上の写真は、平家の武将斎藤実盛の首洗い池(石川県加賀市手塚町)です。彼を主人公にした能が『実盛』です。遊行上人が説法をしていると老人が現れます。この老人は上人にだけ見えて、他人からは見えません。上人は不思議に思い人払いをすると、老人は自分が斎藤実盛の幽霊であることを明かして消えます。やがて実盛の幽霊が戦場の姿で現れ篠原の合戦のことを語ります。倶利伽羅峠の戦いで平家を破った木曽義仲がさらに平家を追撃するのが篠原の戦いです。その戦いで実盛は平家方の武者として討ち死にしたのです。幽霊は語ります。源氏方の手塚太郎光盛が、錦の直垂を着た関東なまりの武者の首を討ちとりました。義仲は斎藤実盛に違いないと思いますが、すでに60余歳(『平家物語』原文では70余歳)の実盛は鬢も鬚も白いはずなのに黒いことに不審を覚えます。実盛を知っている樋口次郎兼光は、実盛が戦のときは鬢鬚を墨で染めて若やいで死のうといっていたことを述べ、近くの池で首を洗いしました。すると墨が落ちて白髪が現れました。また、実盛の故郷が越前なので、「故郷へは錦を着て帰る」という中国の故事にちなみ、平宗盛の許可を特別に得て実盛は錦の直垂を着ていました。実盛の霊は、手塚との合戦のありさまを演じ、回向をたのんで消えてゆきます。
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