ロ―風切羽
有り余った時間と差し迫る空間。有り余った空間と差し迫った時間。
言葉の両極端がすべて混ぜこぜになったような、小さい頃の熱せん妄の怖い夢。
飛行機のフライトを知らせるアナウンスが遠くで聞こえる。
部屋のなかは紫煙でたちこめている。
そのせいなのか、雨のせいなのか。
窓の向こうはいくら見極めようとしても、ただ白く濁るばかり。
すべてが濁り絵のように一緒くたになるなかで、ライターの石が乾いた音をたてる。
―もう戻れないのだ
ため息と一緒になって、吸っては吐き出される呼吸。
煙をとりこんだ、私の真っ赤な血液が体中を伝って、私の体も思考も緩慢になって、
そこここで昇っては消えてゆく。
ハ―白痴
何度目の春か。
行く宛てもないし、宛てを決めるほどでもない。
ただ呆然と立ち尽くしながら、いまこの一瞬を、
ずっとあとの自分は同じようにしながら思い出すだろうかと考える。
しばらくして縁に掛けながら、思うのだ。
―人間はなんて残酷にできているのだろう