「七騎落」と柳生武芸帳
五味康祐の『柳生武芸帳』に次のようなシーンがあります。
六十過ぎと思える老武士であった。気儘頭巾を覆っている。それが事もあろうに謡曲『七騎落』を口ずさみながら新九郎に寄って
行った。
一瞬前と打って変り、新九郎は畏怖に愕然と立竦んだ。『七騎落』は、源頼朝が石橋山の戦いに敗れ、安房上総へ落ちのびよう
とした時に、乗船に当って主従八騎となったが、八騎は祖父為義が都落の折りと同じ数であるのを不吉と忌み嫌った、そこで誰か
一人を取り残すこととなり、遂に土肥次郎実平の子遠平を上陸させて七騎落したという曲である。
(文春文庫版、下巻182ページ)
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