人に感染した場合の症状がvCJDと異なることも示唆し、牛におけるSRMの部位が異なること、現行検査方法が適用できない可能性を示唆するものと考えます。

(2)米国におけるCJD集団発生有無を検証してください

 米国においては数ヶ所でCJDの集団発生が伝えられています。米国政府は症状がvCJDと異なることなどを理由にCJDが偶然重なったものと説明していますが、米国型BSEが感染した場合は症状がvCJDと異なると考える方が自然であり、米国型BSEの存在を考慮に入れた集団発生の検証が必要と考えます。

 米国からは過去、生牛や肉骨粉などが輸入され、米国型BSEが存在する場合は、日本への侵入も考えられます。その場合は、SRMや検査方法などの国内管理措置を見直す必要が生ずる可能性があると考えます。またCJDサーベイランスも見直す必要が出ると考えられます。英国型BSEに関するリスクはこの間の対策によって相当程度低められてきたと考えられますが、もし米国型BSEが存在する場合は現行の対策で十分と言い切れず、依然として大きなリスクに暴露されている可能性があると考えられますので、ご検討をお願いいたします。


■2.リスクを再評価してください

(1)暴露・増幅リスクを再評価してください

 「BSEの暴露・増幅リスクシナリオ(モデル)」においてレンダリング過程で感染価が1/100に減少すると評価していますが、EFSAはGBR評価で米国のレンダリングでは常圧で処理されているでは感染価減少は少ないとしており、答申案は増幅リスクを著しく過小評価しているおそれがあると考えられます。暴露・増幅リスクの評価にあたっては、EFSAのGBR評価をレビューした上で行なうべきだと考えます。

 2004年2月に発表された国際専門家調査団報告に関しては、調査団々長のKihm博士を招聘して説明は受けているものの、報告をレビューすべきと考えます。調査団報告で勧告された飼料規制が実施されていないことなど、受け入れ状況を評価すべきと考えます。

 答申案では、米国・カナダの現在の飼料規制の下では一定の割合で交差汚染が起こる可能性が残るとしていますが、米国が発表している牛SRMの飼料利用禁止は、日本や欧州で行なわれている飼料規制と比較して非常に緩い規制です。その上、対象となるSRMは脳・脊髄のみで脊柱等が入っていないことは大きな問題と考えますので、評価を要望します。

 以上の点などを考慮に入れれば、暴露・増幅リスクは答申案で述べられているよりも高いように考えられますので、再評価を要望します。

(2)月齢によるリスクの違いを評価した方がよいと考えます

 米国における肉牛の出荷月齢が低いことはリスクの大小を左右する事項と考えられますが、答申案では月齢によるリスクの評価が明確にされていません。月齢のリスク評価は、感染後の牛の体内でのプリオンの動態に関する知見が必要で、限界はあると考えられますが、可能な範囲で評価した方がよいと考えます。なお、米国型BSEが存在する場合はプリオンの体内動態も違う可能性があるので評価が必要と考えます。

(3)と畜場でのリスク低減をできるだけ詳細に評価し、確実な検証を行なってください

 米国ではと畜場での検査は行なわれませんが、暴露・増幅リスクの高さと合わせて考慮しても、総合的なリスクが日本と大差ないとするためには、それを補いうる安全対策が米国でなされている必要があると考えます。米国のと畜場でのリスク低減の程度について、科学的なデータに基づいた評価を要望します。

 SRM除去については、SRMの範囲だけでなく、各々のSRMがどのように除去されるか、具体的な作業手順を明らかにして部位別に評価すべきと考えます。

 リスク管理機関は米国の施設への立ち入り検査を予定しているようですが、輸入される食肉でグリア細胞繊維性酸性蛋白(GFAP)の有無をモニタリングする等、水際での検証措置もリスク管理機関に要請してください。


■3.CWDの評価を早急に行なってください

 調査会でも議論されている通り、CWDは野生動物である鹿類に広く蔓延している特異なTSEであり、米国政府も重視して対策に当たっていると聞いております。野外の自然環境において水平感染をしており、拡大をしていることから、BSEなどよりも感染性が高いおそれもあり、北米産の農畜産物の安全性が懸念されるところです。また日本への侵入のおそれがないか、調査が必要と考えます。

 牛肉に関する答申とは別に、早急にCWDに関する情報の収集に努めて評価を行ない、安全の確保、侵入防止対策について、必要な勧告を行なってください。


■4.非発生国のリスク評価を早急に行なってください

 今回は米国・カナダのリスク評価を厚生労働省・農林水産省の諮問で行なっていますが、過去英国や米国等から肉骨粉等を輸入しており、EFSAのGBR評価が行なわれていない国から、牛関連食品が輸入されていることは問題であると考えます。早急に、厚生労働省・農林水産省に諮問を請求するか、独自にリスク評価を行なって必要な勧告を行なってください。


■5.リスクアナリシスの見直しをしてください

(1)リスク評価とリスク管理の関係を是正してください

 リスク管理機関は貴委員会で出されたリスク評価結果に、施策の実施可能性等を考慮して、できるだけ安全な対策を取るべきと考えますが、この間、貴委員会の答申に安全を考慮した上乗せはほとんど行なわれずにリスク管理措置が取られています。貴委員会は答申に当たって、評価に不確実性のあること等を明確にしてリスク管理機関に理解させ、リスク管理機関が不確実性を考慮して安全を見込んだ施策を取るよう要請するなど、予防原則の取入れを含むリスクアナリシスシステムの修正が必要と考えます。

(2)リスクコミュニケーションを抜本的に改善してください

 リスクコミュニケーションとは単に評価結果などを説明することではなく、消費者をはじめとした利害関係者の意見を聞き、反映できることは反映することを目的としています。とりわけBSE問題は科学的な不確実性が大きく、施策の検討のためには予防的な措置を取る観点が必要と考えられるので、リスクコミュニケーションが重要と考えます。しかしながら、この間のリスクコミュニケーションは貴委員会でもパブリックコメント等の意見を専門調査会で議論されることがほとんどなく、リスク管理機関でも利害関係者の声を積極的に取り入れる姿勢が感じられません。貴委員会が先頭に立ってリスクコミュニケーションのあり方を変えていただくことを要望します。


※個人的に出したものです。