| でとが | お礼に | ||||||
| 砂の雨 | 代償 | ||||||
| 空へ | 大地 | ||||||
| 鬼 | 投網 | ||||||
| 出発 | うたかたの | ||||||
| 了解 | 用件の身にて | ||||||
| 逃がした魚 | 善意 | ||||||
| おとぎ話 | 闇 | ||||||
| 河 | てがみ | ||||||
| 言葉に |
| 生まれたての詩.1 | うまれたての詩.2 | 生まれたての詩.3 | 生まれたての詩.5 | 生まれたての詩.6 | 生まれたての詩.7 |
| 生まれたての詩.8 | トップページへ |
で と が |
| なににする? と |
| たがいに聞きあう |
| ブラックでいい |
| と あなたは答える |
| レモンティーがいいわ |
| と 私は言う |
| ほんとうはね |
| どんな時もあなたには |
| <で>と言ってほしくないの |
| まにあわせみたいだから |
| まずしい譲歩みたいだから |
| さびしい妥協みたいだから |
| 本心はどうなの? |
| いちばんの望みは何? |
| なんて聞きたくなる |
| 私は<が>が好き |
| そのときの最良の選択 |
| 真っ向勝負 |
| 正直なことばだから |
| 使いかたはかんたんよ |
| 「ブラック<が>いい」 |
| 私にたいしては こんなふうにね |
| 「君<が>いい」 |
| あっ よくばりすぎかしら? |
| 01/8/4 |
| 砂の雨 |
| その手紙は |
| パートナーを亡くした直後の人からだった |
| 闘病のことや お礼などが |
| 冷静に律儀に |
| あざやかな筆致で綴られていた |
| 覚悟のあとの達観だったのかもしれない |
| 自分自身を励ましながら |
| やっとの思いで書いたのかもしれない |
| なのに私は |
| その完璧さと手ぎわのよさに |
| 少しさめていた |
| なぐさめの無意味さを思いながら |
| ただ傍観していた |
| 砂の雨が |
| 骨の白さで心に降っていた |
| 01/7/28 |
| 空へ |
| 蔦が枝分かれしながら |
| 玄関の壁を這いはじめた |
| 小さな花芯のような吸盤で |
| 足場をつくりながら |
| するすると伸びてゆく |
| 涼風と一緒に |
| 壁に絵を描きながら |
| 吸盤がなかったら |
| 蔦は宙をさまよったあと |
| うなだれ地を這っていただろう |
| やわらかな先端は |
| 水先案内をするように |
| ひたすら空をめざしている |
| 01/7/21 |
| 鬼 |
| あなたの声を |
| 電話で読む |
| あなたの心を |
| メールで聞く |
| あなたはときどき |
| メールの行間でかくれんぼするのね |
| 聞こえてくるの |
| ほろほろとこぼれる言葉が |
| 息づかいが |
| だからすぐにわかってしまうわ |
| どの行間にかくれているのか |
| 私はこんども鬼だったわね |
| 01/7/14 |
| 出発 |
| 電車の先頭車両に乗り |
| ガラスばりの乗務員室を見る |
| あっ 今朝の運転士さんは |
| 前方をきりりと見つめ |
| 腕を思いっきり伸ばし |
| 力一杯ゆびさし確認をしている |
| ときどき ちらっと右側の |
| 先輩とおぼしき人を見ながら |
| そう 新米だったのね |
| ひと呼吸おいての |
| 先輩の確認の確認は |
| 力を抜いた無駄のないプロのしぐさだ |
| どんなときだって 誰だって |
| はじめは少々危なっかしく |
| 初々しい新米 |
| 赤ちゃんだって新米 |
| 人間のね |
| 田圃では |
| 新しい米が生まれようとしている |
| 01/7/7 |
| 了解 |
| 通勤路ですれちがう知人は |
| 「おはようございます」 |
| と 私が挨拶するたびに |
| あらぬほうを見ながら返事をする |
| まじわることのないまなざし |
| すどおりしてゆく視線が |
| 舗道にかすかな傷をつける |
| 同僚への挨拶は |
| 「オハヨ」「ざいます」 |
| さわやかに あるいは眠そうに |
| 背中や横顔が返事をする |
| 信頼 なれあい |
| 乾いた友情 |
| ふしぎな絆が許す暗黙の了解 |
| 今日も当然のように |
| あたらしい朝が生まれる |
| 01/6/30 |
| |
| |
| 逃がした魚 |
| 寝いりばなに詩の一行が浮かんだ |
| 書きとめておかなければ |
| と 心を急かせながら |
| 懸命に目を見開いているつもりだった |
| なのに睡魔は私の前を行き来しながら |
| 早々とシャッターをおろしてしまったらしい |
| うまれたはずの詩の一行は |
| 朝の光がさしこむ部屋にも |
| 体のなかのどこにもみあたらない |
| ねむりと一緒に溶けてしまったのか |
| うまれたと思ったのは |
| 願望と錯覚にすぎなかったのか |
| 睡魔しか知らない |
| 逃した魚は小さかったためしがない |
| どんなに大きかったかを |
| ひとは両手をいっぱい広げて語る |
| その真偽のほどは |
| 魚だけが知っている |
| 01/6/16 |
| おとぎ話 |
| 竹林での朗読会に向かう折り |
| 道に迷ってしまった |
| 目印の小学校が見あたらない |
| ひとっこひとり通らない道を |
| まっすぐ歩きつづけた |
| あたりは次第に暗くなってゆく |
| 通りすぎる大型トラック |
| 木々のざわめき |
| 黒々とした林 |
| 電話ボックスも人家もない |
| どれほど歩いただろうか |
| とつぜん 煌々と輝く建物が見えてきた |
| 狐にばかされるような気持ちで |
| そろそろと その建物に入った |
| 人間がいる! |
| 久しく人間とは口をきいたことがなかったように |
| こわぱった口調で道順をたずねた |
| しわくちゃになった地図を広げながら |
| ようやく見えてきた竹林の灯り |
| 赤鬼や青鬼が集うおとぎ話のような空間 |
| コンコンと啼きながら |
| 宴の輪のなかに入っていった |
| 火は赤々と燃えていた |
| 01/6/9 |
| 河 |
| お弔い用の黒いストッキングが |
| 引き出しの中で泳いでいる |
| 捨てることができないまま |
| あたらしいのを履いてしまうから |
| 次第にその数は増えてゆく |
| 私の中を |
| 私のそばを |
| ほほえみながら通りすぎ |
| 戻ってこなかった人の数だけ |
| 幸せでしたか? |
| ええ もちろん |
| 楽しかったですか? |
| ええ とっても |
| あなたに問いかけ |
| あなたに代わって私が答える |
| きのう ひとりの旅人が |
| 河を渡っていった |
| 01/6/2 |
| お礼に |
| たくさんの臓器がひしめきあう繁華街に |
| 巨大都市の風情で |
| 肝臓が どかっと座っている |
| 胃も心臓も胆のうも |
| 叫ぶ術を知っているのに |
| 饒舌なのに |
| 静かな殺し屋 |
| 沈黙の臓器 |
| 化学工場などの呼称を持つ肝臓は |
| ただひたすら寡黙だ |
| 1キログラム以上もある大きな図体を |
| 恥じらうかのように |
| しらぬまに忍びより |
| ながい年月をかけて |
| 細胞を破滅においやるウイルスから |
| 君を守ってあげたい |
| 解毒はもちろん |
| さまざまな役目を担って |
| やすみなく働きつづけている君への |
| 心からのお礼に |
| 01/5/26 |
| 代償 |
| 食傷ぎみ |
| と あなたの頬に |
| 遠慮がちに書かれた小さな文字を |
| 私は読んでしまった |
| 辟易しているようすが |
| いっしゅん 瞳に浮かんだのも |
| 見てしまった |
| あなたも気づいたかしら? |
| 私の あいまいな笑みと |
| 瞳をよぎったものに |
| それは近づきすぎた代償 |
| ほのかな残り火 |
| 傷あとのような温もり |
| 無視は |
| 代償も 思い出も |
| わずかな灰も残さない |
| あした私は |
| 一片の氷になる |
| 01/5/19 |
| 大地 |
| 五月の公園に |
| 緑を食みにゆく |
| こもれびのさす木々のあいだを |
| 自転車で走りぬけると |
| 吸う息も 肺も 細胞も |
| 萌葱色に染まる |
| 幼い子や若者が |
| スケートボードに熱中しているのを |
| つつじ すずらん バラ こでまり |
| やまぶき などが咲き競うのを |
| 私はながめる |
| けれど 彼らも 花たちも |
| けっして私を見ることはない |
| 私は芝生の芝の一本 |
| 風に揺れる一枚の木の葉 |
| 01/5/12 |
| 投網 |
| 過去に決別するのも |
| 恋にさよならするのも |
| いとも簡単なこと |
| はじめから形がなかったのだもの |
| なのに愛着はそうはいかない |
| オーバーコートの襟が |
| ブラウスの胸のあたりが |
| イヤリングの小さな石が |
| 身のまわりの形のあるものたちが |
| 愛を着てしまっているから |
| 私はただ |
| その前で足ぶみするばかり |
| 愛着が投網になって |
| 私をからめとる |
| 01/5/5 |
| うたかたの |
| 目が冴えて眠れなかったことを |
| 誰かに告げたくなるのはなぜ? |
| 羊の数をかぞえるのは |
| つまらなくなってしまうし |
| まぶたを固く閉じても |
| なにも浮かんではこない |
| まぶたに浮かぶなんとやらって |
| 歌詞にはあるのに |
| 再び訪れてはこない |
| うたかたのような たったひとつの夜 |
| まぶたの裏側ではネオンが点滅し |
| 瞳に反射しているだけで |
| 一頭の羊も見あたらない |
| 未来も過去も浮かんでこない |
| 涙のような水滴が |
| 窓ガラスにつくる小道を |
| 街路灯のあかりが照らしている |
| 01/4/28 |
| 用件の身にて |
| 「O.Kさん こんばんは」は 「お」で |
| 「burikiyaさん こんにちは」は 「ふ」で |
| CHIKAKOは 「ち」で |
| メールアドレスは 「め」で |
| 当HPは 「ほ」で 単語登録してから久しい |
| よ.う.け.ん.の.み.に.て |
| と 入力したら |
| 「用件の身にて」に変換された |
| 悪くはないわ |
| あいまいなことや |
| 不要なものは削ぎおとし |
| 情緒のひとひらもない |
| 殺風景な用件だけの身 |
| 今日 私は私を |
| 「よ」で単語登録した |
| 01/4/21 |
| 善意 |
| <水仙> |
| 水仙が咲いた |
| ベージュのスカーフをして |
| 少しうつむきながら |
| いっせいに 正面を向いている |
| 波のような耳をかたむけている |
| おはよう |
| おはよう |
| 花の善意が私を見ている |
| <桜> |
| 満開の桜は |
| 風にバトンタッチするときを知っている |
| 生まれる前の風にも |
| かすかな風にも瞬時に応え |
| あるいは風がなくとも |
| 見えない合図に応える |
| あなたの髪に |
| 私の肩に |
| ひろげたシートに |
| 桜吹雪が降る |
| やわらかな善意が降る |
| 01/4/14 |
| 闇 |
| ゆうべ 寝ごとを言ってたね |
| と 旅の宿であなたは言う |
| 心の闇に気づいてはいた |
| 封印した想い |
| 霧のような不安 |
| 無意識の悪意 |
| 星くずのような傷 |
| ひょっとしてハイド氏も |
| 混然と紛れこんでいるかもしれない |
| それらが白日のもとに晒されるとき |
| 私は無力な罪びとになる |
| 旅の朝 |
| 私より先に |
| 私の闇を見てしまったひとが |
| 声を聞いてしまったひとが |
| のどかにお茶をのんでいる |
| 01/4/7 |
| てがみ |
| Eメールは |
| 瞬きをひとつするあいだに |
| 宇宙を駆けぬけ |
| 瞬時にあなたのもとへ着いてしまうから |
| あとを追いようがない |
| 送信したあとの悔いなど |
| 吹きとばされ |
| 大気中の塵になってしまうのだろう |
| 私の受信トレーは |
| 煙草のけむりでいっぱい |
| まだ お仕事中ですか? |
| あっ 旅行中かしら |
| まさか 病気ではないでしょうね |
| それとも... |
| <それとも>に続くことばが |
| たちあがって 歩いていった |
| 01/3/31 |
| 言葉に |
| 痛みは声をもたない |
| 形もない |
| 体のそちこちに |
| じっとうずくまっている |
| 無言のまま |
| やどかりのように |
| ある日 人は |
| 痛みを音声化し |
| たったひとつの言葉に変換する |
| <痛い> と |
| 人と 痛みは |
| 光と影のように暮らしてきた |
| しくしくした痛みに |
| 激しい痛みに |
| よりそいながら |
| 本当はどうしてほしいの? |
| 言葉の無力さを知っているのは |
| 君自身だよね |
| 01/3/24 |
| 戻る |