更新日 : 2002年 2月1日
尺八雑話(6) 「着物(2)」
尺八をやっているお陰で、いろいろな家紋を見ることができる。
家紋にもいろいろあって、見るからに氏素性がよさそうなものや仕方ないから何かつけている程度のものまで実に様々である。
一度、背中の張り紋を床に落として、他の御仁から、「おおい、だれか紋が落ちてるぞ」と注意され、ぺたりと背中に張ってもらった思い出もある。
「丸に鷹の羽のぶっちがえ」や「二つ蝶々」だのは見ると高貴なお方ではないかと思い、一瞬、丁寧な挨拶をしてしまったりする。さすがに「三つ葉葵」と「菊のご紋」だけは、いまだかって楽屋でお目にかかったことはない。
小生の家紋はというと「丸に九枚笹」で、有る時期までは、高貴な家紋だと勝手に思い込んでいた。その、有る時期というのは、東映の時代劇を見た時である。お城の大広間に、登城した家臣全員が座っている。そこへ、大殿様がご出座される。一同、へへーと平伏する。背中の家紋がよく一望できる。前の方に座っている家臣の家紋は気のせいか、なんとなく高貴の香りがするものが多い。
と、其の時、自分の目は一番後ろに控えていた貧相な家臣の背中に、はっきりと「丸に九枚笹」があるのを目撃した。確か、赤穂浪士の映画だったと思うが、その侍が討ち入りに参加できたかどうかは確認し損ねた。また、その俳優のその後の消息も把握していない。
自分が尺八に自信を無くしたのはその時からである。
蛙