「黒塚」のストーリー 観世寺の前にある碑。「みちのくの安達ヶ原の黒塚に鬼こもれりと聞くはまことか」という平兼盛の歌が刻んであります。
那智の東光坊の阿闍梨祐慶ら一行が廻国行脚の途中奥州安達ヶ原に着きます。日が暮れたので、一軒の家に宿を乞います。そこには老女がいて、はじめは宿を断りましたが、祐慶らのたっての頼みに、一行を中に入れます。部屋の片隅に不思議な器具があるので祐慶らが訊ねると、これは自分のような賤女が営む枠かせ輪だといいます。彼女は、枠かせ輪で糸を繰りながら、今の生活の物憂さや人間のはかない命を嘆きます。やがて老女は、山へ薪をとりに行くといいます。そのとき、自分の閨のなかは見ないよう言い残します。祐慶らは不審に思い、なかをのぞくと、そこには人間の死骸が累々と重ねてありました。さては話に聞く鬼の住処かと一行は驚き一散に逃げ出します。見られたと知った老女は鬼女となって一行を追いかけます。祐慶らが懸命に祈ると、鬼女はついに負けて姿を消します。作者は金春禅竹とも世阿弥とも、あるいは不明ともいわれています。
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