須磨の浦を訪ねた旅の僧は、いわくありげな1本の松をみつけます。所の者にいわれを問うと、松風・村雨というふたりの海女の旧跡だとのことです。僧が読経して弔っているとやがて日も暮れ、月夜の浜辺にふたりの海女が潮汲車を引いて現れます。ふたりは松風・村雨姉妹の幽霊でした。かつて在原行平が須磨に左遷されていたとき、ふたりは彼に愛されたのです。松風は、行平の形見の烏帽子・狩衣を身につけると、妄執にとらわれ、松を行平に見立ててそれに寄り添い、恋慕の舞を舞います。やがてふたりは僧に回向を頼み消えてゆきます。これが能『松風』のストーリーです。能『松風』は、「熊野、松風に米の飯」という諺があるくらいで、いつ見ても飽きない、噛めば噛むほど味が出るとされ、『熊野』とともに、能の代表的作品といわれています。観阿弥の原作を世阿弥が改修した作品とされ、世阿弥の一連の夢幻能のうち初期のものです。『松風』の成功によって世阿弥は夢幻能のもつ可能性を自覚しました。『松風』ゆかりの地を訪ねてみましょう。
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