フッ素化が何で虫歯の予防になるのか
         Water Fluoridation To Prevent Tooth Decay?
               John Yiamouyiannis, Ph・D(生化学)
                  翻訳・村上 徹(医学博士)
           初出・フッ素研究 第11号 pp6〜12(1991)

 このインターネット版には読者の便利のために、初出した雑誌版にはないグラフや表が足されております。この原典はイアムイアニス博士の原著からとったものです。   村上 徹


概要
 アメリカ中から選抜された84地区に居住する5歳〜17歳の学童39,107人について、1986年から1987年にわたって国家機関(村上注−国立歯科学研究所のこと)の手で行われた調査結果を解析した。このデータは、合衆国情報公開法を介して入手したものである。
 これらの地域のうち、27地域は17年間以上もフッ素化されてきており(F)、30地域は全くフッ素化されたことのない地区であった(NF)。また、残りの27地域は,部分的にフッ素化されていたかフッ素化期間が17年以下であったかのどちらかの地区である(PF)。
 この3種類の地域の学童の永久歯の虫歯を保有する者の割合は、統計学的には、全く明らかな相違を示さなかった。しかし、5歳児の乳歯虫歯の発生率は、F地区の方がNF地区より明らかに低いことが分かった。
 また,最近の研究によれば,フッ素が遺伝子障害や発癌性を有することが特に強調されてきており、以上の研究結果およびフッ素化の顕在的潜在的害作用を勘案すれば,フッ索化が人間の「英知」の所産だとする推進派の主張はきわめて疑問である。

 歯科や公衆衛生の学者の間では.フッ素化が虫歯の発生を1/2〜1/3も抑制するという説が信奉されている(1,2)。しかし、近年になって広範囲にわたって行われたニュージーランドやカナダ、アメリカなどの調査によれば、フッ素化されていない地域の虫歯の発生率は、フッ素化されている地域と比較して,同様かそれより低い値であることが報告されているのである(3−6)。さらに、アメリカや世界各国で,過去25年以上にわたる非フッ素化地区の虫歯の発生率の減少は、フッ素化地区と同様なことが報告されている(7−9)。
 1986年から1987年にかけて,アメリカ国立歯科学研究所で訓練された歯料医師によって,全米各地域から選抜された84地域の5歳〜17歳の39,107人の学童の歯料検診が実施された。この調査で、フッ素化、非フッ素化をとわず、多数の地域の多数者の虫歯の罹患状況の比較が可能になった。

 フッ素化は永久歯の虫歯の発生率を滅少させるか

 これらの84地域を虫歯の発生率の多い順に並べてみても,F,NF地区との間に統計的に明らかな相違は認められない.健全歯の割合が多いグループの中のトップはフッ素化地区ではない。84地域のうち、虫歯の発生率の低い地区を順に1/4見てみると、9地区が非フッ素化、3地区が部分的フッ素化、9地区がフッ素化地区であった.また,その逆に高い地区1/4を見ると,5地区が非フッ素化(NF),10地区が部分的フッ素化(PF),6地区がフッ素化地区(F)であった。
  F地区NF地区とも、どの年代のグループをとっても、虫歯の発生率の平均値には統計的に明らかな相違は認められない。年齢別に標準化された学童1人あたりのDMFTの平均数は、F、PF、NF地区においてそれぞれ1.96、2.18、1.99であった。(表1を参照)。
 


                       表1

Table 1
The number of children examined and the average-age-adjusted DMFT, dft, and "caries-free" rates for 5- to 17-year olds in each of the 84 areas in the order of increasing age-adjusted DMFT rate. F refers to areas fluoridated before 1970; PF refers to areas which are only partially fluoridated; PF(x) refers to areas fluoridated in the year "x"; NF refers to areas that are not fluoridated.

Water    Area  No. DMFT   dft Caries-free
  NF Buhler, KS 543 1.229 0.810 44.7%
F El Paso, TX 451 1.321 0.777 43.5%
NF Brooklyn, CT 410 1.420 0.693 47.6%
F Richmond, VA 475 1.435 0.715 45.6%
F Ft. Scott, KS 491 1.442 0.774 38.2%
F Prince George, MD 443 1.491 0.539 48.0%
NF Cloverdale, OR 354 1.494 0.872 40.4%
PF(71) Alliance, OH 467 1.584 0.549 44.6%
NF Martin, Co., FL 440 1.587 0.677 41.0%
F Andrews, TX 455 1.588 0.893 35.8%
NF Coldspring, TX 406 1.589 1.144 33.8%
F Tulsa, OK 504 1.602 1.075 35.5%
NF Palm Beach, FL 476 1.613 0.896 34.5%
PF Hocomb, MO 558 1.628 0.883 40.3%
NF Kitsap, WA 564 1.635 0.769 42.9%
F St. Louis, MO 491 1.638 0.711 39.1%
PF (82) Houston, TX 488 1.662 0.819 41.8%
F Clarksville, IN 428 1.678 0.747 40.4%
NF Grand Island, NE 535 1.719 0.789 40.7%
F Ft. Stockton, TX 415 1.722 0.891 33.4%
NF San Antonio, TX 422 1.736 0.895 39.3%
F Cherry Creek, CO 441 1.757 0.727 36.5%
F Tuscaloosa, AL 475 1.809 0.963 32.0%
PF Marlon Co., FL 545 1.817 0.944 28.8%
F Cleveland, OH 486 1.819 0.715 39.9%
NF Allegany, MD 458 1.834 0.735 38.3%
PF (78) Norwood, MA 434 1.841 0.640 39.9%
F Alton, IL 511 1.859 0.843 37.6%
NF Shamokin, PA 462 1.861 1.023 32.2%
NF Lodi, CA 573 1.878 1.197 33.0%
PF Bullock Creek, MI 472 1.879 0.766 36.7%
PF (82) Marlboro, MA 386 1.885 0.613 40.8%
PF (81) Allen, TX 445 1.905 0.674 38.7%
F San Francisco, CA 456 1.908 1.031 36.3%
NF E. Orange, NJ 401 1.909 0.796 38.0%
PF (71/60) Lincoln/Sudbury, MA 436 1.923 0.758 37.8%
NF Conejo, CA 620 1.930 0.811 41.7%
NF Lakewood, NJ 450 1.933 0.698 38.0%
F New York City-2 336 1.953 0.812 34.9%
PF Bethel, WA 540 1.958 1.072 34.3%
F Beach Park, IL 518 1.970 0.878 35.2%
PF Rising Star, TX 370 1.971 0.909 28.7%
F Philipsburg, PA 499 1.983 0.982 33.2%
F Lanett, AL 503 1.994 0.978 31.9%
PF (82) Plainville, CT 436 2.006 0.795 39.3%
NF Wichita, KS 496 2.036 0.878 33.5%
NF Newark, NJ 494 2.038 0.869 35.9%
PF Knox Co., TN 530 2.056 1.152 31.3%
NF Los Angeles, CA 540 2.063 1.039 33.0%
F Pittsburgh, PA 415 2.064 0.781 34.1%
PF (70) Lincoln, NE 476 2.076 0.825 31.5%
NF Newton, KS 464 2.083 1.225 31.1%
PF Lakeshore, MI 486 2.088 0.781 32.6%
NF New Paltz, NY 350 2.110 0.751 34.8%
F Bemidgl, MN 485 2.124 1.001 29.3%
NF Alpine, OR 397 2.133 0.974 34.7%
NF Canon City, CO 463 2.160 1.118 33.1%
NF Wyandank, NY 396 2.161 0.828 34.7%
NF Milbrook, NY 332 2.179 0.716 32.2%
NF Chowchilla, CA 551 2.181 1.073 33.0%
F New York City-1 503 2.190 0.627 37.9%
PF (82) Baltic, SD 487 2.193 0.974 27.8%
PF (71/74) Blue Hill, NE 480 2.218 0.855 29.6%
NF Crawford, PA 492 2.222 0.996 28.5%
PF (74) New Orleans, LA 459 2.251 0.953 27.4%
PF (70) Memphis, TN 464 2.253 0.763 33.1%
PF Madison Co., MS 493 2.259 1.455 26.4%
F Milwaukee, WI 478 2.349 0.909 32.1%
NF Tooele, UT 519 2.372 1.458 24.3%
NF Chicopee, MA 453 2.389 0.862 34.2%
PF Cambria, PA 532 2.460 1.039 27.1%
PF (75) Springfield, VT 444 2.489 0.838 32.1%
F Dearborne, MI 491 2.496 1.167 26.3%
F Maryville, TN 466 2.512 1.287 22.9%
PF (81) Taunton, MA 445 2.515 0.903 31.0%
F Greenville, MI 556 2.558 1.191 25.3%
PF Hart/Pentwater, MI 455 2.584 1.344 24.1%
F Philadelphia, PA 463 2.649 0.824 26.0%
PF Sup. Union #47, VT 487 2.710 0.907 28.1%
NF Cutler/Oroal, CA 528 2.796 1.742 19.2%
F Brown City, MI 512 2.972 1.229 22.5%
PF (83) Lawrence, MA 339 3.012 1.262 17.6%
NF State of Hawaii 293 3.294 1.375 23.9%
PF Concordia, Co., LA 424 3.767 1.508 12.4%
 

 F、NF地区における学童のDMFTの差が統計的に明らかではないという事実が、学童の移住や性差や人種差などによるものではないことを明確にするために、DMFTの算定に際して披検者の選定に次のような基準、すなわち、
1.その学童はそれまでの人生を同一の世帯で過ごした者で
2.白人の男女である
を設けた。
 F,NF地区とも,その地区から移動せずに居住しつづけた者の年齢別DMFTには、統計的に明らかな相違を全く認めることができないのである。
この事実に加えて,さらにF,NF地区ともそこに居住する学童の永久歯の僻蝕擢患率には,どの年代の者においても統計的に明らかな相違を何ら認めることができないのである.もし水道フッ素化が、



 DMFTで測定される虫歯を減らすものであるならば、フッ素化地区から移住せずに居住しつづけた学童の虫歯の発生率は,そうでない者より低い値を示して当然である。しかし白人の男女間では(この数は,研究対象者総数の約70%を占める)、どの年齢の場合でもDMFTに明らかな差異はなかったのである。(グラフを参照)





 
 この研究および,最近実施された別の大規模な研究(3−8)の結果は,F地区とNF地区とでは、その住民の虫歯の発生率に明らかな相違のないことを示しているものであり、過去25年間にわたって現れてきた虫歯の発生率の減少という現象は、フッ素化とは全く無関係であることを示しているものである。もし、これが真実なら、F、NF地区の虫歯の発生率の差異は、25年前においても明らかではなかったに違いない.
 
 最近の研究で「フッ素化地区では虫歯の発生が抑制されている」と主張しているのはBrunellaとCarlos(10)である。
 彼らはF地区のDMFS(村上注・DMFTではないことに注意。Tは歯の数を表すが、Sは歯の面を表し、1本あたり前歯で4、奥歯で5とする。すなわち、Tの合計数は一人あたり28であるが、Sでは128となる。)が17.7%低いことを報告している。しかし、我々がざっと吟味しただけで、この研究に用いられた統計材料の数値には,100%以上もの欠落があるのが分かる。
 合衆国の西部地方の、そこから移住せずにフッ素に曝露されつづけている住民のDMFS値は、彼らの報告より概ね2倍である。その上この研究は、調査対象となった84地域のそれぞれの虫歯の罹患率の報告においても間違っており、さらに虫歯の罹患率の地理的差異の調査においても、統計の解析(もしくはデータ配分、すなわち、標準備差とサンプル数)においても間違っている。とくに統計の解析は、F地区とNF地区とでみられる数値に著しく差異があるかどうかを決定するためには不可欠のものである(たとえ彼のデータが正確だとしても、DMFS値で17.7%という数値は、統計的にはF、NFグループの間に明らかな差異があることを示すものではない)。またF、NF(PFグループを含む)両地区とも、そこから移動せずに住み続けた者ではない約23,000人の学童が、より多くの虫歯の罹患率を示しているというデータの報告においてもまちがっており、また、F、NF地区における健全歯を有する児童の割合に関するデータの報告においても間違っている。とくに、後者についていえば、これらのデータはNF地区の学童の方が、より良好な歯料衛生の状態にあることを物語っているのかも知れないのである。
 
 水道をフッ素化していない先進国においても、近年になって虫歯が劇的に滅少しているのが知られているが、その原因が、「食物連鎖によるフッ素の摂取レベルの増大によるものだ」とする根拠は殆どない(7,9,11,12)。
 さらに最近の研究によれば.水道フッ素化の初期に行われた研究においても、フッ素化によって虫歯が減少したのではないことが示されている(7.13−15)。
 これらの事実により,「フッ素化により虫歯が滅少した」と主張した初期の研究の信顧性に関する深刻な疑問が湧き起こってさているのである(16)。
 
フッ素総持取量に関する研究によれば,非フッ秦化地区における住民の1日あたりの平均的フッ素摂取量は1〜2mgであり、フッ素化地区では3〜5mgである(17−18)。従って,かかる事実がある限り、「フッ素化非フッ素化両地区の虫歯の発生率の差異となる原因は、両地区のフッ素摂取量が以たような値となってきたために消失したのだ」と主張することは困難である。これに加えて、フッ素化地区の住民に歯牙フッ素症(訳者注一斑状歯のこと)がより多く見られるという事実は、フッ素化地区の住民の方が、非フッ素化地区の住民より、事実上より過量のフッ素に曝覆されていることを示しているのである(19−21)。

フッ素化は乳歯の虫歯を抑制するか

 F地区のFl(注1)から移住せずに暮した5、6、7歳の学童の乳歯鶴蝕の罹患率(dft)は、NF地区の者よりそれぞれ42%、18%、11%低く、とくに5歳児のFlのdftはNF群より明らかに低下している(P<0.002)。もし水道フッ素化が、dftで現わされる5歳児の虫歯を抑制するものであるならば、フッ素化地区から移住しないで過ごしている5歳児の虫歯の理。罹患率は、そうでない者より、低い値を示さなければならない。しかしこの現象は,この場合に認められるだけであり、5歳児に見られる著しい虫歯の減少は、2年後(村上注−7歳児のこと)には消失してしまうのである。
 最近になってBrunella(22)は、フッ素化された自治体にずっと暮らしていた子供のdfsが、フッ素化地区に1度も暮らしたことのない子供のそれより26%も低いとを報告した。この知見は我々のデータと整合する。
 フッ素は、歯の萌出を遅らせることにより、あたかも乳歯の虫歯を減少させているかのように見せかけているのかもしれない。5歳児を調べた研究では、歯の萌出遅れが虫歯の発生率にそのような差異をもたらす可能性があることが示されている(23)。

フッ素化にはどのような危険性があるか

 フッ素化された飲料水の中に含まれる程度のフッ素量によって、酵素機能が変化し遺伝子障害が生じることが示されている(24−26)。アメリカではフッ素化によって、1億2千万人以上の者が慢性中毒の危険にさらされており、4千万人の者が関節炎に、2千万人以上の者が「歯が変色する」という悪しき中毒に、また、およそ2百万人の者がフッ素によるアレルギーないしはアレルギー様症状を示している。アメリカ人でフッ素化により死亡している者の数は毎年3万5千人であり、毎年約1万人の者がフッ素化に起因するガンで死亡しているのである。
 1977年に.ディーン・バーク博士と私とが行ったフッ素化とガンの関連を示した疫学研究は、アメリカ議会のフルスケール(村上注一午前午後ぶっ通しで2日間)の公聴会の議題となった。この公聴会を通じて、合衆国公衆衛生局の官僚たちは、この研究緒果は、調査対象とした人口の年齢、人種、性別の変動によるものだと批判した。(そして、それらを修正して考慮すれば、ガンの死亡率の上で、フッ素化と関連する死亡率の特別の上昇は認められないとする彼らの研究結果を公表したのであった。
 しかし我々は、彼らが数学上の取り扱いの上で誤りを犯しており、〔ガンの死亡率を高める〕データを80−90%も除去して統計処理したものであることを明らかにすることができた。このような間違いや遺漏を是正してみると、たとい彼らの方法に従って統計をやり直してみても、フッ素化と関連して、毎年1万人あまりの人間がガンで死亡していることが明らかとなったのである(注2)。
 公聴会の席上では、さらに次の事実が暴露された。
すなわち、合衆国公衆萄生局の官僚たちは、彼らの意図的に数値を改竄した間違いだらけのデータを英国の統計学者たちに送付し、この学者たちはこの学者たちで、公衆衛生局の官僚にいわれたとおりに、彼ら自身の手でこれを公表し、あたかも、これがあくまで彼らの独自の研究を通じて合衆国公衆萄生局の官僚たちと同様な結論に到達したかのように偽装したのである.

 この公聴会の結果、議会は合衆国公衆衛生局に対し、実験でフッ素がガンをひき起こすかどうかを決定するために、公衆衝生局が指揮する動物実験の研究を命令した。この命令により、仝衆術生局はオハイオ州にあるパテレ記念研究所に依頼して、1つはマウス,1つはラットを用いる2つの研究を行った(注3)。 
 バテレ研究所病理部の主任であるジョン・D・トフト二世博士はマウスを用いる研究の方を担当した。1988年10月28日、1年間の研究結果の分析のちに、トフト博士は最終病理報告書を完成させた。
 その報告書の中の最も著明な知見は、フッ素添加水で飼育したオスとメスのマウスに、極めて稀なタイプの肝臓ガンであるへパトコランギオカルチノーマが発生していたことであった(注4)。79匹のオスのマウスの比較対照群(注5)には、そんなガンが発生しているのは全く認められなかった。使用したもっとも低い濃度である11ppmでは、50匹中のオスのマウスのうち、1匹だけに認められ、45ppmでは51匹中1匹、79ppmでは80匹中3匹に認められた。これらの結果が偶然起こる可能性は、2百万分の1である(注6,7)。
 これらの知見をより一層確かなものに思わせたのは、メスのマウスでの結果であろう。
この場合、比較対照群では80匹中1匹もヘパトコランギオカルチノーマが発生しなかったのに、11ppmでは52匹中1匹、45ppmでは0、79ppmでは80匹中3匹に発生した。
 1989年4月11日、バテレ研究所は、フッ素とオスメス両ラットの口腔偏平上皮ガンの発生に、.「量依存」の関係があるという研究結果を公表した。オスのラットでは80匹の比較対願群に1匹も発生しなかったのに、11ppmでは50匹中1匹、45ppmでは50匹中6匹、79ppmでは80匹中18匹も発生したのであった。
 口腔の偏平上皮細胞の異形成についての同様な結果は,プロクター&ギャンブル研究(P&G)でも得られている〔注8〕。
 さらに加えて,パテレ研究所のラットについての研究は、フッ素と腫瘍または口腔の偏平上皮ガンの発生が「量依存」の関孫にあることを示していた。比較対照群では、80匹のオスのラットのうちガンや乳頑腫が発生したものは皆無であったが、11ppmでは50匹中2匹、79ppmでは80匹中3匹に発生していたのである。
 この研究はさらに、メスのラットでは、口腔偏平上皮細胞の化生(村上注一十分に分化したある種の組織が、他の種の分化した組織へと異常に変化すること.化生は異形成とは対照的に後天的である)と腫瘍/ガンの関係が、「量依存」の関係であることを明らかにした。79匹のメスの比較対照群や50匹のメスの11ppm群では、ロ腔偏平上皮細胞の化生は全く認められなかったのに対し、45ppm群ではメス50匹のうち1匹に、79ppm群ではメス80匹のうち4匹に認められた。比較対府群では、偏平上皮ガン/乳頭腫が認められたのは80匹のメスのラットのうちに1匹だけであったが、11ppmでは50匹のメスのうち1匹、45ppmではメス50匹中2匹、75ppmではメス81匹中の3匹に認められた〔注9〕。
 オスのラットの中には、パテレ研究所の研究は、2つの高い濃度のフッ素を使用した実験群に限られてはいたものの、極めて稀なタイプのガンである骨肉腫の発生を認めた。80匹の比較対照群や50匹の11ppm群に(いずれもオス)では、この発生は全くなかったのにもかかわらず、45ppm群の50匹のオスでは1匹、79ppmの80匹のオスの中には4匹発生したのである.

腫瘍またはガンとフッ素との関係に関する他の動物実験

 1963年にセントルイス大学のヘルスコヴィツとノートン両博士は,果実蠅(fruitflies)を用いて,フッ素濃度を増やしていくに従って黒色腫の発生頻度が増加することを発見した(27)。1965年にオースチンにあるテキサス大学のテーラー博士夫妻は、飲料水中に含まれる1ppmのフッ素が、マウスの腫瘍の増殖の割合を25%も増加させることを発見した(28)。1984年には日本歯科大学の筒井教授と共同研究者たちが、フッ素に曝露させると、正常細胞がガン細胞に変化することを発見した(29)。1988年には、アーゴーン国立研究所の研究者たちが、筒井博士らが発見したフッ素の発ガン作用を確認し、さらに別の論文で、フッ素は他の化学物質の発癌性を増強することを発見している(30)。

遺伝子障害

 1982年に、ミズウリ大学の研究者らが、飲料水中の1ppmという低濃度のフッ素でも、遺伝子障害が起こる事を明らかにした(26) 。1989年には、プロクター&ギャンブル社の研究者たちが、1.5ppmという低濃度のフッ素でも、遺伝子障害が著明に増加していることを発見している。

脚注
注1・Fl群とは、8年間以上フッ素化されている地区を示す。
注2・1977年以来裁判になった4件のうち、3件の判決がフッ素化がガンの死亡率を上昇せしめると結論した。
注3・それ以後、アメリカ合衆国の法廷の4つのうち3つまでが、「フッ素化がガンの死亡率の上昇を招いていることは事実として明示されている」という判決を下した。そめ最も印象的な事例では、合衆国国立ガン研究所の代表者、イギリス王立統計協会、イギリス王立医科大学、国立科学院などが巻き込まれた。これらの証人に対する19日間の尋問の後に、ペンシルバニア科学院の議長であり、かつ、その法定の裁判長であったジョン・P・フラエネティ判事は次のように言明した。
「被告らがバーグ・イアムイアニス研究について展開したあらゆる批判の総てめ点が、原告(村上注・イアムイアニス博士らのこと)らによって説明された.しばしば疑問点は、逆に被告らに対してつきつけられた。要するに、当法廷は原告らの主張する事実に賛同せざるを得ないのである」。
注4・この論文以外に,パテレ記念研究所によって1989年2月23日に公表された病理学データを参照した。
注5・比較対照群とは、飲料水にフッ素が添加されてない水を与えられた動物をいう。
注6・20回に1回より少ない回数のものを、通常統計学的には有意とする。
注7・この数値は、動物260匹中に、ヘパトコランギオカルテノーマが、偶然、5回かそれ以上の頻度で発生する可能性を〔観測者が〕発見する可能性を決定するために、歴史的な比較対照(historical controIs)と2項分布を使用して算出したのであるが、それはフッ素群の動物180匹の全てにへパトコランギオカルチノーマが起こる可能性である。
注8・去年、私は情報公開法にもとづき、『プロクター&ギヤンブル社で行われたフッ化ナトリウムの発癌性に関する研究』を入手したのであるが、この研究報告は、合衆団公衆萄生局に提出されたものの4年間も握りつぶされていたものである。偏平上皮細胞の化生を含むどの母集団の試験においても、量依存性の増加が認められていた。この結果は、1990年2月22日号の『メディカル・トリビユーン』に掲載された。
注9・1989年4月11目付けで発行されたバテレ記念研究所の病理学データ。


文献

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訳者あとがき

本稿は著者ジョン・イアムイアニス樽士が、1991年の昨秋に開催された日本フッ素研究会第11回総会での特別講演のために書き下した総説“WATER FLUORIDATION TO PEVENTT TOOTH DECAY”(フッ素研究第11号,PP6〜12)の全訳である。特別講演そのものの忠実な記録は、テープから起筆して私が監修したものが新潟県の「消責者センターだより」198号やフッ素研究誌第11号にも資料として掲載されている。  
              
 もともとイアムイアニス博士は、アメリカでも鳴り響いた講演の名手であって、文章では理解が難しい個所も話言葉で聴くとはじめて納得がいくような所がなきにしもあらずである。ともかく、この両編は、併せ読んでこそますます感銘が深まるので好学の方は是非ご一読されたい。
 イ博士については、ここで改めて書くまでもないが、反フッ素化闘争の驍将としてその令名は全世界に鳴り響いている存在である。その点では、消費者運動におけるラルフネーダー弁護士とまさに双璧であろう。事実この両人は昵懇であったらしいが、悲しいことにイ博士はつい数年前鬼籍に入ってしまわれた。
 博士を哀悼する声は全世界から沸き上がった。その一例として、最近アイルランドで出版され知識人層に広く読まれ始めたFluoride: Drinking Ourselves To Death?(飲んでいるうちに我々を死にいたらしめるフッ素)が「イ博士こそ、政治のために科学的真実を絶対に曲げなかった20世紀のもっとも輝かしい科学者だった」という賛辞とともに博士に捧げられているのは知っておいてもよいであろう。
 現在、ラルフネーダー氏が反フッ素化の旗印をかかげて大統領選挙にまで打って出るようになり得票を急激に伸ばしているのは、実にイ博士との交友にその因があるのかも知れない。

 いずれにしても、混迷するアメリカのフッ素問題が、どこでどう決着するのか到底予測することはできないが、もし、アメリカ国民が,そして知識人の中枢である科学者が、まだ合理的精神というものを堅持しているのであれば帰趨は自ら明らかであろう。1990年以降に限っても、フッ素化に賛成する自治体の数が激減し、住民投票でフッ素化を支持する結果が殆どないという事実は、まだアメリカが我々の信頼感を繋ぎとめるに値する国家であることを示しているのかも知れない。

 しかし、レーガン政権以後のアメリカの奢りはまさに異常としかいえない。
しかも、国民の経済的構成から見ると、国民がごく一部の富裕層と大多数の貧困層とに分極して中間層が消失しつつあるかのようであり、しかも、その富裕者の心理は、ますます傲慢になりつつあるかのようである。まさに古代ローマ帝国の貴族さながらである。フッ素化運動が、巨大企業の利益を通じてこの富裕層に奉仕する性質のものである以上、これは危険な兆候と言わねばならない。
 アメリカがポンペイのようにならないとはいえないよ。
ギリシア系のアメリカ人であったイ博士とは、よく宗教や歴史についても会話をかわしたがが、天国で彼がこんなことをつぶやいているような錯覚が、ふとしないでもない。
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