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 曲の始まりは、指揮者が棒を振った時である。しかし、それを行うにはさまざまな
準備が必要だ。楽器を調律し、演奏者をあつめ、ひとつの曲を奏でなければならない。
 曲の始まりは、それそのものが奏でられる前から行われているのだ。
 ドともレとともつかない音。演奏者の練習。お客様に聞かせるには申し訳ない、
騒がしき音の連なり。
 これは、そんな騒音前奏曲である。

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 なだらかな田舎道を、一人の青年がバイクを押して歩いていた。季節は冬。
中肉中背のその体は防寒具で包まれていたが、その下には汗が浮いていることだろう。
 ガス欠だった。普段は快適な移動手段として用いられるそれも、ガソリンがなければ
鉄の塊以外何物でもない。
 車ひとつ、歩行者ひとり通らない道を、ただひたすらバイクを押し進む青年。
 道はまだまだ続いており、その先にガソリンスタンドはまだ見えない。
青年は一度止まり、握っていた地図を広げた。目的の場所を示す印は、
はるか先。
 ため息が、口から漏れた。

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 世界は七つある。正確には、第六世界が分裂してしまっているため七つではないのだが、
ともかく、世界は七つあるのである。

 第一世界は魔法の世界、名をサイレントオデッセイ。
 第二世界は歌の世界、名をダンスドール。
 第三世界はさまざまな力をもつ心臓の世界。最強は水素の心臓。名をハートオブハイドロゲン。
 第四世界は精霊の世界。名をエレメンタルギアボルト。
 第五世界は……あえて語らず。この名を言えばわかるだろう。そう、ガンパレード。
 第六世界はひとつにあらず。今は無数に別れし世界群。名をゴージャスタンゴ。
 第七世界は機械の世界。日本があったりアメリカがあったり。名をアイドレス。

 七つの世界の中央に位置するは第三世界。そこに広がる大宇宙。
浮かぶ船はにゃんにゃん帝国所属、冒険船・逆転号。
 船は今、ひとつの世界を救うために完全稼動状態にあった。

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 少女は、目を閉じて時を待っていた。その鼓膜を、第11ウインドウ スタンドバイ、
第12ウインドウ スタンドバイといった報告が振るわせる。
 第15ウインドウのあと、第13ウインドウが遅れてスタンドバイ、と言った。

「全ウインドウ スタンドバイ」
「注意してください。セントラルが次の呼吸をするまで180秒しか時間がありません」

 少女は目を閉じたまま、口を開いた。

「何を注意するの。運命を変えられないこと。それとも、生還できないこと」
「両方です。のこり174秒。160秒の段階で接続を開始します。
シオネ・アラダのご加護を」

 轟音をあげゆっくりと上がり始めるエレベータ。戦艦をもせり上げるそれに乗っているのは、
不敵な顔をし、腕を組むセーラー服の少女。
 少女は目を開く。

強い意志を秘めた瞳。
風に揺れるスカート。
マーカーガン。

 エレベーターが動きを止めた。

「残り166秒。”ラスト・ポープ”スタンドバイ!」
「かの世界の希望を、あなたに託します。空間接続用意。最終減速開始。
降下用意!」

 次々と準備が整ってゆく中、少女はまっすぐ前を見つめていた。
そうであるのが当たり前であったし、それこそが先人の残したものだった。

「降下用意、全準備完了」

 少女はクラウチングスタートの体制を取った。髪とスカート、
そして赤いスカーフが風に揺れ始める。
 目の前には巨大なトンネル。その奥から次々と明かりが灯っていき
その全容を映し出す。
 3、2、1、と赤いランプが点灯した。 
 常人ならば瞬時につぶれる大加速で、少女は時間と世界を越えた。

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 青年がはじめに見たのは土煙だった。進行方向から向かってきた
それをなんであろうかと考えるころにはもう目前にまで迫ってきており。
あぶない、と気づくころには騒々しい足音が耳を打ち、周りには
視界を奪う土煙が舞っていた。

 それが晴れたとき、目の前にはセーラー服の少女がいた。

 青年は世界中を旅したことがある。さまざまな経験もした。
しかしながらさすがにこんなことは始めてであった為、ただ呆然と
立ち尽くしてしまった。

「ガス欠のようですね。これを。次のスタンドまでは持つはずです」

 少女は琥珀色の液体の入った瓶を投げよこした。

「その地図は少々古い。それは仕舞ってこちらを使うとよろしいでしょう。
ただしそれは捨ててはいけません」

 懐から取り出された地図を呆然と受け取る。

「これをベルトへ。どんな破損も瞬時に直すという触れ込みです。
遊び手や使い手に向上ばかり求めるアルファにしては
まともな商品といえましょう」

 拳大の粘土のような物を受け取り、青年は今つけているベルトを
見下ろす。傷はついていたが、壊れてはいない。が、そこで
彼の持つ『もうひとつのベルト』を思い至り目を見開いた。
 それは、見ず知らずの少女が知っているはずもないこと。
 問いただそうと口を開く前に、少女が言葉を述べる。

「人を傷つけるとき、自分の心もまた傷つきます。
それはとても辛い事。でも、奪われた笑顔は戻ってきません。
わすれないで、そして思い出してください。
あなたが戦ったその理由を」

 そこまで一息で言い切って、少女は青年に笑顔を向けた。
それは自分のための笑顔ではない。青年のための笑顔。
 頭はいまだに混乱していたが、その笑顔に対する行動は
すぐに出来た。
 青年は笑い、親指を天にむけ拳を突き出した。
サムズアップ。古代ローマで、満足できる、納得できる行為をしたものだけに
与えられる仕草。
 少女はほんの一瞬、呆然となり、はにかむように笑った。
 後々、青年がこの夢のような出来事を述懐するたびに、
この笑顔が思い出された。

「しるしのある場所へ向かってください。そこに笑顔を奪うものが現れます」

 地図を指差し、その後少女は背を向けた。一瞬、小さく身じろぎを
すると、ためらいがちに親指を上にあげた拳を見せた。

「われわれの出来る最大限の介入は終わった。加速最大! これより帰還する」

 マーカーガンをクリックし、少女はまた走り出した。
土煙が再び周りを覆った。

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 青年はしばし呆然とし、手の中にあるものを確認した。
 瓶の中に入っていたのはガソリンだった。たいした量ではなかったが、
これでエンジンがかかる。
 地図はロンドンのものだった。たしかに、しるしのある建物があった。
 最後に、粘土のような物を見る。少しだけためらったあと、
青年はベルトを「引き出し」た。ひしゃげ、ゆがんだそこに粘土を
押し付けてみる。すると、数秒不定形にゆがみ、破損部分にはりついた。
 あまりに気味が悪かったので、はがそうと手をかける。しかし接着剤で
くっつけたように剥がれない。しばし悪戦苦闘し、あきらめかけたころ、
ぼろりと乾いた土のように剥がれ落ちた。
 わけがわからなかった。伏線が0だった。
 青年はとりあえず空を見上げた。真っ青な、高い冬の空だった。

「よしっ!」

 そう声を上げ、押していたバイクに向き直り瓶の中身を入れ始める。

 田舎道での出来事だった。



終、または始まり




筆者の落書き
 まだ異邦人幻想曲が全自動月姫の投稿掲示板に寄せられていたときのこと。
士郎たちのピンチに五代が颯爽と登場し、変身したとき私は違和感を覚えずにはいられなかった。

「五代、第零号との戦いでベルト壊れてたのに」
「なんで五代、この場所のことを知ってたんだ?」

 ひどく悔しい思いだったのを覚えている。五代がすばらしくよくかけているのに、
これはもったいない、と。

 時は立って水無月さんがHPを立ち上げた後、大恐慌奇想曲の
登場作品の中にガンパレの文字を見つけた。
 脳裏に電光のごとくあの違和感がはじけた。

「そうかっ! そういうことだったのかっ!」

 勘違いである。壮大な勘違いが発生し、このSSが生まれた、というわけである。

 ごめんなさい。調子に乗りました。僕が間違ってます。
でも書きたかったので書いちゃいました。ごめんなさい。
 第11ウインドウ〜のあたり、なるべくコピペに見えないようにがんばってみました。
でもほとんど原文と一緒だったりします。ちなみにリタガンではサラリーマンですが
いつだかアルファに掲載された「大逆転号」という作品で代替わりしたので
セーラー服の人にしました。原文が手元にないのでうろ覚えです。
 重ね重ね、すみませんでした。
 
 そして落書きの続き
 HPに掲載されたあと、やはり二時間程度では穴があると気づき、いくつか書き足したり
変更してみたりしてみました。
 で、ついでにガンパレ系のHPを読み漁ってデータを取得。
 セーラー服の人、名前を大北弓花。リターン・トゥ・ガンパレードに登場した
サラリーマンの(たしか義理の)娘です。
 ある世界を救いに行って帰ってこなかったサラリーマンのあとを継いで
最後の希望として悪と戦っているそうです。



 スカイラインさん、どうもありがとうございました。
 まさか五代君にこんなエピソードがあったとは。
 当方もビックリです。
 当サイトの記念すべき初投稿作品でしたのでありがたく晒し公開させていただきましたところ、ご本人から改訂版をいただきましたので差し替えさせていただきました。
 正直に言うと私自身、それほど芝村世界観に精通しているわけではなかったので「あーそうなのかー」と思わされました。
 ……そんなんでよくガンパレとクロスオーバーさせようとか考えたな、私も。


 いくつか誤字らしきものを発見したので当方側で修正しました。

 修正個所
 鉄の固まり→鉄の塊
 複線→伏線

 もしスカイラインさんの意図と違う修正がされていた場合はご報告ください。
 直ちに訂正した上で腹を切って自害する覚悟。



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