皆様こんにちは。日本でも動管法改正が行われましたが、初めに強調しておきますが、どのようにすばらしい法律がつくられても、それを実際に活用しなければ無きに等しいのです。
RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)は1824年に設立されました。目的は、
- 動物に対する虐待を抑制すること。
- 動物の人道的な扱いを促進させること。そして@、Aを実現させるためには種種の方策かつ合法的な政策をとること、とりわけ「合法的」ということが非常に大切だと思います。
RSPCAの基本業務は純粋に民間の寄付で賄っていますので、非常に独立した決断をし、活動を続けることができます。そしてRSPCAが長い間蓄積した情報・知識を議会・行政、また様様な業界・一般市民に提供しています。
180年の歴史があるRSPCAの予算は私が属していた査察部門では、告訴にかかる費用とかインスペクター(調査員)の人件費及び活動費、また動物を保護するのに必要な設備費を賄われていまして年間予算は約2700万ポンドです。動物施設部門での年間予算は約1150万ポンドかかります。他の教育、国際、議会対策、獣医学、科学、フリーダム・フード(畜産)、ファンド・レイジング(資金集め・広報)、総務の各部門の合計年間予算は約2150万ポンドかかります。全予算総額はその他を含め、年間6300万ポンド(107億円)に達します。これだけの額を民間・個人の寄附等で集めています。
RSPCAの査察部では毎年新しい査察官の研修が行われています。研修生になるために求められる資質には動物とは別に、人間に対する職務執行能力が上げられます。理想的な査察官とは人間的に常識を持ち成熟しているということ、そして機転が利くということ、更にある程度の教育条件を持っていること、また余りに感情的になりすぎないことも重要です。それと同時に決断力が必要になります。
インスペクターの一番重要な活動
は虐待の通報を受けた時の現場の査察です。査察の仕事はまず、立ち入りの許可を求めるところから始まります。次に動物の体に問題があるか、住環境はどうか、運動とか水・食物は与えられているのかを自分の目で確かめるのですが、これらが満足の行くものであれば動物の持ち主の確認を行い、そして現場を離れます。次の段階として、査察を行った時に動物の飼育状況が我々の求める飼育基準から若干劣っていることが判明した場合には、インスペクターは公式に飼い主に対して警告を発し、そしてその飼育状況の改善案を提供します。その後一定期間を置いてから、再度査察を行って改善案が十分に受け入れられて実施されているかどうかを確認します。それによって改善が確認されればそのケースは終了です。
明らかに虐待が行われている場合
には現場の動物にまず対処する必要性があります。インスペクターは自分の目で動物を観察し、記録を取り、その記録を持って動物を現場から獣医師の検診を受けるために搬送します。その時にもし搬送できないのであれば、インスペクターが現場に立ち合って獣医師を現場に呼び、そこで獣医師により検診が行われます。記録を取る時には言葉を記録するだけでなく、必ず写真(動物とか住環境のもの)を撮ります。特に告訴する場合には証拠として裁判所に提出する写真等を固めておかなければなりません。このように司法にゆだねなければならないと我々が判断した場合には、インスペクターはまず動物が一定期間、不必要と思われる多大な苦痛を与えられたという事実を証明しなければならないのですが、
その証明とは
第一に獣医師の診断書であり、第二に写真、第三に現場の証人から証言を取っておく必要があります。そして確かに立証できるという確信を持った時には診断書等の必要な情報をすべてケースファイルにまとめ、それをRSPCAの本部に送ります。本部には法律部門があるので、そこで法律の専門家が告訴するかどうかを検討し、必要であれば告訴にゴー・サインが出て具体的な手段を取ります。まず裁判所で被告人に対する出頭命令を発行してもらうのです。またインスペクターは弁護士を選択し、その弁護士とケースファイルを検討して定められた日に弁護士と共に裁判所に現れ、証拠を裁判所に提出します。付け加えておきたいのはインスペクターが現場で司法にゆだねるべきケースと判断した場合には、ほぼ確実にRSPCAはそれを支持します。そして徹底的に戦います。
1999年の査察部門における業務実績によると、電話通報件数:約157万件、査察を行った虐待の告発例:約13万件、告訴件数:701件、裁判所で下した有罪判決数:2719件(うち、60名に懲役刑)、飼育禁止命令:723件に上ります。
虐待の基本的意味は、
動物に対して苦痛・痛み等を与えることです。日本でも虐待の例を司法にゆだねる時期に来ていると思います。私は法律を破った者、そして法律が破られた時にそれを傍観していた者に対して、はっきりとした罰を与えるということが最も動物の状況を改善するのに有効な方法だと信じています。
次に査察の方法ですが、五感に頼ることが基本であると考えます。すなわち目・鼻・耳・触覚(触る)・味覚です。動物の飼育環境に対しても常に自問自答しながら対処してもらいたいと思います。たとえば楽に体勢を変えられるだけの空間を動物は与えられているだろうか、ということ等も頭に入れておいて下さい。最後に繰り返しになりますが、法律は実際に活用しなければ意味が無いことを改めて申し上げて講演を終わりに致します。