生まれたての詩・15


生まれ立ての詩・14 生まれたての詩.16 空の部屋.16 絵手紙サロン.4 木綿の部屋・2
トップページ


冬の音 眠りの街 風まかせ 競演のとき
閻魔様の独白 星たち 蜻蛉のとき 万華鏡
明日の風 日課 殿様 かざぐるま
鳥に 宴のあと 立体と直球 軽やかに
願望 圏外 髭の日 寡黙な返球
夕化粧 立秋の暦 もしも 幸せな朝
歌うとき 1パーセント重さ 無機質な鉄則 探しもの
冬眠 2の兵 交代 海への径
冷気 新生 無償の善意 カプセルの独白
待つ 私自身に 再生 今日から



 
 冬の音

ボーンボーンと柱時計が鳴っている
澄みきった朝の冷気のなかで
頼りなげに
正確に

部屋はまだ凍っている
融けるまで蒲団から首だけをだして
今日という日を迎え撃つ

なにもない一日かもしれない
なにかがある一日かもしれない
今日というカーテンを開けたら
なにが見えるだろうか
明るんできた空に聞いてみる

                09/12/19



 
 閻魔様の独白

嘘が呼吸している
息切れしそうになりながら
あるいは平然と

「嘘こぐど閻魔様にベロを抜かれる」 と
言われていた幼かった私たち
信じていたのだろうか
信じていなかったのだろうか
ただ お寺にあった閻魔様や地獄の絵からは
おどろおどろしさが伝わってきて
胸に迫ってきた

年を重ねた今
閻魔様も怖くはなく
自分がつく嘘も
巷に氾濫している嘘も
他人事のようにながめている
心を痛めることもなく

                09/12/12


 
 
 明日の風

風は何処へ行った?

前日の天気予報では
強風が吹き 
体感温度の低さが予想されていた

あにはからんや
そよと吹く風は優しく 
小春日和の穏やかさだ

天気予報は
雲隠れし去ってゆく
明日の風は
今日吹かない

                09/12/05


 
 鳥に

曇りの日に飛ぶヘリコプターは
ブルブルと寂しい音を震わせ
鼠色の空にとけてゆく

青空の日に飛ぶヘリコプターは
かろやかなメロディーを奏でながら
鳥になる

                09/11/28


 
 
願望

一日に何度も
上書き保存をする
変わることへの願望が
マウスを握らせて

上書きをしているうちに
順次 私が消えてゆく

未練がましく
たびたび引きかえしたりもする
あともどり 可とばかりに

確定されるのは
優柔不断の私そのものだ

ハツカネズミが
今日も手元から離れない

                09/11/21


  
 夕化粧

おしろい花が咲いていた垣根が
ふと心をよぎる
子どもたちがまだ小さかったころ
私がまだ若かったころ
見るともなく見ていた

夏の夕暮れに咲き始めることから
夕化粧という別名があるらしい
はかなく美しいその名を知ったのは
ずいぶん後のことだ

小心という花言葉に
自分自身を重ねながら
薄暮の時刻を懐かしんでいる

誰に見せようか 夕化粧

                09/11/14



 
 歌うとき

小さな失敗
大きな失敗の
線引きは曖昧だけれど
失敗のたびに
私 バカよね
おバカさんよね 
と 聞き慣れたフレーズで歌う
それは 自嘲か 鼓舞か

昨日 不用意に
シンビジュームの茎を折ってしまった
初々しい蕾を守るべく
支柱を立てようとした瞬間
ポキッと音がした
目の前が真っ暗になった

暗闇のなかで私は
目を凝らしている
おバカさんの歌を歌いながら

                 09/11/07


 
 冬眠

「見まい聞くまい語るまい」と
最初に言ったのは誰だろう
消極的のようでもあるし
逃げのようでもあるこの言いかたが
私は結構好きだ
部屋が散らかっていても 見まい
見なかったことにしよう
嫌なことは 聞くまい
聞かなかったことにしよう
聞えないふりをしよう
余計なことは 語るまい
もの言えば唇寒しともいうし

寒いのは苦手だ
ぬくぬくと炬燵にもぐって
見まい聞くまい語るまい方式で
熊のように冬眠態勢に入ろう

                09/10/31

 
 冷気

スズメバチと思われる蜂が
玄関先で息絶えていた
阪神のチームカラーの洋服を着て
大きな図体をして
背中を丸め

君は これまで
誰を刺したか
誰も刺さなかったか
最後には自らを刺したのか
かつての強気な獰猛さはなく
ただ静止したままだ
秋の冷気と
コンクリートの味気なさの上で

                09/10/17


 
 待つ

待針は 布がずれたり
狂ったりしないように
基点から基点まで
留めておくのが役目
チクチクチクと進んでくる針を
ひたすら待っている
まぁるい頭をひょっこりと出したり
花かんむりをかぶったりしながら

  到着したわね
  あとは引き受けたわ
  次の待針にバトンタッチするまで

待つことは 
明日を迎えるためのリハーサル

                09/10/10


 
 眠りの街

早朝 5時
街は眠っている
目覚めているのは家々の門灯と
電柱に灯された明かりだけだ

柿が実っている
金木犀の星が散っている
コスモスが揺れている

心せかせながら
郵便ポストまで 自転車を走らせる
一刻も早く
その人に想いが届くように

                09/10/03


 
 星たち

スターダストになった言葉たち
詩の言葉が浮かんでこない
つっかえ棒を無くしたようで
ふわふわと頼りない
なのに 強がりではなく
すこしも寂しくないのはなぜ?
ものたりなさも感じないのはなぜ?
むしろ しがらみを振りきり
恋の終わりのように妙に爽やかだ

そして今
罪を犯した者が現場に戻るように
おめおめと戻ってきた

季節は確実に変わっていた
金木犀の香りが秋を染めている

                09/09/26


 
 日課

歯磨きは私の唯一の趣味
歯と歯の隙間まで念入りに磨く
テレビをみながら 
新聞を読みながら

ついでに舌磨きもする
二枚舌に生えた苔を削ぎ
口の中を清くタダシク保つために
舌禍を防ぐために
息爽やかを目ざすために
歯と舌を磨くのが日課

はあっ はあっ
これで大丈夫 
たぶん大丈夫
爽やかな一日が始まる筈だ
昼食のあとも 夕食のあとも
強迫観念に押されるように
歯ブラシを手にしている

     09/09/19


 
 宴のあと

宴もたけなわ
口元に食べものの一片がついていたのを
その人は声にださずに
ここ ここ と指をさして教えてくれた
それだけのことだったのに
ただちに私のなかの
「いい人チーム」に登録された

ご飯粒を口のまわりにつけていると
おべんとうを持ってどこに行くの?
と言われたのは幾つぐらいのときだったろう
たぶん その瞬間
親指と人指し指でご飯粒をつまんで
口のなかにほおりこんだに違いない

口はなんでも知っている
古びた歌詞を替え歌にしながら
私は愛しい米粒を探している

                09/08/22

 
 圏外

仲間内だけの話に興じ
新しい顔を圏外におくのは
寂しいことだ
無意識だったとしても

ひょっとして頭の片隅で
その人のことを気遣いながらも
きっかけがつかめないのかもしれない
人見知りをしているのかもしれない
照れているのかもしれない
新風に戸惑っているのかもしれない

あなたにも あなたにも
残したくないトラウマの記憶

私のなかの遥かなトラウマが
空に向かって走りだす

                09/08/15


 
 立秋の暦

日めくりの暦が剥がされないまま
二週間もひっそりと沈黙を保ち
怠慢をつづけていた

今日 まとめて剥がした
単なる雑紙と化し
色褪せた二週間分の暦の
一枚一枚の間に挿まれていたのは
言いそびれていたことだったか
守りたかったことだったか
悔いだったか
秘めやかな想いだったか
バラの香りだったか

立秋の小さな風が
そよと吹いた

                09/08/08


 
 1パーセントの重さ

手の平の面積は
体全体の面積の1パーセントだという

わずかな広さの手の平が担う役割は
曖昧に思えるのに
鈍重に存在しているだけのようにみえるのに
両手をあわせて神仏に祈るとき
水をすくうとき
かしわでを打つとき
拍手をするとき
何かをおしいただくとき
もみ手をするとき 
1パーセントは小気味よく働く
99パーセントも
それぞれのパーツの役割を
さりげなくはたしている筈だ

                09/08/01


 
 2の兵

雷には敬称がついて
カミナリ様とよばれるのは 
特別あつかいじゃない?
ひいきじゃない?
ひょっとして
稲光や耳をつんざく天の怒りが怖いのかしら
崇め奉っているようにもみえるわ
地震 雷 火事 親爺の
二番目にランクインされているぐらいだから
昔から恐れられていたのね

雹 霰 霙 雪 雨には
敬称がついてないのはどうして?
威勢のいい暴れん坊の雹や霰にも
敬称をつけてご機嫌をとりましょうか
ヒョウ様 アラレ様 と

                09/07/25


 
 新生

整地され
さら地になったその土地に
いままで何があったのか
覚えていない
思いだせない

時を待たずに
きっぱりと生まれ変わる潔さが
槌音高く響いてくる

私もいずれ蜃気楼になり
夢うつつに槌音を聞きながら
新しさにバトンタッチするのだろう

いままで何があったのか
覚えていない
思いだせない

                09/07/18     



 
 私自身に

その人の姿がみあたらない
今 どこ?
今 どこ?
と せっかちな私は
雲にたずねる
人に聞く
携帯電話をかける

あなたを避けているのかもしれないよ と
雲は遠慮がちに言う
そうかもしれないわね
否定はしないわ
でも 悪いところがあったら直します なんて 
陳腐な言いかたはしないつもりよ
迎合するようだから
誰に?
その人に あの人に 雲に 
私自身に

               09/07/11


 
 
風まかせ

ちょいと そこのゴーヤのオニイサン
相変わらず遊び人ね
よそ見をしちゃダメよ
という私の言など無視し
するすると細い手をのばして
手あたり次第にどこにでも絡みつくのね
伸びるにまかせているから
もう二階の出窓まで届いたわ

ま 風のカーテンに
緑の葉をいっぱい繁らせ
日よけの役割を果たしてくれたら
ぶぅらり ぶぅらりと
たくさん実をつけてくれたら
遊んでばかりいたことを帳消しにして
おおめにみてあげてもいいわよ

                09/07/04


 
 蜻蛉のとき

回送のバスが通り過ぎてゆく
どんなときも
あとを追うことを良しとしない私が
苛立たしさをこめて
走り去るバスを目で追っている

変更できないバスの都合と
急いている私の都合が
いっしゅん ぶつかりあう 

回想は
センチメンタルな繰りごと
他者にとっては退屈なしろもの
たいていのことは忘れているのに
回想という網にかかったものだけが
自己を顕示する
思い出を美化し粉飾しながら

回送も回想も所詮は蜻蛉か

                09/06/27


 
 
 殿様

「殿」は目下の人に使う敬称
「様」は個人への敬称 と
いつ誰が決めたのだろう
宛名に「殿」をつけるか「様」をつけるか
迷うときは決まりに従うのが無難だ

日々の暮らしのなかで
殿 殿 と呼びかけるのは
親しさと愛おしさの表現

いつのころからか
公用文・商用文でも「様」を使うようになったらしい
「様」は気配りと協調性を備え
どこにいても様になる

折々の決まりごとは
理路整然とした心優しい科学だ

              09/06/20


 
 
 立体と直球

バンドネオン ピアノ バイオリン 
ギターなどが奏でるタンゴ*の音色が
直球でやってきて
心のなかにズバッと落ちた
響きわたる躍動感
艶やかな情感
まっすぐに飛びこんでくる生の演奏には
とうてい敵わない
詩を書くことなど なにほどのこと?
私の書く詩は平面的で透け透け
比して音楽は立体的だ

直球を抱いて
心地よい敗北に酔っている

    *アルフレッド・ハウゼ タンゴオーケストラ

              09/06/13



 
 髭の日

ドラッグストアや
量販店に並ぶ新製品は
私を浦島太郎にする

ダストボックスの蓋の内側に貼って
コバエの侵入を防ぐグッズなど
とりあえずは買ってしまう
当然 防いでもらう筈だった
ところが 蓋を開けるたびに
強い芳香剤が鼻をつき
コバエどころか私のほうが閉め出され
拒絶されるはめに

以前から売っていたのだろうか
気づかなかったのは
ひねもす 手持ち無沙汰に
髭を撫でていたせいかもしれない

              09/06/06


 
 もしも

旅先で ふと心をよぎる感慨は
いったいなんだろう

人里離れた鄙びた宿に
山の麓の農家に
茅葺の民家に
海峡の町に
白壁のお屋敷に
さびれた町家に
嫁いでいたかもしれないあなた

住めば都といわれているけれど
暮らしにはなじめたか
幸が薄いことはないか
ひょっとしてあなたは
凛とした眼差しで
遠くをみつめていたかもしれない

夢と現の狭間を
薫風が通りすぎてゆく

              09/05/30


 
 無機質な鉄則

ユリの花束が届いた
一輪が萎れると
スタンバイ中の蕾がひらく
ミステリアスなユリの花は
プラス マイナスを繰り返し
花の数はけっして減らさず
艶やかに咲きつづける

私は夢の中にいた
花は いつかは枯れる
という鉄則を忘れて

どのぐらい時がたっただろう
恋の終わりのように色褪せ
取り戻すことができない刻に合わせて
ひとひらずつ散っていった

夢から覚めると
かぼちゃが転がっていた

              09/05/23


 
 交代

犯罪捜査の主役だった指紋鑑定は
その座をDNA型鑑定に譲ったのか
奪われたのか
地道に生き残っているのか
私にはわからない

DNA型鑑定で識別できる精度は 
千人に1.2人だったのが
たかが十数年で格段に進化し
今は4兆7千億人に1人だという
天文学的な数字に眩暈がする

悪代官を懲らしめ
不正を見逃さない科学捜査藩が
肩で風を切って闊歩している

  5月13日付け朝日新聞「天声人語」参照

              09/05/16



 

 無償の善意

香りがいいから と
知人が可憐な白い花を届けてくれた

一枝だけなのに
むせかえるような甘い香りが 
部屋中にひろがる
嗅覚が麻痺し
体が香りで染まりそうだ

一輪でも花があれば
幸せになれる私だけれど
きつすぎる匂いに戸惑っている

善意はいつも微笑みながらやってくる
そのたびに私の中を 
秘密の疲れが掠めてゆく

              09/05/09

 
 再生

園芸用語の〈鉢増し〉とは
今よりも大きいサイズの鉢に植え替えること

植物は日々成長していくのに
鉢はけっして育つことはない
プラスチック鉢は色褪せ
化粧鉢や素鉢は縁が欠けたりするものの
生まれたときと同じ大きさだ
いつしか植物と鉢のバランスが崩れ
はい さようならの状態に

古い根は切捨て鉢増しをし
新しい土で植え替えると
植物たちは いっせいに息づきはじめる
鉢も お似合いの伴侶を見つけるはず
お別れするのはお互いの為なんだ きっと

              09/05/02


 
 競演のとき

枯れたと思っていた葡萄の木から
新芽がでてきた
葡萄らしい粒々もみえている
しばらく見ないうちに
様変わりしていたのに気づかなかった

それまでは眼中になかったのに
急に手のひらを返したように
世話をやきはじめた私
蔓を添え木に誘導したり
肥料を施したり と

せっかちな私と
豊かに実ってゆく葡萄との競演は
いま始まったばかりだ

              09/04/25


 
 万華鏡

その人の前で
女はヒヨコになる
ぴよぴよと鳴きながら纏わりつく
蚊や蜂になって通り魔のように刺し
フクロウと一緒にうたた寝もする 
人を惑わすカメレオンや
突進する猪 豹 虎にもなる

ときにはモグラになって
わずかな光りを
放射状に輝くものを 
地中から見あげたりするのだ

              09/04/18


 
 かざぐるま

さよなら 
と 手をふる
ふり向いて 
もういちど手をふる
曲がり角で
また 手をふる

あなたの視界から私が
私の視界からあなたが
忽然と消えてゆく
出会いと別れは かざぐるま
まわる まわる 
軽やかに風をうけて

時あたかも新学期 新年度
さよならと出会いが交替し
違和感が親しさに変わっていく

              09/04/11


 
 
 軽やかに

期待と結果が一致すると
期待どおり
上回ると 期待以上  
思惑どおりにいかないと 期待はずれ 
と 人は歌うように言う
期待という名の希望を抱きながら

結果が期待を裏切ることなんて
ありふれたことなのに
気づかないのか
気づかないふりをしているのか
人は宴に酔いながら
軽やかに やりすごす

              09/04/04


 
 寡黙な返球

痛いほどの直球でも
ひねった変化球でも
返ってきたら
懐に すとんと落ちてくれたら
誠意に変わる

誠意は不思議な生きもの
「どんぐりころころ」の歌のように
お池にはまってしまったのか
どじょうと一緒に遊びすぎて
草むらでうたた寝でもしているのか
いっこうに見つからない

あした探そう
あさって探そう 
夢のなかで私は呟く

誠意は寡黙だ

               09/03/28


 
 幸せな朝

人は ウグイスの正しい鳴きかたは
ホーホケキョだと思いこんでいるらしい
ホが抜けホケキョになったり
ーが抜けてホホケキョになったりすると
まだ新米のようだ
まだ子どものようだ
と 推測し断定する
揶揄半分 愛情半分で

けれど もしかしたら
余分なものは不要とばかりに省略し
捨てさる知恵を持っている高齢のウグイス
の鳴きかたかもしれない

初音を聞いた幸せな朝に
ホケキョ ホホケキョと真似てみた

              09/03/21


 
 探しもの

詩を一行書いたら日が暮れた
一行も書けず
心が空っぽの日には
覆面をした夜がやってくる

今日はどんな日だった?
闇のなかで目をこらし
手さぐりで探したけれど
ただ 空(くう)を切っただけで
手ごたえがなかった

枕元においてあるテレビのリモコンが
頭にゴツンとあたった
とたんにスイッチが入り
お笑い番組が目に入ってきた
 (人生なんて
 笑ったもん勝ちかもしれないわね)

              09/03/14



 
 海への径

たかが2泊の旅に
暮らしを連れてゆく
コンパクトな日々がついていく
ケイタイ カメラ ガイドブック   
着替え ハンカチ 化粧品 ティッシュ 
財布 カード類 鍵 旅日記などを
リュックの中に詰めこむ
ひとつひとつは僅かな重さなのに
必要最小限のものばかりなのに
妙にかさばる
擬似人生のようだ

旅を終えると
日常に紛れこんだ非日常が
リュックの中で
潮の香りを放っている

              09/03/07


 
 カプセルの独白

薬のストックが語る私の来し方
風邪薬 解熱剤 湿布 下剤 抗生物質   
睡眠剤 消毒薬 座薬 痒み止め 咳止め
湿疹 めまい  胃炎の薬などの使い残しが 
空き缶の中に雑然と仕舞われている
若さが誇った自然治癒力は
いつしか雲隠れしてしまった

使いかけの風邪薬は?
 今 風邪をひいていないから
睡眠剤は?
 目下 眠くてしょうがないから
解熱剤は?
 熱はないから 

使用期限まじかの薬たちが
カプセルの中から
錠剤のパッケージから
私を窺っている

              09/02/28


 
 今日から

いま この一瞬
私は誰を愛しているのだろう
これまで
誰を愛してきたというのだろう

愛に遅刻した
愛を早退した

まだ遅くはない
否 もう遅すぎる
今日から私は
遅刻の始末書や 
欠席届けを手に
さすらい人になる

        09/02/21


戻る