『魔術師 三原脩と西鉄ライオンズ』
(立石泰則・著/文藝春秋社)
(岡山県・おぐらだいすけ)
言うまでもなく、名伯楽(これ自体使い古された感じがするが)三原脩と「野武士集団」と形容された西鉄ライオンズの物語であるが、内容はそれだけにとどまらず、彼の存在した時代のプロ野球、彼自身の理想とするプロ野球像、そしてそれが叶わない現実や、読売という組織に翻弄されたような彼の人生など2段組500ページの大作ながら、倦ませず一気に読ませる内容である。
実際、もはや知り尽くされていると思われていた有名な事件(早稲田退学、選手連判状等)も、それまで言われていたような美談とは異なる事実を明らかにしており、それまでの三原とは異なる新たな像を見せてくれている。
また「野武士集団」と呼称されていた西鉄ライオンズもそのイメージとは異なり、かなり緻密な野球を展開していたこと(3−6−3のダブルプレイや投手のカバー等)もあり、驚愕する事の連続である。
そして大洋球団やヤクルトの時の彼は内なる戦いに終始したこと、日本ハム時代の球団重役としては、彼がただの現場監督に止まらず事業経営者としても並々ならぬものであることを顕わしている。
企業・ビジネスものを多く著している著者ならではのスタンスで迫っており、西鉄ライオンズを通して戦後の一時代を考える上でも格好の本であるといえよう。