ク ロ マ グ ロ ( ほ ん ま ぐ ろ、 ま ぐ ろ、 し び )
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| クロマグロ(大西洋)の漁獲、山田重太郎氏所有 |
呼 び 名:
クロマグロはまぐろ類中、最も大きく、大西洋産では最大約3m、700kg(普通2.5m、300kg)の超大型のものもあって、日本ではこの大西洋産の大型のものをジャンボマグロ(大型マグロ、ニューヨークから成田空港までジャンボジェット機で運んだためその名がついたとの説有り)、アメリカではジャイアントツナ(巨大なまぐろ)と呼んでいる。
日本各地においてはクロマグロはマグロ、ホンマグロ、ホンマ、クロシビ、シビなどの呼び名がある。まぐろ類中、最も大きく(日本近海では13歳で約2.5m、約260kgに達する)、また、昔は日本のごく沿岸で最も多く獲れたこと、最高級魚であるといういことなどから、まぐろの中のまぐろ、まぐろの王様ということで、真のまぐろ=マグロ、本マグロと呼ばれるようになったのではなかろうか。クロマグロはまぐろ類中、背の部分が最も黒いために名付けられたと思われる。
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| ヨコワ(クロマグロの幼魚)(上柳昭治:マグロ、シリーズ海15、らくだ出版梶A1980) |
7.5kg位以下の幼魚はヨコワ、メジ、クロメジ、カキノタネなどと呼ばれている。ヨコワは、幼魚に輪のような淡色横縞(尻尾から頭の方を見て)があることからその名が付けられた。
超 高 級 魚 :刺身一切れ、数万円?
クロマグロはまぐろ類中、色艶、脂の乗り具合等含め最高級魚と言われ、金額的に最も高い。2001年(平成13年)1月、築地魚市場の初セリでは青森県・大間産の202kgのクロマグロに2020万円の史上最高値が付いたと言う。
刺身一切れにするとどの位の値段になるのだろうか。単純平均すると100g当たり1万円である。しかし、骨とか頭、皮、血合い肉等を除いて刺身用のサクにすると、その歩留まりは約50%である。とすると、刺身用は100g当たり2万円、1kg当たり20万円である。刺身一切れの重さは12〜13gが標準と言われているので、一切れの値段は約2千円となる。ただし、これは魚市場での卸値段である。
中間流通コスト、その利益等を加えると、まぐろの値段はスーパーとか魚屋さん(高すぎて扱えないでしょうが)で売られる時には、魚市場卸値の約3〜4倍ほどになるのではないかと思われるので、魚市場卸値が10g当たり1000円のこのクロマグロの刺身一切れは3000〜4000円になる。ただ、この値段は、平均的な値であり、その何倍もする腹部のトロ部分はどの位になるのだろうか。さらに、これらの超高級魚は高級料亭、鮨屋でしか消費されないため、そこでは利益も入れると幾ら位になるのだろうか。刺身一切れ、数万円? 多分、我々庶民には想像もつかない値段ではないだろうか。
これらの高級店では金額は幾ら高くても良いようである。金額よりも、お客が「大トロ」と注文した時、「ありません」とそれに応えられない方が余程重大らしい。”大トロ”がないと店の信用にかかわるとの話を聞いたことがある。
最近、脂の乗ったまぐろは一口にトロと片づけられているが、本当のトロは冬場の日本近海で、特に三陸沖で獲れるクロマグロの腹の部分である。
なお、2011年(平成23年)1月5日早朝、築地市場で行われた初競りで、北海道・戸井産のクロマグロ(342キロ)が1匹当たり3249万円で、上記、2001年の青森県大間産の同2020万円を大きく上回る史上最高値で競り落とされた。
ただし、単価は1キロ当たり9万5000円で、上記大間産の同10万円に及ばなかった。東京・銀座の高級すし店と中国などですしのチェーン店を営む香港の業者とが共同で購入して、半分ずつ分け合ったという。
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| クロマグロ(Collette,B.B. and C.E..Nauen,1983) |
産 卵、 回 遊 等 :
太平洋のクロマグロの産卵場は日本の南西諸島からフィリピン東方にかけての海域、日本海で、産卵は主として5〜7月に行われている。この他、資源量が多い年には伊豆諸島周辺でも産卵している。
主産卵場で発生した仔魚は7月後半に高知県沖で、8〜9月に20〜30cm(0.2〜0.5kg)になって、南日本沿岸域に出現、このころ、相模湾でも漁獲され、クロメジとして魚屋に出回ることがある。日本沿岸域を夏、北上、冬、南下、九州西岸から南岸沖で越冬、翌年の4〜6月に60〜70cm(5〜7kg)に成長する。まぐろ類中、最も沿岸に近づき、かっては沿岸の定置網でも漁獲され、江戸時代には東京湾にも分布していた。
1〜2年を日本沿岸域で南北移動を繰り返しながら過ごした後、彼ら1〜2年魚(40〜80cm)は北緯40°N付近の黒潮続流に乗って、北米沿岸、バハ・カルフォルニア沖に移動し、そこで3〜4年滞留する。
アメリカ、メキシコ等の国がこの60〜140cm(5〜50kg、1.5〜5才魚)のクロマグロを旋網で漁獲し、油漬け缶詰(ライトミート、キハダなど淡い褐色ないし桃色をした肉)を製造している。ホワイトミート缶詰(ビンナガのように白い肉)より安いが、小型のクロマグロは美味しいようで、缶詰工場の職員はこのクロマグロ缶を買うと言う。
このバハ・カリフォルニア沖でも南北移動を行い、3〜4年過ごした後、彼の地を離れ、再び太平洋を横断し、産卵のため日本近海を含む北西太平洋に回遊し、数年過ごす。成熟(160cm以上、80kg、6〜7才魚)に達すると、上記南西諸島からフィリピン東方にかけての主産卵場で産卵する。
大 西 洋 の ク ロ マ グ ロ :
産卵場は地中海、メキシコ湾の2カ所にある。前者の産卵盛期は6月中旬〜7月中旬である。体長200cm以上の大きなクロマグロが5〜6月ころから地中海にやって来る。産卵後の魚は体力回復のためすぐに、地中海を離れ、餌を求めて餌料の豊富な北の海へ北上し、夏にはノルウェー沖にまで移動している。幼魚は秋には地中海を出、次の産卵までカナリー諸島近海からノルウェー沖まで南北移動するようである。
メキシコ湾での産卵は2月頃から行われ、盛期は3〜4月である。産卵後の魚は同じく餌を求めてアメリカ大陸東岸を北東上し、カナダのハリファックス沖、グランドバンクを経て、夏にはノルウェー沖に達している。
このニューヨークからハリファックス沖にかけての海域では、昔からクロマグロを対象にしたスポーツフィッシングが盛んであった。現地では刺身を食べないため、ほとんど捨てていた。1970年代始め、それに注目した日本人が
カナダのファリファックス沖で沿岸漁業者に同種を漁獲させ、日本へ飛行機で運び、高級品として取引することに成功させた。鮮度を保ち、高く売るため、品質保持は勿論だが、日本へ送る時間は、東京、築地魚市場のセリの時間に合わせ、カナダ〜ニュヨーク、東京へと運搬に要する時間を逆算して決めたと言う。前述した通り、成田空港までジャンボジェット機で運んだためジャンボマグロの名がついたとの説が有る。
蓄 養 :
産卵後のクロマグロは、体力消耗のため、全体的に肉が落ち、特に腰から尻尾の部分がげっそりと痩せてしまう。別名、らっきょうのように細くなるので、らっきょうまぐろと呼ばれている。肉色はどす黒く、脂もないなど品質が悪く、食べられたものではないため、漁獲し、売っても二束三文にしかならない。
| トルコにおいて蓄養されたクロマグロ,2002、瀬戸武蔵氏提供 |
しかし、そこに目をつけたのが日本の商社、漁業会社などである。彼らは、1970年代中頃からカナダのセント・マーガレット湾(大西洋側)、地中海などで、この産卵後の数百キロのクロマグロを定置網、旋網(まきあみ)、曳き縄等で漁獲し、大きな生け簀に入れ、いわし、さば等の餌をたっぷり与え、蓄養し、太らせ、脂の乗ったところで、日本に空輸した。
その後、地中海では、1988年からモロッコ定置網で漁獲されたクロマグロが蓄養されるようになり、現在では、スペイン、トルコ、クロアチア等でも定置網、旋網等で漁獲、蓄養されている。ここでは、200kgもの大型マグロが多い。
また、メキシコの太平洋岸では,1998年から10〜25kgの魚が4〜9月に漁獲、蓄養され、10月下旬頃から日本へ出荷され、2001年には1,000トンが生産された。その後、地中海に比べ、より日本に近く、航空運送料が安いことや漁獲魚の大きさ等の有利性のため、メキシコ沖でのクロマグロ蓄養への注目度が高くなって来た。
日本では現在(2002年)、沖縄・長崎・愛媛・和歌山などで、その年生まれの25cm(300g内外)の小型魚を引き縄で、オーストラリアでは1m以下のミナミマグロを漁獲、蓄養している。日本のクロマグロは小型魚を漁獲しているため、市場に出すまで2〜3年かかるが、外国産クロマグロ、ミナミマグロはそれより大きい魚を漁獲しているので数ヶ月で出荷出来るという利点がある。ミナミマグロの蓄養については、ミナミマグロの項に記述してある。
クロマグロ、ミナミマグロの2000年の蓄養生産量は15,000トン、同漁獲量は24,000トンである。同年の日本の刺身まぐろ需要量は約53万トンであったので、前者の蓄養量は3%、後者は4.5%、合計7.5%である。今年(2002年)は3万トンに達するようである。かっては、日本への搬入は空輸による鮮魚だけであったが、近年は、凍結されたものも持ち運ばれるようになった。
蓄 養、 養 殖 と は ? 言 葉 の 説 明 :
蓄養とは、魚介類を短期間(数日から数ヶ月)、いけす、池などの一定の場所で飼育すること。代表的なものとして、上記、クロマグロやカツオ1本釣りの時、生き餌として使う、いわしの蓄養がある。
養殖とは、魚介類を人工的に発生させ、飼育し、その数、量を増やしたり、質の向上を図ること。代表的なものにタイやあわびなどがある。はまち養殖は人工的に発生させた卵から育てるのではなく、海に流れている『流れ藻』に付いている『もじゃこ』と呼ばれるぶりの子供を獲り、飼育し、大きく育てている。また、ウナギ養殖は、川で子供のシラスウナギをとり、飼育している。したがって、はまち、うなぎ養殖は、人工的に発生させたものでないので、本来は蓄養であるが、子供の頃から長期間育てるためか、養殖と呼ばれている。
しかしながら、2000年7月からJAS法に基づき、給餌した水産物は全て養殖と表記されることになった。
近畿大学・水産研究所でクロマグロの完全養殖に成功・世界初の快挙
今年(2002年)の夏、近畿大学水産研究所大島実験場(和歌山県串本町)において、クロマグロの完全養殖が成功した。完全養殖とは生け簀で生まれ、育った魚が再び産卵することで、クロマグロでは世界初の快挙である。この完全養殖により量産されるようになれば、クロマグロは養殖と蓄養の両方が行われるようになる。
蓄 養 殖 の 問 題 点 等
蓄養はある程度大きくなった魚を獲り、短期間の飼育で市場に上場出来るが、海にいる魚を獲るので、天然の資源量を減少させることはあっても増加にはつながらない。養殖は、人工種苗を安定的に大量入手出来るため、天然資源を減少させることはないが、市場に出すまで数年かかる。これら蓄養殖ものは安定的に供給出来る、価格安定、品質の安定等の利点はあるが、私にとっては、歯応えが物足りない点から、天然物の方が好きである。2002年には蓄養量は3万トンに達し、自然界からの漁獲量を数千トン上回ると想像されるが、今後、蓄養量がさらに増加すればまぐろ類の価格に影響し、まぐろ漁業の経営に大きな影響を与えることも考えられる(2002年10月、2005年4月一部改正)。