![]()
私は、大物を釣り上げたとき、いつもキョロキョロと周りを見渡したくなる。 それは嬉しくて、誰かに見てもらいたい心境になるからである。
しかし、自慢したい相手が居ないことが分かると、一人でニヤニヤするのがいつものことであった。 その魚が、自己更新の大物であれば、これを魚拓にして残したい気持ちになる。
さる夏、尺以上の大物の期待がもてる、新潟県の実川にでかけた。源流近くでも水量は多く、谷も深く、超一級の険しさで知られた渓流である。 ここのイワナは、釣れれば大きい。ビール瓶のように丸々と太っているわりに頭が小いさく、独特の魚体をしている。これを何とか魚拓にしようと、帰宅後さっそく準備に取りかかった。
家の縁側で、二、三匹の岩魚を選び出し並べてから、墨をすり始めた。丁度そのとき玄関のチャイムが鳴った。来客のようだ。
私は、二十分ほど接客してから、作業の続きを始めようと縁側に戻った。しかし、目の前から魚が一匹消えているではないか、岩魚が逃げるはずも無いと思いながらも、周りを探して見たたが、やっぱり無かった。すっかり考え込んでしまった。
このとき、家の庭を一匹のニャン公がゆっくりと横切って行った。
「満足だわニャン」 と、いわんばかりに舌なめずりしながら去っていった。それも、よりによって一番大きいのをもっていったじゃ〜ニャンか・・・
「ワシはおぬしに食わせるために釣ってきたのでないっ! これじゃ「ネコに大判 」 シク〜ッ!!
![]()
人や動物に張り付き、血を吸う山ヒルが全国的に、生息している山岳は結構ある。
神奈川県の丹沢山塊でも、1000メートル以下の山では、あちらこちらと広く生息している。 当然ながら、釣行の時には十分に注意しての行動となる。
私がある日、山から帰って夕食を済ませた。その後、のんびりとテレビを見始めた時だった。 なにやら股下あたりがヒヤリと冷たいものを感じた。
「おかしいな、先ほどトイレにいったばかりなのに」
「それがしもそんな年になったのか・・」 と、ふと自分がオムツをした姿を頭をよぎった。
小は出そうにないが、とにかくトイレに行くことにした。パンツを下げてみると、なんということか、パンツ全体が真っ赤になっていた。この血だらけの下着を女房に見られたら、なんと言い訳しようかと思うと、頭の中は、もうパニックになってしまった。
取りあえずパンツを捨てることにした。
床下を見ると何かポトリと落ちたものがあった。それは、どうにも動けないほど血を吸った山ヒルだった。小指ほどの大きさになって、「もうこれ以上は無理」 と言わんばかりに動けぬほど吸っていた。
いつものことだが、ヒルに食われたら血は中々止まらないのが特徴だ。 なぜか、原因がヒルであったことがふしぎとホッとしたのだった。
![]()
しんまい
渓流釣りがはじめての、小宮という新米を連れて山梨県の渓流へ出かけることになった。
清流極めるこの川は、富士山を源にするアマゴの川である。 天気も良く、抜けるような青空と五月の輝く新緑の中を釣り遡った。こういう日は比較的釣れないのが釣り人の常識である。
私は釣れないこともあって、小休止とばかり横になった。新緑の新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んだ。目前では新米の彼が真剣な顔つきで竿を出していた。 そこへ、他の釣り人が近かずいて来た。
「ホホ〜、これは大きいの〜、どこで釣りましたか?」
「エ・エェー・・あの〜あっちの方で」。
川の名も、なにも知らぬ彼には答えようが無かった。
「たいした腕や、わしなんかひどいもので丸坊主や」
丸坊主と聞いて、彼は、その人の頭に目をやったが長い髪がたれていて坊主には見えなかった。
「エサはミミズですか、イクラですか?」
「さぁ、ミミズは友達が買ってくれたので、いくらか分かりません」
「釣れたのは落ち込みですか、淵尻ですか?」
「フチジリは、シクジリました」
「合わせてからバラしたのですか?」
「ハイ、バラス前に逃げられました」。
会話はトンチンカンである。無理もない、彼にとってはじめての釣りで、釣り人の使う用語など分かるはずも無いのであった。
![]()
ガケ崩れは運がいい
山梨県西八代郡の渓流に出かけようと友に電話をした。 待ってましたとばかり、二つ返事の
OK が返ってきた。
現地は、迂回路の無い一本道の山間に、大炊平という部落あった。この谷間を流れているのが栃代川である。
この日釣りを終えて、帰りは夕刻になっていた。 部落付近まで戻ったところ、大勢の人だかりがあった。近ずいてみると、岩が崩落して、道路を完全にふさいでいると言うのであった。
どうやら道が寸断され人も車も通れないようだ。帰るに帰れず周りもだんだんと暗くなっていた。道が修復するのは、翌日の午後になるとのことであった。
私は、近くにいた、一見同年輩と思われる地元の人に、どこかに泊まるところがないかと尋ねてみた。
「宿はないし、今夜は通れねえ、良ければ私のうちに泊まりなさい」 と思いもよらない言葉が返ってきた。 彼は近くに住む、大工のTさん。地元では釣りキチでチョット知られた人らしい。
今夜は、お言葉に甘んじることになった。おまけに、部落のお祭りの日で、テーブルにはご馳走がいっぱい並んでいるのであった。 運が悪いと思っていたのが、急に「運がいいんだ」 と思えてきた。 当然、その夜は、遅くまでキチどうしの釣り談義になった。どうやら、彼がよく大物を上げる場所へ案内してくれることになった。
翌日、奥さんに弁当を作っていただき、夜明け前から釣り始めてた。
間もないころ「マ・マムシ!」と、思わず叫んだ。 なんと足元に、蛇がいるので、びっくりした。私はもともと蛇と金儲けは苦手だ、(マムシノオレモニンゲンハキライダ・・・)
しかも、こいつは只者ではない正真正銘のマムシであった。
「待て!」
Tさんは、とっさに小石を拾いマムシに投げつけた。するとマムシは危険を察知したのか、今にも飛び掛ろうと鎌首を立てて警戒して、微動だもしなくなった。 それから、近くにある木の棒と籐ヅルようなものを探し輪を作りマムシの首に引掛けて、あっという間に生け捕りにしてしまった。 左手には、くくりつけたマムシ棒を持ち、右手には釣り竿を持ち、何事もなかったかのように釣りはじめたのだった。
私はその後、釣りに集中できず結局はあまり釣れなかった。 帰りにTさんは、釣れなかった代わりにと、家の冷蔵庫から前日釣った31cmの大物を含めたアマゴ19尾を全部お土産にと差し出してくれた。
![]()
こわ〜い、はなし
釣りは、朝の太陽が昇る前が良く釣れる。したがって、釣り人は夜明け前に入渓することが多く、前夜からキャンプするもある。
そこは、山奥の人里離れたところであれば、車の騒音や街中の雑踏音などは聞こえてこない。
この日の夜、テントを渓流の近くに張り、シュラフの中にもぐりこむと渓流のリズムカルな水音だけが聞こえてくる、静寂の世界であった。
渓流の水音は、子供が騒いでいる声。コソコソと人が話している声。時々大笑いする声。太鼓をたたいているようにも聞こえる音など等。気にすればするほど、眠れなくなってくる。
月も出ない山の中は、一寸先も見えないほど真っ暗闇になる。なれない人にとっては恐怖の暗黒ともいえことだろう。
そんな夜は<大なり小なり>が模様した時が困るのである。 外はまっ暗闇、ついテントの入り口で用を足してしまうことになる。
経験豊富な渓流マンのあなたは、どうでしたか。自分のオデコに手を当て思い出してください・・・?
どうやら、身に覚えがあるようで、苦笑いしているようですね。
![]()
夏の渓流は、蚊やブヨに悩まされることが多い。特に風のないムシムシする日は多く発生する。 よくあることなので、私はいつも虫除けスプレーを持ち歩いている。
その日の夜は、予定通り寝泊まりのテントを張った。だんだんと酒と疲れなどで眠くなてきた。さて、寝ようとランタンを消して横になった。
この静けさの中で「ブーン」という音とともに顔の前を蚊が横切った。テントの中に数匹入り込んでいる。窓をあけ、みんなで新聞紙やタオルなどでバタバタが始まった。しかも、だんだんと大騒動になってきた。眠かったはずが、すっかり目も覚めてしまった。
それでも中にまだ蚊が数匹いる。そこで思いついたのが虫除けスプレーであった。
「もっと早く気がつけば良かったのに」
「おぬしは頭がいい」。
などといいながら、テントの中へ丁寧に満遍なくスプレーした。
しかし、そのあとがいけなかった。テント内はとても目も開けられない状況になってしまった。呼吸も苦しくなった。仕方がなく外に出て待つことにした。
「誰だ!こんなこと考えたのは」。
寝られるどころか、すっかり目も冴え、蚊を出すつもりが人間の出るハメになってしまった。
![]()
三人で福島、吾妻山麓を流れる天戸川の源流帯あたりで、釣りのキャンプを張った。
翌朝、入渓してまもなく支流と思われる二股の合流点に出た。右と左からいい水量で流れてきている。さっそく、地図を出して確認してみた。 しかし、はじめてのこの沢はよく分からなかった。渓相もよさそうだし、それではと三人は二手に分かれて別行動することにした。 テント場までの帰り時間を決め、食料品を分けあって、ザックに入れ替えた。私は支流と思われるほうへ一人で釣り進むことになった。
「ケガするな!」
「クマに気を付けて」。 などといって別れた。
100メートルほど行ったときだろうか、ふと前を見ると、先行の釣り人らしき二人がいるのだった。
「ついてないな、人のいる方を選ぶなんて」。
私はガックリ肩を落とし、まずは一服とそこへ座り込んで、しばらく相手の様子を見ることにした。 しかし、様子が違う。どこかで見たような釣り人のようであった。
「ちわ〜」。 と声をかけ近寄ってみた。
すると、なんと先ほど別れたはずの仲間二人だった。つまり、支流と思っていたのは、樹木のある中州を挟んで枝分れた沢が上流で一つの流れになっていたのであった。
先ほど、別れたときの挨拶は一体何だったのか。いつも、魚の殺生ばかりしているのでキツネかタヌキにでもだまされたかと思わず顔をつねってしまった。ホント!
![]()
2004/8/22 更新 暑い夏の日の出来事
今年の夏は、とくに暑い日が多いようです。この暑さを逃れるように、どこか涼しい温泉場を求めて、家内の友達と三人で奥日光へ出かけた。
思いの通り、宿での夜は涼しく快適であった。こちらではどこの家でも、ほとんどエアコン使われないと聞いている。
その夜、私はタバコの持ち合わせが切れてしまった。散歩をかねて外の店へ買いに出かけることにした。外に出ると、まだ開いている小さな店に、おばあさんが座っていた。ショーケースの上には縦横60センチほどのガラスケースと中にタバコが入っていた。
「マイルドセブン一個ください」
「ハイ、お客さん! これに住所と名前を書いてください」
下からかなり使い込んだ感じのノートと鉛筆を差し出した。私は一瞬、このおばあさんは目が悪いのかと思った。若く見られるのは嬉しいことだが、未成年者がタバコを買いに来たと見たのだろうか。自慢するほどの顔は持ちあわせていないが、日焼け顔を前に突き出して見せた。
「年は60を越えていますけど」
「でも書いてください」
どうも、おばあさんは本気らしく、書かないとタバコを売ってくれる気配がない。
「現金で一個だけなんですけど」
「タバコを買う人はみんなに書いていただいてますのでお願いします」
聞いてみると、ノートにはたくさん住所が書いてあった。しかも全国区にわたっていた。たった一個買うだけなのに、と心の中で思いながらも住所、名前を書き、やっと買うことができた。宿へ戻ってから一部始終を家内と友人に話した。
「あなたは、面白い人ね」と軽く一蹴された。作り話でもしたかのように、まるで信用してくれない。本当だということを一生懸命説明するが、言えば言うほどケラケラ笑っている。結局、翌日一緒に行き、おばあさんの前で実践することになった。
翌朝になり、やっと疑いを晴ら晴らすことができたのだった。もしかしたら、この町の条例などでタバコは手渡し販売するように決まっているのではないのだろうか。帰りの車の中で「きっとそうだよ」家内も同調した。おのれも納得してうなずいた。
本当にあった奥日光、夏の日の出来事。。。
![]()
2003/8/15 更新 初めて知りました
渓流に住む魚、イワナは山岳の水温の低い渓流に生息している。 そこは、人里離れた山奥が多い。従って、釣りで遠出するときはいつもテントを持って行くことにしている。
八月の日、福島県南会津の支流で釣りをしたときのこと、この日は、もう夕刻になっていた。 今夜は、人家もない山ん中で仲間とテントを張り、焼肉で一杯、という楽しみがあった。 しかし、このあたりにテントを張るには、少しばかりの空き地がほしかった。
周りを見ると近くで畑仕事をしている男性がいた。 今日の作業を終えたらしく、軽トラに荷物を載せ、帰り支度をしているところであった。 駐車していた軽トラの後地は、テントを張るには絶好の場所であった。 私は、今夜ここにテントを張りたいが、この場所を借りたいとの趣旨を男性にお願いした。
「そりゃ〜いいが、だがなぁー おねげぇがあるだよ」
「はぁ・・・」
「この先の林の中にな〜、おらんとこのシイタケが作ってあるでな〜」
「はぁ・・・」
「ぜったいに取らねぇでけれ」
「○×?・・・ハ・ハイ」。
どうやら、都会から来る釣り人などは地元の住民にとって、決してありがたい客ではないらしい。
「ではくれぐれもたのんだぞい!」 と、言い残し彼はそそくさと荷物をまとめ、家路に帰っていった。
![]()
アブは臭いに敏感?
6〜7月にかけて会津の渓流では、よくアブに悩まされる。 農家の牛や馬にまとわりつく、あのアブと同種のようだが、よく分からない。 人も刺すこともあるのでやっかいだ。山の中では、主に湿地のあるところで生活し繁殖している。谷では、このアブの大群に出会うことがある。
体長は15oほど、目が大きくグリーン色しているから、仲間では外人アブと呼んでいる。 刺されると痛い、太い注射針でも刺されたように痛い。
7月のとき、奥会津の山道を三人で歩いていた。 先頭を歩いている者のお尻にアブが5、6匹、ついたり離れたりしていた。まとわりつきながらどこまでもついて来た。
三人で歩いているが、先頭の者にはついてこない。それではと歩く順番を変えてみることにした。でも二番目、三番目を歩いてもやっぱり彼のお尻だけにアブは付いてくる。しかも次第に数が増えてきているではないか。ついに彼は悲鳴を上げ走り出した。
いったいこれは何を意味しているのだろうか、いまだに謎である。
![]()
夏、渓流釣り初めてのYを連れて丹沢へ出かけた。
釣り支度を整え、林道から目的の釣り場へと降りた。 どこの渓流でも、そうであるように、渡渉(川渡り)しなければ上流へは行けない場所が多い。
また、夏になると、石にコケや、ぬめりなどがつき滑りやすくなっている。
「小さい石でも上へ乗ってはいかんよ、滑るからな、石と石の間へ足を入れ一歩一歩集中しながら歩け」 Yには、川を渡る寸前にしっかりと教えた。
「分かった?」
「了解!了解!」。
ふたつ返事で納得してくれた。 しかし、五・六歩歩き始めたころ、突然うしろでバチャーン!! と激しい音がした。 振り返って見ると、彼は川にハマってずぶ濡れになっていた。顔は今にも泣き出しそうだった。
たった今、しっかりと注意したのに、あの「了解!」は何だったのん?・・・



山の恵み


MyLink
