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窓がない。
目が覚めると私は知らないどこかで、誰かと差し向かいに椅子に掛けていた。
外で風がひゅうひゅう言っているのだけが確認できた。
目の前でぴんぴん、と音が弛むことなく鳴っている。
卓の上には鈍く光るウランガラスのコップが、天井から漏れだした水を受けている。
一滴、また一滴と落ちるたびに彼が薄い唇でなにかを低くつぶやく。
滴る雫と聞き取れない声が、溜まった水とガラスに弾かれて、狭い部屋の濁った空気を中途半端に伝う。
まるで短く張った弦を弾くような、甲高いー
まるで強くしなって鞭打たれたような、甲高いー
幾重にも交錯するイメージ。
私は弾かれるように背を丸めて頭を覆った。
卓を挟んで向き合った、青白い顔の彼が両腕を、それぞればらばらな方向に広げるのは同時だったと思う。
微かに頭をもたげて見やると、彼は先端から赤茶けて木質化したような指先をわらわらと動かして、私の腕と水の微かに溜まったコップとをそれぞれ目指していた。
瞬間、私の全身は粟立った。
それでも私は彼の表情を伺おうと目をぱしぱしさせる。
瞬き、瞑るたびに私の脳裡をかすめるのは、悪い夢を見たときの侭よという諦めと、意固地に捕まるのを避けようとするこころ。
彼の濁った目は何にも注がれていなかった。
私は瞬間、吐き気を催した。
椅子から崩れ落ちて嘔吐いている私をよそに、
一足先にコップへとたどり着いた彼の指は、私の腕を諦めた指とともにそれをしっかと握った。
のどが必死に鳴るのが向こうで聞こえた。
頭上でこつこつと卓を叩く音がする。
じりじりと後ずさりながら、ようやく立ち上がりかけた私の目の前に、
少しばかり潤った彼の指が見える。
爪先には双葉が覗いていた。
彼はもう動かない。
私は音を立てないように、そっと、ただそっと壁をすり抜ける。
背中には滴る水が、無人になった卓を叩き続ける音だけが聞こえる。
彼はもう動かない。
私と同じ顔をして、あの場所でただ、待っているのだ。
来るべき時を知って、それをただひたすらに待っている。
ひょろひょろと徒長して、やがて部屋いっぱいになる時を。
目が覚めると雨に降られていた。濡れた風が通り過ぎる。
私の胃は空っぽだ。
―(次に目が覚めるのはいつなのだろうか?)
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