ほん
響堂新・BSE禍はこれからが本番だ
本書では、輸入再停止と再々開に揺れる米国産牛肉をめぐる様々な問題点、国産牛に関する問題点、現在の狂牛病問題のポイントを的確に整理されていると思います。
ただ、若干間違っているのではないかと思われるところは、「全頭検査で安全」という誤った前提がと畜場対策を遅らせたという認識です。世に「全頭検査神話」などと言われるこの認識、この前、朝日に、ビデオジャーナリストの神保氏も似たようなことを書いていましたが、ちょっと違います。
検査・SRM・飼料という3点セットのいずれもが、これさえやれば完全などというものではなく、相補って安全性を高めている(リスクがゼロになっているとは誰も言っていない)というのは、最初から、多くの消費者団体とプリオン専門調査会の良識派の共通認識です。「全頭検査神話」は「SRMさえ取れば安全」という「SRM神話」を唱える親米外食業者及びその御用学者らが消費者団体に貼った誤ったレッテルという色彩の強いものなのです。
なるほど2001年のある時期、政府が全頭検査をうまく利用したという神保氏の指摘は事実でしょうが、政府当局者だって、検査の限界くらい知っていました(もしかしたら農水大臣あたりは知らなかったかも)。と畜場対策が遅れたのは「全頭検査で安全」という前提が原因でなく、厚労省のやる気が原因です。
「全頭検査神話」があったとすれば、マスコミの不十分な情報の中で生じた一部消費者の誤解と言うことになるでしょう。消費者団体は全頭検査が30ヶ月齢以上又は24ヶ月齢以上の検査よりも望ましいと言うことを主張してきましたが、それで絶対に安全だ、安心だ、と言ったことはありません。むしろ多くの消費者団体は、この間ずっと、と畜場対策の徹底を厚労省に求めています。
たとえ「全頭検査神話」が一部消費者の間に存在したとしても、一部検査でなく全頭検査をすべきであり、むしろ検査方法の技術的改善こそ急がなければならないのです。と畜場対策の遅れを以って全頭検査を貶める必要は全くありません。
本書の中身に戻れば、狂牛病が根絶困難な病気だ、という認識には私も賛成です。プリオンの安定性を考えると、糞などを介して環境に撒かれたプリオンは永く残るでしょう。プリオン病は自然発生もします。したがって、プリオン検査はより鋭敏で、かつより簡単にされた方法でずっとやらねばならないし、飼料規制もずっとやるべきだと思います。SRM規制については、いずれ緩和できるかも知れません。
タイトルになっている「禍はこれからが本番だ」ということに関しては、発症に関しては過去の感染が反映されて増加する可能性があると思いますが、過去を悔やんでも始まりません。過去のリスクの大きさに比べれば、現在及び将来のリスクははるかに小さいと言えます。ただしそのリスクが無視しうるものかはわかりません。飼料管理がいい加減で英国型とは別種の狂牛病の存在が否定できない米国については、特にリスクがわかりません。政府はそのリスクを正しく評価することが求められているし、消費者も選択の岐路に立たされていると言えるでしょう。
洋泉社新書 780円 おすすめ度★★★★★