サウンドメイキングforライブ

ステージ向きサウンドセッティング
ギターという楽器は一本ずつ全く違った音色を持ち、善くも悪くもキャラクターを持っています。例えば柔らかい音、硬い音、太い音などなど。レコーディングの場合は「好みの音」にチューニングすれば良いのですが、ライブではギターをステージで使う為、スピーカーに負担をかけずにより良い音を出す為のセッティングをしなくてはなりません。ではどんな事にこだわれば良いのでしょうか?アコースフィアの2005年冬のセッティングを例に考察してみたいと思います。

ポイントはフラットなチューニング
前回までのアコースフィアのギターの音色の設定は「好みの音色に近付ける」というものでした。奥沢のL-5はTuck Andress氏(Taking The Longway Homeを参照)フサウンドに、w清水のWechterはWolfgang Muthpiel氏のサウンドに近付ける為にCDを参照しながら音色を設定していきました。この場合好みの音色を作るということを主体にしたので、かなり極端なカット&ブーストを行った為に波形が不自然になり、結果特定の周波数が大きくなってしまい、音量が小さい状態でもオーバーロードを起こし、スピーカーが異常振動してしまう状態になってました。対策としてスピーカーの再生音量を下げるという事をしていましたが、これではスピーカーの持つ性能をフルに引き出す事はできないので、十分な音量を稼ぐ為に更に出力の大きいスピーカーを必要とするという悪循環を生み出していました。これを回避する正しいコンセプトは、ギターの音色をできるだけフラットなEQにして、全ての周波数が同じように再生されるようにすると事です。好みの音色にする以前にまずはギターの鳴りを整理する必要があるんです。

フラットなチューニングとは?
ひとえに「フラットなチューニング」といっても、エンジニアのような鋭い耳を持っていないと、なにがフラットな状態なのか分かりません。わかりやすくするにはやはり参照用のCDを使う事をお勧めします。もうひとつのやり方は、出力の小さめのスピーカー(安物)を用意して、そのスピーカーの音量を最大にしてCDとギターを再生。CDのサウンドは大きく出ていてもオーバーロードしないはずです。これはマスタリングでコンプなどを使ってダイナミズムを調整済みだからなんですが、それを聞きながら自分のギターの音量も同じくらいにして同じスピーカーから再生。バリバリいってオーバーロードすると思いますので、そこからEQをいろいろ試してみて音量を変えないでEQでオーバーロードを取り除くよう努力してみてください。一番ノイズが少ない状態にできたらそれがフラットな状態に近いはずです。

チューニング実際の手順
ギターはいろんな響き方をするので、一概にこうであるとは言えませんが、それでも大抵のギターは中低音域の周波数が高音域に比べて多く出ています。それが常識化しているので、ライブハウスのエンジニアの多くはアコギを入力するチャンネルに習慣のようにハイパスフィルターをかけます。妥当で安全な判断ですが、問題のある周波数を見つける事ができればハイパスを使わないで豊かな低音も出せると思うので、ハイパスを使う前にピンポイントの問題ある周波数を見つけるように努力してください。6弦開放のEから1弦の15フレットあたりまで単音で弾きながら大きく聞こえる音を探します。大きく聞こえる音がオーバーロードの原因と考えられますのでカットします。EQの基本は「カット」なので、「高音を大きくして欲しい」と思う前に「低音と中音域を小さくしてほしい」と考えるようにしてください。効果はほぼ同じです。逆にブーストしながら作ると暴れる音になってしまい、収拾がつかなくなりますので注意!
L-5のチューニング
僕のL-5はEMGのピックアップで集音しています。EMGのキャラクターでもありますが中音域が多く、高音域が詰まって聞こえます。それを踏まえてEQスタート。まずは問題ある中音域の周波数を探します。およそ320Hzと判明。-6db程度カット。これだけで高音域が伸びてきてドンシャリな雰囲気になってきました。続けて低音の調整。ベースラインをくっきり聞かせるにはある程度から下の周波数はいりません。出ていると曇って聞こえます。なのでハイパスを使いました。およそ80Hz以下はカット。これでスッキリしましたが低音のパンチが足りません。そこで150Hzあたりを+3dbブースト。これでほとんどいい感じなんですが、よりエキサイティングなトーンにするべく8kHzを+9dbブースト。EMGでなくバルトリーニのピックアップに交換すればこのEQはいらないはず。EQも本当はできるだけしない方がいいのです。
Wechterのチューニング
清水君のWechterのチューニング。こちらは基本的にメロディーを弾くのが専門なので、フラットというよりも積極的なEQが可能。まずくっきりした輪郭を作りたいのでハイパスをフルでオン!すぐにオーバーロードはおさまりましたが音色が痩せて聞こえます。なのでそこからオーバーロードするかしないかギリギリの場所までつまみを戻します。およそ80Hzの周波数に差し掛かったところに決めました。中音域もL-5と同じ320Hzの周波数が出過ぎ。箱モノのアコギに共通する問題周波数はここですかねぇ。-9dbカット。そしてシミチョウのギターならではのチューニングがここからスタート。ピックでガットギターを演奏する場合、ピックが弦に当たる瞬間のノイズ「ピッキングノイズ」が大きく出てしまい耳障りになるもの。それをカットしなくてはなりません。なので高音域をカット。8kHzを-6dbくらい削りました。でもあまりカットすると抜けが悪い音になり、良くいえば柔らかくて太い音なんですが、悪くいえば抜けない目立たない音になってしまうのですよね。この辺はサジ加減が難しいのですが好みの問題もあるのでなんとも言えませんね。左の写真が完成したEQです

ダイナミズム・トリートメントよりEQ!
オーバーロードを出さないようにするには他にもコンプレッサーを使う方法、レベラー&リミッターを使う方法など、ダイナミズム系のエフェクターを利用する手があります。これが最も安全な方法なんですが、できればEQで解決したいものです。本質的な問題はEQ にある訳ですからまずそれを解決すれば、更に良い形でダイナミズム系のエフェクトを使用する事ができるはずです。コンプはかけ過ぎると音色が自然な感じではなくなっていきますし、高音も詰まってきます。何より演奏時に音のツブが揃い過ぎてしまうとダイナミックな演奏ができなくなってしまいます。そういう意味ではコンプよりリミッターの方がお勧めな機材ですね。Tuck&PattiのおふたりはAphex社のCompellorというコンプ&リミッターを使っています。アコースフィアも近日導入予定なので使い心地などおって掲載しますね。

フラット vs 好みの音
フラットにチューニングできたからといって、それが自分の好きな音色でないかもしれません。何を優先するかは本人の判断になります。物事は必ず相反する側面がありますよね。好みの音にすればバランスが悪い音になる可能性があり、その結果スピーカーに負担がかかって良い音が出ない、となるわけですが、バランスが悪いまま大きい音を出そうと思えば1000Wのスピーカーを借りてくれば解決します。まあこのように解決の方法も人それぞれ。何が正しいというのはありません。ですが好みの音色に進む前に、まずギターの音をしっかり把握し、フラットにチューニングしてから模索してみたほうが、より安全でいい音に巡り合えるはずだと思います。

from Acousphere Shigeyuki Okuzawa


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ジョー・パス(Joe Pass)のソロギター分析 Pat Metheny:Third Windアドリブを弾く Pat Metheny:Have You Heardメロディを弾く Pat Metheny:パット式トリル Pat Metheny:ワイド・インポジション Wolfgang Muthspiel:Hands楽譜1 Wolfgang Muthspiel:Hands楽譜2
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